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独占! 長谷川浩二が語る自身初となるシグネチャー・スネア「TAMA KH1465」開発秘話!!
- 撮影:西槇太一
- ヘアメイク:331塚本典子
来年プロ・デビュー40周年を迎える日本屈指のハード・ヒッター、長谷川浩二。長年TAMAのドラムを愛用してきた氏のキャリアとこだわりを凝縮したシグネチャー・スネア・ドラム、KH1465が完成! “出過ぎるくらいのサウンド”が鳴るスネアにしたかったという長谷川に、意外にも自身初となるシグネチャー・モデルへ込めた想いを語ってもらった。
こういう音しか出ません”っていうスネアとは
真逆な方向に振り切っている
●初となるシグネチャー・スネアが発表となりましたが、お話自体は随分前からあったそうですね。あらためて完成に至るまでの経緯を教えていただけますか?
長谷川「シグネチャー・スネアを出しませんか?」という話は以前から何度もいただいていたんですけど、ずっと「要りません」って返事をしてきたんです……本当に失礼ですよね(笑)。ただ、それには理由があって、既存のTAMAのスネアにまったく不満がなかったんです。
もともとあるものを自分の好みに仕上げていく方が好きで、ずっとメインで使っていたラーズ(ウルリッヒ)モデルは、これぞシグネチャー・モデルという感じで、正直使いやすいスネアではないと思うんです。倍音は出過ぎるくらいに出るし、とにかく暴れるし、まさにラーズのスネアという印象で。それを何とかねじ伏せて、自分のサウンドに近づけていくことが楽しくて。それもあって長年使い続けていたんです。
それでもTAMAのスタッフから何度もシグネチャー・スネアのお話をいただいて、熱意もすごく伝わってきたので、そこまで言っていただけるのであればということで、お願いすることにしました。
自分はいろんな人達と、いろんな楽曲を演奏するので、いろんな音を出したいと思っているんです。だから自分のシグネチャー・モデルを作るならば、倍音が出過ぎたり、ローが強過ぎたり、一般的に良くないと言われているような音も全部出るものにしたかったんです。“出過ぎるくらいのサウンド”というイメージで、出るものを抑えるのは簡単だけど、ないものを出すのは無理じゃないですか。
それでTAMAのスタッフとシェルの素材からパーツ選びまで、とにかくこだわって、何度も何度も試作品を作ってもらいました。試して、違う、試して、違う……というやり取りを5〜6年くらい繰り返して、やっとの思いで辿り着いたのが今回のシグネチャー・モデルなんです。
●購入する方は長谷川さんのサウンドをイメージするわけですが、これまで既存のスネアを長谷川さんの手で自分の好みに仕上げていたものを、シグネチャー・モデルとして形にするのは難しかったんじゃないですか?
長谷川 まさにそれが一番難しかったですね。誰が叩いても自分に近い音が出るようにしなければいけないので、ボディ(シェル)はもちろん、フープやスナッピーもいろんなものを試しました。
最初に作ってもらったプロトタイプはプレス・フープで、一般的にはそっちの方が良いんだろうなっていう音だったんですけど、自分にとっては落ち着いていてつまらない音に感じたんです。もっとカンカン言わせたいと思ってダイキャスト・フープに変更してもらったり、スナッピーも細かい音が出るStarclassicの20本タイプにしてもらいました。
ローが出るブラス製のスナッピーを長年使っていたんですけど、いろんなジャンルの音楽をやるようになってからは、音の立ち上がりの良いStarclassicの20本タイプの方が使いやすく感じるようになってきたんです。
だから昔からの好みと、今の自分が使いやすいと思うことの両方を凝縮した感じで、たくさんの音が出せるスネアになっていると思います。ヘッドを変えるだけで印象がガラっと変わりますし。
●長谷川さんがやっている音楽を網羅できるようなスネアになっているということですね。
長谷川 上手な言い方ですね(笑)。でも本当にその通りで、“こういう音しか出ません”っていうスネアとは真逆な方向に振り切っていると思います。だからこそ作るのが大変だったんですよ(笑)。
●以前、“無人島スネア”の取材時に持ってきていただいた3台のシェルが、ベルブラス、チタン、3mm厚スティールだったのですが、このシグネチャー・モデルも1.2mm厚のステンレス・スティールと、やはりヘヴィなシェルが採用されています。
