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クリープハイプが、5曲入りEP『仮のまま定着したような愛情で』を5月27日にリリースした。尾崎世界観(vo、g)のヴォーカルと歌詞を軸としながら、それを支える表情豊かな演奏も聴きどころ。特に今作はバンドらしい生々しさを感じさせるサウンドが特徴で、ファンの間では“初期の雰囲気を思い出す”などと好評を博している。そんな本作の制作過程や収録曲について、ドラムの小泉 拓にインタビュー。彼自身としても手応えの大きいレコーディングだったようだ。
バンドを始めた頃のようなレコーディング
●ライヴ・ハウス・ツアー“あのころ一番熱いのは君の口の中だった”を終えたばかりですが、感触はいかがでしたか?
小泉:お客さんとの距離が近くて、すごく“ライヴをやっているな”っていう時間を感じながらやれたツアーでした。セットリストも新旧織り交ぜて、普段はあまりやらない曲も入れていたのをお客さんも喜んでくれている感じがしました。
●逆に、去年はホール・ツアーや武道館公演など、規模の大きいライヴをたくさんやった年でしたね。
小泉:去年のホール・ツアーのときは、自分達がやりたい音や演奏がやっとお客さんに届くというか、ピントが合うような感覚がありました。それは会場の大きさとは関係なく、個人的にそういうタイミングだったということです。その感覚をライヴ・ハウスに持ち込むことができたのが今回のツアーでした。
●ドラムへの取り組み方にも変化はありましたか?
小泉:よりわかりやすい演奏をしようという意識は、年々強くなっています。普通のビートを刻むにしてもフィルインにしても、ベースやギターが合わせやすいテンポ感、合わせやすいタイミングを強調したノリを意識するようになりました。
●フレーズも、これしかないというフレーズに焦点が合ってきた感じがあるのでしょうか?
小泉:昔はバリエーションで自分のすごさを見せようみたいな欲があったりしたんですけど、そういうのがなくなってきたというか。この楽曲のここはこれで成立するよな、っていうのがはっきり見えるようになった感覚が自分の中にあります。
●EP『仮のまま定着したような愛情で』は、公式サイトに“改めてバンドらしい制作スタイルで作り上げた”とあります。
小泉:尾崎の方から、今度EP作りたいんだよねって話してくれたときに、バンドを始めた頃のようなレコーディングをしてみたいという話が出たんです。 スタジオも、メジャーの2ndアルバム(『吹き零れる程のI、哀、愛』/2013年)とかを録ったところを借りて、ベーシックは1日に3曲くらい録ってしまうみたいな、そういうスケジューリングでやってみたいと。
●通常盤DVDのレコーディング・メイキング映像に映っているスタジオ(東京・西荻窪のTUPPENCE STUDIO)ですね。
小泉:そうです。最近でもたまに使ったりするんですけど、メインでは使っていなかったので、久しぶりでしたね。
●スタジオだけでなく、曲作りの進め方も普段と違いましたか?
小泉:コロナ禍以降は各々がデモを作り込む形が多かったんですけど、今回はスタジオで、“セーノ”で音を出しながら作っていくことが多かった印象です。尾崎に弾き語ってもらって、そこからリズムを探って……みたいな、よりバンドらしいというか、生々しい感じのプロセスでした。
●やってみてどうでしたか?
小泉:僕はこっちの方が好きというか、得意な感じがするので、非常にやりやすかったです。こういうやり方が一番早くて解像度が高いんですよね。頭で考え始めてしまうと、けっこうどうにでもできるというか、難しくなっちゃう。最初に曲を聴いたときの印象で演奏して出てきたものが、僕の中ではその楽曲に対する純粋なアプローチだったりするので、今回のEPではそれをそのままできたっていう感じです。唯一、「口の中」という曲はデモを作って、みんなで客観的な目で見ながら作ったんですけど、それ以外は割と瞬発的に出てきたフレーズがそのまま採用されているところが多いですね。

あまり考えすぎないで欲のない演奏を
●テンポの速い曲で始まって、だんだん遅い曲になっていく順番で並んでいますが、曲順はどのように決めましたか?
