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ドラムの音色を変化させるアクセサリ=SABIAN AA Cymbits O-ZONE Chain【連載|博士 山本拓矢がデジマートで見つけた今月の逸品 ♯41】
- Text:Takuya Yamamoto Illustration:Yu Shiozaki Photo:Takashi Hoshino
第41回:SABIAN AA Cymbits O-ZONE Chain
ドラム博士=山本拓矢が、定番商品や埋もれた名器/名品など、今あらためて注目すべき楽器たちを、楽器ECサイトであるデジマート(https://www.digimart.net/)で見つけ、独断と偏見を交えて紹介する連載コラム。今回は、ドラムの表現の可能性を拡げるプラスワン・アイテム=セイビアンのAA Cymbitsを紹介!
いつもお読みいただき、ありがとうございます! 今回は、久々にアクセサリへ注目してみます。
今月の逸品 【SABIAN AA Cymbits O-ZONE Chain】

ドラムに加えて音色を変化させるアイテムは、古くから存在しており、時折生じる流行にリンクするように、再発見と再発明が繰り返されてきました。
最も有名なものは、シンバルに当ててシズル(リベット取りつけ)のような効果を得る、Sizzlerでしょうか。Sizzlerはボール・チェーンを用いたタイプの代表格で、長年に渡ってプロマークから販売されていましたが、2026年現在は、同じD’Addarioの傘下の関係にある、エヴァンス・ブランドで展開されています。マイネルからも、Cymbal Baconという似た機能を持った製品が販売されていますね。
また、異なるアプローチですが、さらに古いものとしてカムコから発売されていたThrow Off Cymbal Sizzlerという製品が存在します。新興メーカーであるチェリー・ヒル・ドラムスの製品も面白そうですね。
さて、このSABIAN AA Cymbits O-ZONE Chainは、そのようなシズル・エフェクトの領域に加え、別のジャンルの要素が含まれています。タンバリンなどのジングルのような効果や働きはもちろん、それに加えて、アンデスのチャフチャスや、木の実を使ったセミーヤなどの、ラットルに類する楽器の傾向です。

2インチという大ぶりなディスクとリングを7つ、リベットでゆるくつなぎ合わせた構造は、セッティング次第で、カオスな状態からランダムに近い状態まで、実にさまざまな挙動を見せてくれます。

最も直感的で、かつ代表的な使い方は、ライド・シンバルに垂らすものだと思いますが、公式サイトの製品ページでも紹介されている、ハイハットの中に放り込む方法は、私のお気に入りの1つです。

知覚できる限界に近い、ごく微かなジングル効果を与えることができるので、ドライな仕上げのハイハットがアンサンブルの中で埋もれすぎてしまうシーンや、エッジが摩耗し切って高域が出ないハイハットに輝きを加えて存在感を持たせるなど、さりげない使い方で活用できます。
フロア・タムなど、長く振動する打面での振る舞いにも大きな魅力があります。
スルドに見立てて、ブラジリアンのリズムを奏でてみると、ショカーリョ(シェイカー系の楽器)と、カイシャ(スネア系の楽器)などの楽器同士のリズムから生まれる、独特な高域の雰囲気が感じられました。また、ジャンベに取りつける金属製の団扇のような部品、ケッシン・ケッシンのように聴こえる方もいるかもしれません。シンバル・メーカーが生み出したオリジナルのアクセサリが、さまざまな地域の民族音楽やワールド・ミュージックを想起させる音色を生み出すのは、特定の文化的なルーツを持たないからこそでしょうか。
取りつけ方を工夫して、短く刺激のある音を目指すと、また違った側面が見えてきます。

スネアやハイハットの上に、広がらないようにまとめて置いてみると、ノイズや歪みのようなニュアンスが生まれます。
シンセサイザーやサンプリング・パッド、ビットクラッシャーなどを用いた音楽との相性は抜群ですね。また、金属的ノイズを楽器として扱う系譜として、インダストリアルな傾向を感じた方は、老舗のピート・エンゲルハート・メタル・パーカッションやケプリンガー・ドラムス、近年注目が集まっているアップサイクルド・パーカッション、国内ではTARA:NOME productsなどの製品が思い浮かんでいるかも知れません。
冒頭で触れた、ハイハットの中に入れる方法と同じような発想で、鳴り過ぎない状態で使う工夫にも、いくつかのバリエーションが考えられます。

ヘッドの上では、スナッピーのような成分を持った響き方もしてくれるので、布やテープで深くミュートした、ロー・ピッチなスネアに高域のアタックを加えることも可能です。また、普段はアクセサリーを入れるような、小型の巾着に入れて、ケースの中に忍ばせていますが、そのままスネアに置けば、軽めのウォレット・ミュートのような働きもしてくれます。

Cymbitsは、単品で音色が成立する小物パーカッション類とは異なり、ドラムの音色を変化させるアクセサリです。単に使用することで何か面白いことが起きるようなものではなく、表現におけるドラムの限界を更新して、新たな可能性を切り開くためのツールです。
2026年現在は、緩やかな流行の最中にあるので、先端をゆくドラマーなどが日々その道筋を示してくれており、学びのハードルは低く、気軽に試せる状況が整っています。演奏の可能性を追求する過程で、思いがけず課題をクリアする助けになることもあるかもしれません。難しく考えず、かといって道具任せにはせず、楽しみながら音楽と向き合っていただければ、きっとこのアイテムの面白さが見つけられるはずです。

Profile
ヤマモトタクヤ●1987年生まれ。12歳でドラムに出会い、高校時代よりプレイヤーとして音楽活動を開始。卒業と同時に入学したヤマハ音楽院にて、さまざまなジャンルに触れ、演奏活動の中心をジャズとクラブ・ミュージックに据え、2013年、bohemianvoodooに加入。 音楽と楽器の知識・スキルを生かして、ドラム・チューナーとしてレコーディングをサポートしたり、インタビュー記事や論説などの執筆業を行うなど、音楽全般への貢献を使命として活動中。
公式X:https://x.com/takuya_yamamoto
【Back Number】


『That Great GRETSCH DRUMS』
