PLAYER
UP
Katsuma[coldrain]が語る『OPTIMIZE = OPTDEMISE』のドラム・サウンド|“生きた音”を刻むレコーディング【インタビュー前編】
- Photo:Shotaro(Main)
coldrainがニュー・アルバム『OPTIMIZE = OPTDEMISE』をリリースした。新たな海外レーベルとの契約を経て制作された本作では、バンドの持ち味であるヘヴィなサウンドがさらに進化。中でも強烈な存在感を放っているのが、Katsumaのドラム。ドラム・トラックを打ち込みで構築する手法が広がるラウド・シーンにおいて、生ドラムだからこそ生まれるニュアンスと“ノリ”が貫かれている。前編では、制作環境の変化をはじめ、ドラム・サウンドへのこだわり、ライヴを見据えた演奏、そして“生きた音”を刻むレコーディングについて聞いた。
レコーディングのときでも
“ライヴだったらこうするだろうな”って
そう考えて叩いている
独立を経て変化した制作環境と
coldrainの“現在地“
●先週までオーストラリア・ツアーだったんですよね(取材は9月18日に実施)?
Katsuma:そうです。先週というか、数日前に帰ってきたばかりです(笑)。
●(笑)。オーストラリアはどうでしたか?
Katsuma:Electric Callboyのツアーに呼んでもらった形なんですけど、今も世界的にかなり人気のあるグループで、どこのキャパもだいたい8,000〜15,000とかのレベルなんですよ。
●KatsumaさんのInstagramを見ていて、会場が広いなと思っていました。
Katsuma:めちゃくちゃでかい会場ばかりで、ありがたかったですね。オーストラリアは人もめちゃくちゃ良いし、移動が全部飛行機っていうことと、物価があり得ないくらい高いこと以外は(笑)、とにかく楽しかったです。Electric Callboyの今のドラマー(Frank Zummo/フランク・ズーモ)はSum41でも叩いていたドラマーで、ドラム・セットに座っているのを見ると、けっこうデカいのかと思っていたんですけど、身長が俺とそんな変わらなくて。
●そうなんですね。手足が長くて、トラヴィス・バーカーみたいですよね。
Katsuma:まさにそんな感じで、体格だけじゃなくて、スタイルもトラヴィスを感じました。
●Electric Callboyとはヨーロッパ・ツアーでも一緒でしたよね?
Katsuma:そうですね。Electric Callboyとは海外のエージェントが一緒っていうのもあるし、彼らのスタッフのドイツ人が、昔、coldrainのドラム・テックで入ってくれていたことがあったり。共通の知り合いもいたりして、すごくよくしてもらってます。
●もう海外でライヴをやること自体も普通になってきたと思いますが、今回の新作『OPTIMIZE = OPTDEMISE』はドイツのレーベルからリリースされて、日本ではソニーの洋楽アーティストとして扱われることになりました。
Katsuma:そうなんです(笑)。逆輸入(笑)。
●名実共にワールド・ワイドなバンドになったと思うのですが、そういう現在の状況自体はどのように感じていますか?
Katsuma:海外レーベルと契約したことよりも、デビュー時からずっとお世話になっていたレーベル、マネジメントを離れて、独立して会社を立ち上げて、自分達で動き出したっていうところの意識の方が強いですね。昔に比べて、自分達の活動に対して、ちゃんと把握できているというか。どうやってツアーを回るか、宣伝の仕方、そこにどのくらい予算がかかって、これをするにはこれが必要、みたいな細かいことも、大人任せではなく全部自分達に共有された上で動いている。
そういう意味では、メンバー間のコミュニケーションだったり、それぞれの責任感みたいなものが強くなった状態で活動できている感じがしますね。メンバーの稼働自体は増えたけど、今の方が全然やりやすくて。周りから大変なんじゃないかって言われますけど、そもそもそれがやりたかったことなので。今のところいいふうにしか回ってないなって感じです。
●大きく言えば、活動する環境自体が変わったわけじゃないですか。その環境の変化が、バンドのサウンドに何か影響を与えた部分はありますか?
