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アメリカで行われた400周年記念イベント“THE ZILDJIAN 400TH ANNIVERSARY CONCERT”【Report】
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EVENT Zildjian Festival
今年400周年のアニバーサリー・イヤーを迎えている世界最大のシンバル・メーカー、ジルジャン。ここ日本でも11月19日に“Zildjian Festival 400th Anniversary”を控えているが、去る9月20日、本国アメリカで400周年を記念したスペシャル・イベント、“THE ZILDJIAN 400TH ANNIVERSARY CONCERT”が昨年誕生したばかりのボストンの新会場=Roadrunnerにて開催された。
ジルジャンではドラム界の歴史に名を残すドラマーの偉業を讃え、“HALL of FAME/殿堂入り”を贈ってきたが、400周年の節目に8人のレジェンド・ドラマーが新たに殿堂入り。今回の“THE ZILDJIAN 400TH ANNIVERSARY CONCERT”は、それを記念し、殿堂入りを果たしたレジェンドが集結。彼らを前にそれぞれをリスペクトするジルジャン・ドラマー達がトリビュート・パフォーマンスを行うという内容だ。
ステージを支えるハウス・バンド陣も、音楽監督を務めるゲイリー・ノヴァックを筆頭に、ニア・フェルダー(g)やティム・ルフェーヴル(b)など実力派揃いで、鉄壁の演奏でサポート。400周年を祝うにふさわしい一夜となったイベントの模様をレポートしていこう。
会場に入ると、グリーン・デイのトレ・クール、BLINK-182のトラヴィス・バーカー、そしてデニス・チェンバースのドラム・セットがディスプレイ。普段はジルジャンのオフィスに展示されているドラムをそのまま持ってきたという。さらにアーティストや関係者が集うゲスト・スペースには、リンゴ・スターやエルヴィン・ジョーンズのセットの他、1910年製のハイハットなど貴重なアイテムがズラリと並び、スペシャルな一夜にふさわしい装飾の数々にまず圧倒される。
舞台に設置されたスクリーンにイベントが始まるカウント・ダウンの映像が流れ、まずオープニングとして400年の歴史をまとめた映像が映し出される。3分ほどの短い映像の中に、バディ・リッチ、スティーヴ・ガッドらに混じって、神保 彰、川口千里の姿も収められており、日本人の2人がジルジャンの歴史を彩る存在としてフィーチャーされていることに、誇らしい気持ちになった。
HALL of FAME ① SHEILA E.(シーラ・E.)
そして記念すべき殿堂入り1人目は、ピート・エスコヴェードを父に持つ正統派パーカッショニストで、プリンスやリンゴ・スターを支えた凄腕ドラマーであり、ソロ・アーティストとしてもヒット曲を世に送り出したシーラ・E.。今夏、ハリウッドの殿堂入りを果たしたことも記憶に新しい彼女のトリビュート・パフォーマンスを行うのは、20歳になったばかりの新鋭=ジェイミー・レイ・シュルツとラテン・パーカッショニストのマーク・キノネス、そしてアース・ウィンド&ファイアーらのサポートでも知られるゴスペル系ドラマーの大御所、ゴードン・キャンベル。バラエティに富んだ3名が勢揃いした。
まず舞台に登場したのはジェイミーとマークの2人で、演奏するのは1985年発表のソロ・アルバム『Romance 1600』に収録された「A Love Bizarre」。プリンスがプロデュースを手がけた代表曲の1つだ。輪郭のハッキリした、シュアなグルーヴでアンサンブルを支えるジェレミーと、カウベルとティンバレスで彩りを加えるマークのコンビネーションが見事で、随所に入るキメもタイトで実にクール。また、ジェレミーは見せ場となるソロでは、シーラを彷彿とさせるパッセージの速いフレーズを次々と繰り広げ、冒頭からオーディエンスを沸かせてくれた。
続くゴードンは1984年発表のソロ・アルバム『The Glamourous Life』のタイトル曲で、全米チャートTop10入りを果たしたヒット曲「The Glamourous Life」をプレイ。ちなみにゴードンがシーラを知ったきっかけの曲でもあるという。オープン・ハンド奏法を駆使するゴードンは、抜群の安定感を誇り、ポケットを深く突く貫禄たっぷりのドラミング。オリジナル・ヴァージョンもドラムとティンバレスの絡みが印象的だが、ゴードンとマークの打楽器コンビも強力! ラストは身体全身を乗せた強靭な1発で締め括ってくれた。
HALL of FAME ② EDDIE BAYERS(エディ・ベイヤーズ)
殿堂入り2人目はカントリー・シーンのトップ・ドラマーであり、膨大な数のヒット曲にビートを刻んできた重鎮、エディ・ベイヤー。日本では知る人ぞ知る存在だが、カントリーが盛んなアメリカでは、レジェンド中のレジェンドである。そんなエディへのトリビュート・パフォーマンスを行うのは、カントリーの聖地=ナッシュヴィルを中心に活躍する売れっ子スタジオ・ドラマー、エヴァン・ハッチングス。そして人気カントリー・ロック・バンド、ザック・ブラウン・バンドをまとめ上げるクリス・フライアー。現在のカントリー・シーンを牽引する2人で、エディの直系と言えるだろう。
