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マイク・ポートノイの新シグネチャー・モデル“SABIAN MAX Cymbals” 7製品を一挙レビュー|博士 山本拓矢が試した【2025年7月号】のNEW PRODUCTS

  • Photo:Takashi Yashima Review:Takuya Yamamoto[bohemianvoodoo]

SABIAN
Mike Portnoy Signature “MAX Cymbals”
〜AAX MAXX Splash V2, AA MAX Bell Chime, HHX MAX Ride〜

セイビアンがマイク・ポートノイのシグネチャー・モデル=マックス・シンバル誕生25周年を記念し、新たなモデルを一挙7種発表した。スプラッシュはAAX シリーズで7″/9″/11″という奇数インチ3種、ベル・チャイムはAAシリーズで6″/6.5″/7″と0.5″刻みの3種、そしてHHXシリーズの22″ライドがラインナップ。シリーズを跨いでシグネチャー・シリーズとしているのも、さまざまな音色を求めるポートノイらしいこだわりだ。ドリーム・シアター復帰のタイミングと重なり、今後のシンバル・サウンドにも期待が高まる。


 AAX MAXX Splash V2

高さを抑えたフラットな形状で、極薄の感触です。際立った凹凸のない、滑らかな見た目のわりに、複雑な響きで、キレの良さには目を見張るものがあります。ピッチは低めで、鳴らせば確実に聴こえる一方で、決して邪魔をすることはなさそうな、理想的なスプラッシュの1つだと感じました。3つのサイズでベルのサイズが共通なためか、音量が揃っていながら、音色がグラデーションで変化します。大きくなるにつれて、ナチュラルでピュアな方向へ、小さくなるとエキゾチックな響きが強調されます。どのサイズも魅力的ですが、3枚すべて手に入れたい逸品です。


 AA MAX Bell Chime

*ベル3枚がセットになったAA-MAXBC/SETは¥57,200。受注発注品となるので、詳しくは楽器店に確認を。

カップ・チャイムとしては薄めですが、スプラッシュよりは厚く、滲みを感じる独特な倍音構成です。ベルを叩くと明瞭でキレ良く、エッジを叩くと伸びやかに。ナチュラルな反応が得られるのは、この絶妙な厚みのおかげでしょうか。表現力の高さを感じます。ハイエンドなシンバルと同じ素材が用いられていますが、単価は安いので、すべて揃えて、いろいろ試せるように持っておくのも良いかもしれません。エクストリームなスタイルはもちろん、さまざまなシーンで活躍できそうです。セイビアンの小型シンバルの開発力は、群を抜いていますね。


 HHX MAX Ride

ボウとベルのつながりが良く、どちらを叩いても、双方が反応している感触があります。ウェイトは重めですが、打感にはしなやかさも感じられ、楽器全体が効率よく振動することで、大音量を実現しているのかもしれません。表面は磨き上げられており、軽く鳴らしはじめた時点では、高域のシャリっとした成分が少なめに感じましたが、ボリュームを上げていくと、煌びやかに鳴り出しました。ウェイト分布の関係か、タッチへの反応に特徴がありそうで、スティックを振るスピードや、グリップの握り込みを変化させた際のチップ音の高域が、鮮明な方向で安定して出力されるようです。

セイビアンの知見が余すことなく生かされた
ファンでなくともフラットに向き合うべきシンバル

さまざまなシリーズを柔軟に組み合わせてセットアップを構築するマイク・ポートノイらしく、ありそうでなかった、シーンやジャンルを問わず幅広くフィットする可能性を秘めたラインナップです。多数のアーティストと共同開発を重ねてきたセイビアンの知見が余すことなく生かされており、どの楽器にも多面的な魅力が感じられます。本人のセットを再現したい方はもちろんですが、シグネチャー・モデルという位置づけや、開発経緯にとらわれず、フラットな目線で向き合う価値のある楽器です。