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    close up! アコースティックを知り尽くした老舗ブランド渾身の“電子ドラム” Pearl e/MERGE

    • Text:Yusuke Nagano Photo:Takashi Yashima(Except *)

    02_Electronic Drum Module
    EM-MDL1

    デザインと操作性を両立
    ドラムの“響き”も直感的に加減

    e/MERGEの心臓部とも言える音源モジュール、EM-MDL1は、黒を基調とした洗練されたデザインで、ボタンやダイヤルをシンプルに配置し操作性を両立。コンパクトでありながらマルチコア・プロセッサーを2基搭載することで、WAVE
    TRIGGER TECHNOLOGYに対応するハイ・パフォーマンスを発揮します。

    プリセット・キットならびにユーザー・キットは、中央に配置された8つのカテゴリー・ボタンによって簡単に呼び出し可能。音楽ジャンルではなく、あえて“NATURAL”、“STUDIO”などの音色イメージが記され、プリセット・キットのそれぞれに5種のキットが割り当てられています。

    米国ナッシュビルにある広大なスタジオで臨場感たっぷりに収録されたサンプル音源は、フラッグシップであるリファレンスやリファレンス・ピュア、アクリル・シェルのクリスタルビートなど、世界中のPearlアーティストが愛用する名器達。各楽器のコンセプトを理解した上で、ベストなヘッド選択やミュート/チューニングを施して緻密に音作りされたということで、ドラム・メーカーならではアドバンテージを感じます。

    また、フェーダーでアンビエンス・レベルを簡単に調整できる機能も大きな特徴で、内部メモリーに記録されたレコーディング時のリアルな室内の響きを直感的に加減できます。

    アウトプットはL/Rの他に、8系統のダイレクト・アウトとヘッドフォン端子を装備し、シンバル/タム・パッドの追加も可能。シンプルな操作性でありながらプロ・レベルのレコーディングやライヴにも対応する実力を兼ね備えています。

    その他の機能面としては、コンプやイコライザーなどの内蔵エフェクトやピッチ変更、内蔵メモリーに演奏を録音する機能、外部入力端子を介して、スマホなどの外部音源や内蔵クリックに合わせて演奏も可能です。

    8つのキット呼び出しボタンと中央のダイヤルで簡単に音色を操作可能。
    ドラムの“響き”はAMBIENCE フェーダーで直感的に調整。

    モジュール右面にはスネア・パッド/タム・パッド×3/シンバル・パッド×2/キック・パッドをまとめたトリガー端子と3つの追加パッド用端子など、入力系が揃う。
    向かって左側には8系統のダイレクト・アウトなど、出力系をまとめている。
    背面は電源やMIDIなど、その他の入出力系を配置。

    COLUMN─
     e/MERGE開発者 竹川彰人(パール楽器製造)氏によるプリセット・キット解説

    プリセットのキット数は7ジャンル(“USER”ジャンルを除く)、各5キットで、合計35キットとなっていて、アーティストのみなさんからも「多すぎず、少なすぎず、ちょうど良い」と言っていただいています。ボタンの名称については、音楽のジャンルではなく、基本的に楽器の種類の違いで分けました。そのねらいとしては、たとえばジャズというジャンルに使われている楽器は、ロックに使えないのか、というとそういうことはないと思います。音楽ジャンルを明記すると限定されたイメージを与えてしまうため、極力避けました。

    ここからは順番にジャンルを説明していきましょう。

    NATURALは電子ドラムにはありそうでなかった、EQやコンプ、エフェクトなどをできるだけかけずに、聴き慣れたアコースティック・ドラムの音を再現しよう、というコンセプトのジャンルです。“Crystal”、“Reference”といった、Pearlのシリーズ名を連想させる名前がついているキットもあります。ちなみに、各音色を細かく見ていくと、Pearlの製品名が詳しく表示されますので、アコースティック・ドラムの音を知ることにも使えると思います。

    MODERNは、1990〜2000年代のメタル系やオルタナティヴロックの音色をねらって、今度はEQやリヴァーブを意図的にかけています。中には“ダキダキ”のアタック感を持ったキットもあります。キットの名前を見て、元ネタを想像するのも楽しいかもしれません。

