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神田リョウ初の著書「神田式 一生使えるグルーヴのレシピ」特設サイト
- Photo:Taichi Nishimaki
- Text:Isao Nishimoto、Rhythm & Drums Magazine(Interview)
ドラマーという仕事は大工さんみたいなもの
その人が一生住みたいと思う家を建ててあげたい
●プロ活動の初期は、主にジャズをやっていたと聞きました。
上京した当初は、とにかく自分の名前と演奏を覚えてもらうために、いわゆるセッション・バーで行われているジャム・セッションに顔を出しまくっていたんですけど、初めて行ったセッションでベースの森田悠介と知り合って、それがきっかけで桑原あいちゃんとピアノ・トリオをやることになったんです。プロ・ドラマーといっても資格のようなものがあるわけじゃないし、どうやって仕事として回していけばいいのかもわからなかったので、できることは全部やろうというスタイルでした。あと、当時の『報道ステーション』のテーマ曲や、アニメ『坂道のアポロン』とかで弾いていたピアニスト松永貴志さんとのトリオもありました。そんな感じで、思いのほかジャズが多かったですね。でも自分としてはジャズが得意とは思っていなくて、もっと大きい会場でやりたいなという漠然とした夢もあったので、方向性にちょっと悩んだ時期もありました。結局、さっき話した森田悠介を通じて守尾崇さん(キーボーディスト/アレンジャー)との縁ができて、ベースの堀井と一緒にBoAさんの2014年のツアーに呼んでもらったところからメジャー・アーティストとの仕事が始まったんですけど、そのあたりからセルフ・ブランディングを考えていくようになったりもしたんです。
●今の神田さんの活躍ぶりを見ると、そのセルフ・ブランディングがとても重要だったことがよくわかります。
どこかに就職するのと違って、プロのミュージシャンというのはものすごく危ういじゃないですか。しかも僕はいきなりフリーランスだったので、何とか仕事として成立させようと、もう意地でしたね。客観的に分析して、仮説と検証を繰り返して、すべて実行する……それだけでここまで来た気がします。SNSの使い方も、コミュニケーションの取り方も、練習の仕方もみんな同じだと思います。こうすればこうなるんじゃないか、という仮説と検証ですね。思いつく限りの努力を全部やってみる。人はそれを“本気”と言うんだと思ってます。
●Instagramのドラム動画「#一日一グルーヴ」で神田さんのことを知った人も多いと思います。あれを始めたきっかけは?
後にドラム・マガジンの連載「#月イチ1グルーヴ」で動画を収録することになる江戸前レコーディングスのエンジニア鹿間(朋之)さんと、2014年にドラム・ループ集(『EDOMAE LOOPS』)を作ったんです。僕自身いろいろなジャンルのドラムを叩けるようになったので、たくさんのドラムが置いてある江戸前レコーディングスで録音しようという話になって。ただ当時は神田リョウって何者?っていうくらいほとんど知られていなかったので、無料の宣伝活動みたいなことをやろうと思って、1月1日から毎日ドラム動画をアップする企画をスタートさせました。
●動画の内容も、バリバリの教則的なものやテクニカルなプレイを見せるのではなく、リハーサルやライヴのサウンド・チェックの1コマなどを切り取ったものが新しかったと思います。
2年目からは特にそうですね。音色とビートで勝負したかったんですよ。手数とかフレーズの面白さではなく、アーティストの後ろで叩くバック・ドラマーとしてのスタンスで需要を見込みたかったというか。だから画としては地味なんです(笑)。
●まさにその、バック・ドラマーの日常を切り取ったような感じでした。
わかる人がこの動画を観たら、ちゃんと届くんじゃないかと。いわゆる“業界の大人たち”が探しているドラマーって、手数とか派手なフレーズがどうこうじゃなくて、仕事としてちゃんとアーティストを輝かせることができるプレイヤーだと思うんです。そういう大人たちの安心感と、アーティスト自身の満足度を良いバランスで作れたらきっと需要はあるだろうと。だから、たまにテクニカルな動画も投稿しましたけど、基本的にはリズム・パターンというかビートでしたね。
●いわゆるドラム・ヒーローとは違うスタンスですね。
僕はいろいろなところで、“ドラマーという仕事は大工さんみたいなもの”と言っているんです。こんな家を建てたいというアーティストがいて、こんなふうに建てましょうと図面を書いてくれるアレンジャーやプロデューサーがいて、そこに対して職人の技術を提供するのがドラマーかなと思っていて。だから自分は、アイツに頼んだら間違いないと思ってもらえる大工さんになろうと。そして、家専門、ビル専門、さらに特殊な建築物の職人がいる中で、僕は何でも建てたい……何でも叩きたいんですよ。こんな家を建てたいという図面が来たときに、どんな難しいものでも僕はしっかり返したいと思うし、 その人が一生住みたいと思う家を建ててあげたい。それが僕の仕事ですね。
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【Information】
定価:2,420円 (本体2,200円+税10%)
著者:神田リョウ 仕様:A4変形判 / 112ページ
品種:ムック
発売日:2022年09月13日
ISBN:978-4-8456-3802-4
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