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    アコースティックエンジニアリングが手がけた“ドラムが叩ける”プライベート・スタジオ Archive #12[愛知県 大野さん宅]

    • Photo:Chika Suzuki/Text:Isao Nishimoto

    スタジオやライブハウスなどの防音・音響工事を行う専門業者、アコースティックエンジニアリングが一般住宅に施工したドラム用防音室を紹介している連載企画。今回紹介するのは、愛知県に住む大野さんの自宅スタジオ。ピアノやオーディオシステムも置かれた空間には、豊かでゆったりとした時間が流れていた。

    柔らかい杉の無垢フローリングで
    ジャズ向きの響きを実現

    2022年に完成した木造2階建ての一軒家に家族で暮らす大野さん。この連載に登場していただく方の多くがそうであるように、大野さんも「家を建てるなら防音室を作りたい」という願いを長年抱き続けてきた。

    「学生の頃からそう思っていて、結婚前からお金を貯めてきました。もし相手が反対しても、このお金だけは使わせてもらおうと思っていたら、妻はピアノをやっている人だったので反対されませんでした」

    ▲1960年代のグレッチと、TAMAのStarclassicが並ぶ大野さんのスタジオ。前者はジャズ用、後者はポップス用とのことで、他にも2台のセットが隣の収納室にスタンバイ。杉の無垢材が使われたフローリングは、柔らかい素材が程良く響くサウンドに貢献しつつ、見た目も室内の雰囲気を特徴づけている。採光窓は法令上の理由で設けられたそうだが、3連窓にすることでデザイン上のアクセントとしても機能。

    アコースティックエンジニアリングのことはこの連載で知っていたそうだが、大野さんの背中を押すいくつかの理由もあった。

    「アコースティックエンジニアリングさんのホームページに、自分の仕事と関係があるスタジオの写真が載っていて、勝手に親近感を覚えたんです。あと、ときどきジャズのセッションを一緒にやっている知り合いのミュージシャンのスタジオも載っていたので、より身近に感じました。施工費に関しても、大手だからすごく高いというわけではなく、想定していた金額とそれほど変わらなかったので安心できたというのも大きかったです」

    当時はコロナ禍の真っ只中で、打ち合わせはすべてリモートで実施。長文のメールも数多くやり取りしながら、十分な意思疎通のもとスタジオ作りが行われたという。

    「もともと4〜5人でセッションできる部屋にしたいと考えていたので、10畳くらいは欲しいと思っていました。でも、遮音壁を作ることで部屋の内側は2畳くらい狭くなると知って、住宅メーカーの方にスタジオ以外のスペースを調整してもらい、広さに余裕のある防音室にすることができました」

    ▲壁は吸音パネルと木部をバランス良く配置し、スタジオの響きを整えている。オーディオ・セットはリビングにも置かれており、ネットワークで連携。各種ケーブルの配線計画は、スタジオ工事期間中に電気工事士の資格を取った大野さん自身が行ったそうだ。
    ▲ピアノの周りは木の反射面、ドラムの周りは吸音パネルで楽器に合わせて響き具合いをコントロール。天井のPAスピーカーは、ヴォーカル入りのセッションなどで活用しているそうだ。

    最終的に完成したスタジオは11.7畳。「後からスタジオのスペースを増やすことはできないので、最初に思い切って広くしておいて良かったです」と大野さんは言う。

    アコースティックエンジニアリングが作る防音室で特に重視される室内の音の響きに関しては、大野さんが主にジャズを演奏することや、この部屋ではドラム以外の楽器も演奏されること、オーディオを楽しむことも考慮して設計が進められた。

    「居住スペース側の床は杉の無垢フローリングなんですけど、良い響きが得られるかもしれないということでスタジオの床にも同じものを採用しました。実際とても良い感じになり、ドラムを叩いていてもすごく気持ち良いんです。セッションなどのときはドラムセットを外に持ち出すんですけど、この部屋で叩くときが一番気持ち良くて、ずっと叩いていたくなります」