    STUDIOは、1980年代のアメリカンロックやフュージョン系の音色を中心に構成されています。VINTAGEは、さらに遡って、1960〜70年代のソウル、ファンク、ハードロックの音色をモチーフにしています。ただ、いわゆる“ネオ・ヴィンテージ”と呼ばれる、わざと歪ませてヴィンテージ感をねらった“新しい古い音”のキットもあります。

    ELECTRONICは、電子打楽器やリズム・マシンの音色を中心に、アナログっぽい音色から2010年代のEDMに使われるような音色まで網羅しています。HYBRIDは、電子ドラムとしてユニークなジャンルだと思いますが、生ドラムと電子楽器、パーカッションを組み合わせたキットで構成されたジャンルです。WORLDは、パーカッションのみのジャンルです。

    開発時、1つ1つのキットの音色を決め込む段階になったときには、レコーディング時にあった“お題”よりも、さらに具体的な“何風”、“誰風”、“あの曲風”というキーワードが飛び交っていました。原曲を聴きながらタムのピッチを微調整したり、リヴァーブの具合いを調整したりしていきました。アドバイザーとして、Pearlアーティストのヤヒロトモヒロさん、鶴谷智生さん、イトケンさん、松本英二さんにも意見を聞いて、キットの音決めを進めていきました。英二さんはメタルコアなどの高速ドラミングのイメージが先行している方も多いかと思いますが、EDM系の音色についてもたいへん詳しく、そういった分野でもさまざまなアドバイスをいただきました。

    基本的に音作りは両社のスタッフとアーティストの意見のみで進めていたのですが、どうしてもバリエーションに苦しんだところがあって、江戸前レコーディングスの鹿間朋之さんに数セット分のエディットをお願いしました。その時点ではもう開発的に最終的な“味付け”段階にきていたので、その前段階の材料をいじるということはKORGさんでもほとんどやらないそうですが、鹿間さんにも“お題”を伝えて、材料となる音を作ってもらいました。結果的には、ねらい通りバリエーションが増えて非常に良かったと思います。

    すべてのプリセット・キットにこだわりがあるのはもちろんですが、1つだけ紹介すると、STUDIOジャンルの1番目のキット、“First Call”は、Pearlにとって特に縁の深いJeff Porcaroに捧げたものです。生前のJeffと実際に一緒に仕事をしていたPearlスタッフの話を聞いたり、さまざまな資料を調べ、あらためて彼が使っていた楽器/ヘッド/チューニングを調査し、録音に臨みました。もちろん本人が使用した機材そのものを使ったわけではないですが、彼が愛した楽器と同じ仕様のものを使って当時の音を再現する、ということにその場にいたスタッフ全員が燃えました。スタジオにあった最高級の機材で、TOTOの「Rossana」をみんなで聴いたのは、ひときわ特別な思い出です。

    Pearl Drums Japanの公式YouTubeチャンネルにて、Pearlアーティスト達によるデモ演奏を公開中‼︎

    Specification

    【CPU】2CPU(4core+2core)
    【同時発音数】128
    【インスト数】700
    【ドラム・キット数】プリセット35、ユーザー50
    【エフェクト数】36
    【録音】<フォーマット>WAVファイル(PCM形式:44.1kHz、16bit、ステレオ)、<時間>最大合計12時間(1ファイルの最長録音時間:1時間)
    【メトロノーム】<テンポ>BPM30-300、<拍子>1/2-24/2、1/4-24/4、1/8-24/8、1/8T-24/8T、1/16-24/16(T=3連符)、<音色数>10
    【操作子】各種ボタン、ノブ、ダイヤル、AMBIENCEフェーダー
    【ディスプレイ】240×64ドット(バックライトつきグラフィックLCD)
    【接続端子】MASTER OUT L/MONO、R端子(標準フォン・ジャック、アンバランス)、DIRECT OUT 1~8端子(標準フォン・ジャック、アンバランス)、HEADPHONES OUT(ステレオ標準フォン・ジャック)、AUX IN(ステレオ・ミニ・フォン・ジャック)、TRIGGER IN端子(D-sub25ピン)、ACC INPUT端子×3(TOM4/ACC1、ACC2、ACC3、TRS標準フォン・ジャック)、TO PC端子(USB B端子)、TO MEMORY DRIVE端子(USB A端子)、MIDI OUT端子
    【電源】ACアダプター(DC12V)
    【外形寸法】227×185×122mm(WHD)
    【質量】905g(本体のみ)

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    “PUREtouch Electronic Pad”