Katsuma:ドラマーとしてやってること自体はそんなに変わらないですけど、制作でY.K.Cが曲を作るときの意識は、多少変わっているのかもしれないですね。これまでは簡単に海外レコーディングに行くことができたけど、今はそれも自分達の予算内でうまくやりくりしなきゃいけない。「ここからここまでだったら、海外のプロデューサーにこういう話をすればいい感じになるかも」っていうところも、今はメンバー内で考えて進めるようになったし。ドラムのフレーズやアイディアも、これまではプロデューサーと相談していたところを、自分達の中で完結させることが多くなったので、そういう面ではサウンドにも影響はあったかもしれないです。
「力を入れない=脱力じゃない」
強いサウンドを生む身体の使い方

●そうした制作環境の変化もあってか、アルバムを聴いてシンプルにドラムの音がすごく強力だなと感じました。
Katsuma:そもそも俺達みたいなジャンルって、ドラムの音が強くないとダメだと思うんです。90年代のラウド系の音源……特にメタル寄りの音源はギターが一番強かったじゃないですか。もうギターばっかり聴こえる、みたいな(笑)。でも今は、しっかりボトムがあった上で、ドラムも前に出てくるようなサウンドが主流になっていると思うんです。それはcoldrainとしてずっと続けていることだし、その軸は変わらないので、ドラムの音にはこだわってますね。
●昔に比べて、ドラムのミックス・バランスも大きくなっていませんか?
Katsuma:出したい音の“抜ける部分”っていうのが、ちょっと聴きやすくなったのかもしれないです。『FATELESS』や『THE SIDE EFFECTS』の頃は、全体的に低音が強くて、ドラム・サウンドも低くてボトムが太い音っていうのが多かったと思うんです。でも最近の音はどちらかと言うと、それこそ90年代のLimp BizkitやKORNみたいな、スネアのパリッとした部分も出そうっていう方向で。耳にスコーンと飛んでくる音が強くなっているので、それでドラムの音量が上がったように聴こえるのかもしれないですね。
●ハードに叩いている感じも伝わってきますが、ああいう強い音を出すための演奏面でのこだわりや方法論はありますか?
Katsuma:シンプルに手を抜かないこと、変に丁寧に叩こうとしないことですね。レコーディングでもライヴで叩いているときのことを想定して、“ライヴだったらこうするだろうな”って考えて叩いています。
●ドラミングでは“脱力”の重要性がよく言われますけど、今回のアルバムを聴いていると、単純に力を抜くだけではあの強い音は出せないとも思うんです。そのあたりはどう考えていますか?
Katsuma:“脱力”っていうのも、身体の力を抜いてフニャフニャにすることではなくて、力を抜くところと入れるところの差し引きというか。スピードを出すのに力が入っていたらスピードは出ないけど、スピードと一緒にちゃんと重さを乗せられる力の抜き方が脱力であって、“力を入れない=脱力”じゃないと思うんですよね。実際、身体の使い方に関してはめちゃくちゃ意識していて、最近週5くらいでボクシングをやっているんですけど、ライヴ2時間叩くのは余裕なのに、ミット打ち2分で死ぬほど疲れ果てます(笑)。でも凄腕のドラマーほど格闘技をやっている人が多くて。身体の使い方がすごく似ていて、ドラムにもすごく良い影響がありますね。
打ち込み全盛の時代に
生ドラムで残す“生きた音”
●そうやって身体の使い方まで突き詰めて強い音を出している一方で、最近のラウド系のバンドでは、より強い音を求めてドラム・トラックを打ち込みで完結させるケースも増えていますよね。その流れについてはどう感じていますか?