小泉:どうだったかな……尾崎の方から、こういう感じの流れにしようというイメージを言ってもらって、それでいいねみたいな感じだった気がします。 僕自身も、この並びを見て、これしかないよなって思いました。
●1曲目の「タヌキネイリ」は疾走感のある曲ですが、これ以上速いとせわしなくなってしまうギリギリの線をついた絶妙なテンポだと感じました。
小泉:曲のテンポに関しては、何回か合わせているうちにだんだん決まっていくんですけど、多分尾崎の中で歌が乗った状態を想定して、ちょっと速いとか遅いっていうジャッジをいつもしてくれるんです。レコーディング当日にテンポが1とか2とか変わったりすることもけっこうあって、この曲もそういう微調整があったかもしれません。
●ドラムを演奏する上でも、ちょっとしたテンポの違いが大きく影響しそうなリズム・パターンだと思ったのですが。
小泉:確かにそうですね。最初この曲を作っているときには、鼻歌で歌ってもらいながらやっていたんですけど、歌詞ができてこんなに言葉が詰め込まれるとは思っていなかったので驚きました(笑)。 そういうことがあるので、レコーディング当日まで割と余白を残しておきたいと思っていて、フィルも本当に必要最小限というか、展開を決める上で必要なところにしか入れないというような感覚は持っています。
●最初から最後まで、基本的に同じリズム・パターンが続くので、エンディング近くでキックのダブルが一瞬入るのが印象的でした。
小泉:これはエンディングっていうところで、表情というかバリエーションをつけようかなと。隠し味じゃないですけど、なんかちょっと変えようみたいな感じで入れました。
●2曲目の「私の歌」は、ハイハットのカウントから曲が始まります。
小泉:そう言えばカウントから始まる曲ってないよね、という話になって、あえてカウントから始めてみてもいいかなっていうことでこうなったような記憶があります。
●スネアの勢い良いフィルインが何度も出てきます。
小泉:全体的なリズムは、初期の曲「手と手」のセルフ・オマージュというか、あんな雰囲気でという指定が元々あったんですけど、2サビ前のフィルは、レコーディング当日まで悩んでたんです。最初はゆっくりと大きいリズムで、それがアタマ打ちになって……みたいな感じで仮では組み立てていたんですけど、録ってみたらちょっと違うなということで、現場でいろいろ探りました。
●その試行錯誤が良い結果を生んだんですね。
小泉:そうですね。結果的に良かったです。
●2番の途中で止まるところは?
小泉:あれはスタジオで演奏していて僕が間違って止まったのをきっかけに、尾崎の方から、ここで1回ブレイクがあっても面白いよねっていうアイディアが出てきて、こうなりました。
●3曲目の「痛々しいラヴ」は、ゴースト・ノートをたっぷり入れたミディアム・テンポのリズムが特徴的です。ゴーストも丁寧に叩くことで表情をつけている感じがしました。
小泉:うれしいです。でもゴーストって難しいんですよね。昔はゴーストもそんなに考えずにやれていたのが、長年ドラムという楽器と向き合って知識や経験が増えていくと、下手なゴースト入れられないな、みたいな気持ちが出てきて、カチッとやりたくなってきたんです。そういうところが出ているのかもしれません。
●特にレコーディングだと、すごく細かいところが気になってきますよね。ゴーストも、叩いたその場では良い雰囲気だと思っても、後で聴き返すと“ん?”ってなったり。
小泉:よくありますよね、そういうことが。この曲に関しては、そういうところですごく時間を食いそうだなと思ったので、早めに切り上げるように努めました。あまり考えすぎないように。それで素直な感じというか、欲がない演奏になっていると思います。
●こういうテンポ感についてはいかがですか?
小泉:このくらいのテンポで同じリズムをずっと叩く感じって、好きなんですよね。こういう曲はなかなかないので、もっといっぱいあったらいいなと思います。
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