    申し分のない遮音性能のスタジオで
    家族そろってセッションを楽しむことも

    もともとドラム・セットを2台所有していたという大野さんだが、スタジオを作ってから機材はさらに増えたという。それらは隣接した収納室に整理され、スタジオ内はすっきりした状態に保たれている。

    「ずっとジャズしかやってこなかったんですけど、最近はポップスを演奏する機会もあるので、ポップス用のスネアやシンバルが欲しくなったりして(笑)。会社の先輩に誘われてロックっぽいバンドも始めて、先日初めてここに来てもらったら『録音もしたいよね』ということになったので、今後はレコーディング機材も増えることになると思います」

    ▲防音ドアは外側が木製、内側がスティール製。収納室とスタジオ内で床の高さを揃えているのもわかる。
    ▲玄関ホールからスタジオを結ぶ空間に設けられた収納室。スネア、シンバル、ドラム・セット、ハードウェアなど、多くの機材が置かれた6畳ほどの空間だ。奥に見
    えるドアは屋外に通じており、セッションなどで楽器を持ち出す際の利便性を高めている。
    ▲収納室とスタジオの間に設けられた覗き窓。外からスタジオの様子が見えるので「つけて良かった」と大野さん。
    ▲将来レコーディングを行う際、収納室をコントロール・ルームとして使えるようにケーブルを通す穴を用意。電源用のノイズカット・トランスも設置され、「ベース・アンプの中域がふくよかになったのと、メトロノームのホワイト・ノイズが減った気がします」。

    会社勤めの大野さんがここで音を出すのは平日の夜と休日。周辺には家が少なく、音漏れへの不安はあまりないという。屋内に対する遮音性能も高いため、「夜にドラムを叩いても、家族は気にならないようです」とのこと。さらに、家族ぐるみでスタジオを楽しんでいるエピソードも話してくれた。

    「子供が少し前からピアノを習い始めたんですけど、ドラムにも興味を示していて、最近ようやくペダルに足が届くようになったんです。これでベースがいれば家族みんなで演奏できるなと思って、僕もベースを始めました。まだちょっと練習しているだけですが、とても楽しいです」

    ▲木造住宅としてはトップ・クラスの遮音性能。収納室がリビングに対する大きな遮音層となり、屋外への遮音性能と同等の数値が出ている。

    取材時には、ご家族でセッションしている様子を動画で見せていただいたが、iPhoneで撮影されたその動画はとてもバランスの良い音で、そこにもスタジオの響きの良さが表れていた。

    「ここで一緒に音を出した知り合いからも、『良い音だね』と言ってもらえるので、なるべくたくさん活用していきたいです。あとは、子供が大きくなって最終的に何の楽器に行き着くのか、それを楽しみにしています」

    Profile:小学校3年生から吹奏楽でクラリネットを担当。姉の影響で5年生の頃に初めてスティックを握る。その後は高校時代に友人とバンドを組んで文化祭に出演、大学時代にジャズと出会い、ドラム・レッスンにも通いながらさまざまな場所で演奏経験を重ねる。就職後も仕事と並行して名古屋近辺でのセッションに参加するなど、マイペースに音楽活動を続けている。「好きなドラマーは、ロックだとチャド・スミス、ジャズだとフィリー・ジョー・ジョーンズです」(大野さん)。

    ※本記事は2026年1月号掲載の記事を転載したものになります。

    アコースティック
    エンジニアリングとは?

    株式会社アコースティックエンジニアリングは、音楽家・音楽制作者のための防音・音響設計コンサルティングおよび防音工事を行う建築設計事務所。1978年に創業して以来、一貫して「For Your Better Music Life」という理念のもと、音楽家および音楽を愛する人達へより良い音響空間を共に創り続け、携わった物件の数は2,000件を超えている。現在も時代の要請に答えながら、コスト・パフォーマンスとデザイン性に優れ、「遮音性能」、「室内音響」、「空調設備」、「電源環境」、「居住性」というスタジオの性能を兼ね備えた、新しいスタイルのスタジオを提案し続けている。

    株式会社アコースティックエンジニアリング
    【問い合わせ】
    TEL:03-3239-1871
    Mail:info@acoustic-eng.co.jp
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