Katsuma:海外のメインストリームでやっているようなバンドも、本当にドラム・レコーディングしてなくて。基本打ち込みのMIDIで完結させていて。でも普通に楽器をやってないリスナーからしたら関係ないじゃないですか。作品として上がってきた音源に満足して聴いているわけで。でも俺はあの方法にはアンチなので(笑)。いくら打ち込みの完成度が高くても、やっぱり微妙なニュアンスは生ドラムにしか出せない。もちろん現代風にエディットはしていますけど、やりすぎないようにしていて。生のニュアンスを残さないと、ノリが出ないと思っているので。昭和の考え方かもしれないですけど(笑)。
●(笑)。でもそのこだわりは感じます。アルバムを聴いていて、Katsumaさんがライヴで叩いている画が浮かんできました。
Katsuma:それが一番大事だと思っているので。曲を作ってるときも、ライヴで叩くことを想定してフレーズを作っていて、そこは絶対的に意識しています。Y.K.Cが打ち込んだドラムはほぼ完璧な状態で、そのまま出せるクオリティではあるんです。ただ、俺が叩いてライヴでやるってなったときに、「このフレーズをこのままやるとライヴで叩いたときにちょっと忙しくなるな」、「俺だったらもっとこうやって魅せたいから、ここ削ろう」みたいに、引き算していく作業がドラムのフレーズを作るときはめちゃくちゃ多いですね。
●今回、ドラムは国内でレコーディングしたと聞きました。海外録音だったこれまでの作品と比べても、さらにブラッシュアップされた音になっていますよね。
Katsuma:ドラムは日本で録ってるし、竿隊(ギター/ベース)に関してはY.K.Cのスタジオで録ってます(笑)。そういう時代になったということですね。俺らが海外へ初めてレコーディングに行った13〜14年前だったら、日本で録ったら今みたいな音にはなってないと思うんですけど、いろんな技術が合わさって、今は日本でも人さえ来てもらえれば海外の音に近づけられる感じはありますね。
●サウンド・プロデューサーは海外から呼んだんですか?
Katsuma:はい。サム(Sam Guaiana)っていうSilversteinとかもやっているプロデューサーで、自分達が好きなサウンドを作っている人をピックアップしました。サウンド面はもちろん、海外プロデューサーを入れるメリットは、Y.K.Cが求めている曲のまとめ方に対しても意見を言ってくれるし、何よりMasatoが英語で歌うので、英語の発音や歌詞の言い回しのアドバイスをもらえることが一番助かってます。
●サムはどうやってドラム・サウンドを作っていくタイプでしたか?
Katsuma:以前やってくれたエルヴィス(Elvis Baskette)は、アンビエンス(部屋鳴り)のマイクにすごくこだわる人だったんですけど、サムはどっちかというとタイトに録るタイプでしたね。その分ちょっとタイトでカラッとした音になっているかなと。今回大きかったのは、ドラムを一番最後に録ったことですね。『VENA』のときもそうだったんですけど、打ち込みの状態でギター、ベース、ヴォーカルのレコーディングを終わらせてもらっておいて、最後にドラムを録る。曲を全部理解した上でドラムを構築できるので、すごくやりやすいですね。
●ドラム録りは今回もセクションごとに区切って録っていくスタイルですか?
Katsuma:そうです。他の現場でも「こういう録り方させてくれ」って言うんですけど、Aメロだけ、サビだけというセクションごとに録っていきます。前のインタビューでも話した、“会心の一撃”を積み重ねていくスタイルですね(笑)。そのやり方は本当に早いし、ちゃんとフレーズを1個1個考えながら構築してレコーディングできるので。推進力が大事なスピード感あるパンクの曲なんかはツルッと一発で録った方がいいかもしれないですけど、coldrainみたいに1個1個のパートが緻密なフレーズで溢れているやつは絶対そっちの方がいい。ちなみに黒夢のレコーディングはcoldrainとは真逆の、超一発録りでした(笑)。
テイクの判断はプロデューサーに任せるパターンもありますけど、自分で見るときは、細かいミスやフレーズを間違えてないかということより、ちゃんと生きた音が入っているか、出音に元気があるか、ちゃんと楽器を鳴らせているかという部分を重要視しています。
各楽曲におけるドラミングの詳細は
後日公開のインタビュー後編へ!

◉New Album
『OPTIMIZE = OPTDEMISE』coldrain
ソニー|SICP-6820
1 OPTIMIZE
2 CHASING SHADOWS
3 DIGITOLL
4 INCOMPLETE
5 FREE FALL
6 EX-HUMANITY
7 REST OF ME
8 POISON (feat. Bert McCracken of The Used)
9 G.I.A.I.G
10 SING
11 PICTURE PERFECT HELL
12 SAVIOR (feat. Kenta Koie)
https://www.sonymusic.co.jp/artist/coldrain/discography/SICP-6820