長谷川 重いのばっかりですよね(笑)。でも、今、サポートをやらせてもらっている筋肉少女帯はもちろん、その前にやらせてもらっていたT.M.Revolutionだったり、さらに遡ればTHE ALFEEもそうですけど、スネア・サウンドに関しては常に立ち上がりの良さ、ツブ立ちの良さが求められてきたので、自然とシェルは金属で、ヘヴィな仕様になってしまうんです。
イメージ的には少し硬い感じがするかもしれないですけど、歪んだギターやベースの音の中で、電気を通さない生の音を出すには、ある程度の硬さや強さが必要で。
あとは時代的にも、デジタル(サウンド)がこれだけ氾濫しているわけで、打ち込みに慣れている人には、サウンドにエッジがないと響かないだろうなとも思って、それもTAMAのスタッフにはいろいろと調整してもらいました。
ヘヴィさを求めて、もっと肉厚なスティールも試したんですけど、イメージした鳴りとは違っていたり……本当に試行錯誤して今のスペックに辿り着いたという感じです。
このスネアはやる気にさせてくれるし、1台でいろんな使い方ができる
●お話を聞いていると、来年プロ・デビュー40周年を迎える長谷川さんが、今までやってきた経験が詰まったスネアとも言えますね。
長谷川 そうですね。あとはヴォーカリストがいるバンドで演奏することが多いんですけど、ヴォーカリストはスネアを聴いてリズムをキープするという感覚があると思うんです。それはギタリストもベーシストもそうで、キックじゃなくてスネアを聴く。だからいかにスネアの音が正確で、コンスタントにしっかりと同じ音色を出せるか、というところも作る上では意識しましたね。
●なるほど。ではシグネチャー・モデルを作る上で最初から決めていたことはありますか?
長谷川 決めていたことではないんですけど、最初はこれまで使ってきたAir-Rideを復活させることはできないのかっていう話はしました。でもそれは難しいということで、正直Air-Rideなしで、自分が納得のいく鳴りのスネアはできないんじゃないかと思っていたんです。でもTAMAのスタッフが試行錯誤してくれて、Air-Rideなしで、納得できる鳴りのものができたんです。
筋肉少女帯のツアーはこれまでずっとAir-Rideを装着したラーズ・モデルがメインだったんですけど、11月のツアーからは、このシグネチャー・モデルを使っていきます。
●サイズやスペックについてはどうですか?
長谷川 サイズに関しては13”や15”にしようという考えはまったくなかったんですけど、6.5”という深さは、いろんな音楽をやる上で必要かなと思っていました。
シェルに入っている“KH”のロゴは息子にデザインしてもらったんですけど、それが気に入っていたので、ちゃんとロゴが見えるように、主張し過ぎないチューブ・ラグを選びました。
あとはスナッピーのスイッチを演奏中にけっこうオン/オフするので、ワンタッチで操作できるものにしてもらいました。右手側にスイッチがついてるんですけど、これはAir-Rideを使っていた名残りで、無意識でやっているから、右手側にスイッチがないスネアだと上げ忘れることが多くて(笑)。
●無垢な質感のルックスもカッコいいと思いました。
長谷川 そう言ってもらえるとうれしいです。見た目で“金属感”を出すっていう点もこだわりましたからね。見るからに鳴ってくれそうだし……実際すごく鳴るんですけど、見た目のイメージって大事じゃないですか? いかにやる気にさせてくれるのかっていう。このスネアは間違いなくやる気にさせてくれるし、フープや打面ヘッド、サイド・ヘッド、スナッピーを変えるだけでいろいろな音色に変化してくれる。プロが求める高いレベルの要望にも応えてくれるし、アマチュアでもきっと納得のいく音色が見つかると思います。1台でいろんな使い方ができるスネアに仕上がっているので、このボディを使って楽しんでもらえたらうれしいです。
*KH1465は2022年12月発売予定となっております
12月16日発売のリズム&ドラム・マガジン2023年1月号では、長谷川浩二シグネチャー・スネア・ドラム「 TAMA KH1465」をさらに深堀り! 詳細な試奏レポートに加えて、チューニングや鳴らし方など、長谷川さん流の使い方を徹底考察。さらに縁深いアーティスト、関係者、さらに長谷川さんを慕うドラマーへのアンケートも実施!撮り下ろしによるイメージ・ヴィジュアルもガラリと変わるので、そちらもお楽しみに!!