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【連載】博士 山本拓矢がデジマートで見つけた今月の逸品 ♯21〜小口径シグネチャー・スネア・ドラム〜
- Text:Takuya Yamamoto
- illustration:Yu Shiozaki
第21回:小口径シグネチャー・スネア・ドラム
ドラム博士=山本拓矢が、定番商品や埋もれた名器/名品など、今あらためて注目すべき楽器たちを、楽器ECサイトであるデジマート(https://www.digimart.net/)で見つけ、独断と偏見を交えて紹介する連載コラム。今回はシグネチャー・スネア・ドラムの中から小口径モデルに焦点を当てて、代表的な2モデルを紹介していきます!
いつもお読みいただき、ありがとうございます! 先日、Gretschからリリースされたアッシュ・ソーンのシグネチャー・モデルを試す機会がありました。12”×7”ということで、一般的なスネアと比べると、ずいぶん小ぶりなサイズ感です。
♯18でご紹介したジョーイ・ジョーディソンのシグネチャー・モデルも13”×6.5”なので、小口径ではありましたが、このカテゴリーには面白い楽器がいろいろとあるので、いくつかをピックアップして紹介しつつ、口径と剛性、質量、ピッチの関係などを、少し掘り下げて説明してみようと思います。
ということで今回のテーマは、小口径シグネチャー・スネア・ドラムです。
やや専門的な領域になりそうなので、これまでに公開された、関連しそうな記事も合わせてご覧いただけると良いかと思います。
今月の逸品 ① 【CANOPUS HARVEY MASON Signature HM-1060】
まずご紹介するのは、CANOPUSのハーヴィ・メイソン・シグネチャー・モデルの1台、ステイヴ・ウォルナット・シェルを用いた、HM-1060です。品番の通り、10”×6”という非常に小さなサイズで、ダークなトーンのシェルを、シルバー系でまとめられたパーツで組み上げた、美しい楽器です。
ハーヴィー・メイソンは、主にAshシリーズのキット(アッシュとポプラのコンビネーション・シェル)と合わせて使用しており、HM-1060を含む3種類のスネアには、それぞれ異なるシェルが用いられています。材の振動特性や、エッジ形状による影響などの例外は多々ありますが、全体的な傾向として、音量との関係を大まかにまとめると、次の通りになります。
口径:大きい方が音量が大きい(※ピッチは下がる)
剛性:高い方が音量が大きい
質量:大きい方が音量が大きい
打面のテンション:高い方が音量が大きい(※ピッチも上がる)
Ashシリーズは、ドライなトーンで軽めの仕上がりなので、仮に同じシェルで10インチのスネアをあつらえると、それなりにテンションをかけないと、音量が揃いにくくなってしまいます。もちろん、演奏の技術でクリアできる部分ではありますが、もしも楽器側で解決されていれば、奏者が音量のコントロールに割くリソースを、音色のそれに回すことができます。必要なピッチとトーンを踏まえた上で、11.5mmという分厚いシェルが採用されたのでしょう。高い剛性、大きな質量で音量が稼げていますから、テンションの設定には、余裕と自由が生まれます。
やや暗めの音色は、ハーヴィ・メイソンの好みによるところでしょうか。他のスネアのシェルも、ウォルナット+バーチや、アッシュ+ポプラということで、ある程度コントロールされた領域にあるものが用いられています。ステイヴ・シェルは、シェルそのもののピッチが高めで、サスティーン・ディケイは短め、という特徴があります。用いられる木材の個体差にも左右されますが、倍音は複雑で豊かになる傾向もあります。立ち上がりが早く、キレの良いキャラクターは、この辺りに由来する部分もありそうです。
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