数ある参加作品の中からエヴァンが選んだのは1993年に発表されたクレイ・ウォーカーのデビュー曲で、カントリー・チャート1位を記録した「What’s It To You」。3点セットにシンバル4枚というシンプルなセッティングから、“レス・イズ・モア”を見事に体現した、歌心溢れるドラミングを披露。リラックスしたフォームから放たれるサウンドはナチュラルで心地良く、ダイナミクス表現も実に音楽的。“ここぞ”という場面では、クラッシュを力強く豪快に鳴らしていたのも印象的であった。
続いてクリスがプレイしたのは、カントリー・シンガーのワイノナが1992年にリリースした「No One Else on Earth」で、やはりカントリー・チャート1位を獲得したヒット曲。セッティングは2タム、1フロア・タムのスタンダード仕様で、シンバルはエフェクトを含めた5枚構成。レギュラー・グリップでポケットを的確に突くスタイルで、極上のサウンド&グルーヴを展開。シンバルの鳴らし方も見事で、表現方法も発音も完璧。ライドのカップ音までも会場の隅々に響き渡らせていた。
HALL of FAME ③ DENNIS CHAMBERS(デニス・チェンバース)
殿堂入りしたドラマーの名演をまとめたダイジェスト映像を挟んで、紹介された3人目の殿堂入りはデニス・チェンバース。圧倒的な音数を駆使したドラミングで、元祖ビースト・ドラマーの異名を持ち、クラッシュ・オブ・ドゥームの生みの親でもある。数々のフォロワーを生んだ彼をトリビュートするのは、強靭なグルーヴと超人的なテクニックを備え、ジャスティン・ビーバーのサポートとしても知られる凄腕、デヴォン・テイラーと、ゴスペル系ドラマーの第一人者で、パワーとテクニック、グルーヴを高次元で備えたオールラウンダーのアーロン・スピアーズ。現代を代表する“野獣ドラマー”2人によるトリビュート・パフォーマンスに、個人的にも期待に胸が膨らむ。
デヴォン・テイラーが選んだのはファンカデリックの「Let’s Take It to the Stage」とパーラメントの「Mothership Connection」。デニスが参加したPファンク・オールスターズの名盤『Live at the Beverly Theater in Hollywood』(83年発表)に収録されているメドレーをステージ上で再現! バネの効いたワン・グルーヴで押し通し、見せ場ではスティックが見えないほどの超スピードで、縦横無尽にドラム・セットを駆け回るスタイルは、まさにデニスそのもの。客席で見守っている本人もスマホで動画撮影するほどの白熱ぶりだ。
デニスのトレード・マークであるキャップを被り、そっくりな見た目でも沸かせてくれたアーロンは、98年に発表されたゲイリー・ウィリスの「Emancipation」を選曲。ハーフタイム・シャッフルが特徴のフュージョン・ナンバーで、ポケットを突き刺すようなアプローチをクールにキメる。グルーヴ・マスターとしてのデニスへのオマージュを感じさせるパフォーマンスだ。その中に時折挟み込むゴスペル・チョップスはアーロン節が炸裂しており、デニスへの敬意と自分らしさを融合した、圧巻の内容であった。エネルギッシュにプレイする姿が印象に残っているだけに、先日の訃報は本当に信じられない。心よりご冥福をお祈りいたします。
HALL of FAME ④ TERRI LYNE CARRINGTON(テリ・リン・キャリントン)
折り返しとなる殿堂入り4人目は女性ジャズ・ドラマーのパイオニアで、グラミー受賞アーティストでもあるテリ・リン・キャリントン。独特なレイジングが施されたKカスタム・ハイディフィニション・ライドは彼女が考案したモデルだ。彼女へのトリビュートを行うのは、ドラマガ7月号の「the Alternative Jazz Drummers」でもフィーチャーした若手女性ジャズ・ドラマー、ロニ・カスピと、“ロイ・ヘインズの孫”という枕詞がもはや必要ないほどの活躍ぶりを見せるマーカス・ギルモア。テリリンのプレイ、そして音楽へ取り組む姿勢に影響を受けたという2人がパフォーマンスを繰り広げる。
ロニが演奏したのは、グラミー最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバムを獲得した2011年発表のソロ・アルバム『The Mosaic Project』収録の「Mosaic Triad」。小口径キットに16”ハイハットなどの大口径シンバルを配置した個性的なセッティングを駆使して、流麗なるドラミングを披露。スローンが極端に高いのが特徴で、「ダイナミクスを最大限にコントロールできる」と語っていたが、この日は小さい音のコントロールが抜群で、そこから生まれる豊かなダイナミクス表現もテリリンと彷彿とさせる。ヴォーカルもロニ自身が担当するなど、彼女ならではのパフォーマンスでテリリンへのオマージュを表現する。
マーカスも同じく『The Mosaic Project』から「Unconditional Love」を選曲。2タム、2フロア・タムにロニと同じく大口径シンバルを組み合わせ、左手側にプロトタイプと思われる合わせシンバルを配置した、こちらも個性的なセッティングで、マッチド・グリップを用いて、レガートもストレートで軽やかにスウィングする現代的なスタイル。しなやかなタッチで綺麗にシンバルを鳴らし、ソロではパッセージの速い、シャープなアプローチでバンド、そしてオーディエンスを鼓舞。無駄のないスムーズな動きも美しく、テリリンから受け継いだと思われる芸術性をさらに昇華させたドラミングで魅了してくれた。
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