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    アコースティックエンジニアリング meets FUYU〜プロ・ドラマーが体感したショールーム・スタジオの響き #3〜

    • Photo:Taichi Nishimaki、Akito Takegawa(*)
    • Movie:Akito Takegawa Text:Isao Nishimoto
    • Recording & Mix:Tomoyuki Shikama(EDo-mae-Recordings)

    レコーディング・スタジオ、ライヴ・ハウスなどの防音/音響工事を行う建築設計事務所、アコースティックエンジニアリング。一般住宅の防音室も数多く手がける同社は、東京・九段下の本社オフィスにショールーム・スタジオを構えている。ドラムの録音に適したルーム・アコースティックも自慢の1つで、『第24回誌上ドラム・コンテスト Find the Pocket 2025』の最終審査員FUYUによるデモンストレーション演奏動画の撮影はここで行われた。以下の記事では、撮影時にFUYUが語ってくれたスタジオの印象を動画とテキストでお届けする。

    単に遮音するだけでなく
    施主が求めるサウンドの実現に注力

    こちらの動画は、デモンストレーション演奏のダイジェストとFUYUのコメントで構成。デモ演奏のフル・ヴァージョンは2026年1月号のストリーミング・コードから視聴できる。スタジオの音をじっくり確かめたい人はぜひチェックしてほしい。

    アコースティックエンジニアリングの本社オフィスに併設されたショールーム・スタジオは、同社が設計/施工するスタジオの遮音性能や室内の響きを体験できるスペース。施主の多くがここを訪れ、安心感を得てスタジオ作りに臨んでいる。その特徴は過去の記事でも紹介しているとおりだ。

    あらためてポイントを挙げると以下のようになる。

    ・メイン・ルーム(約12畳)とサブ・ルーム(約4.76畳)の2室で構成
    ・他のテナントも入居するオフィスビルで、十分な遮音性能を確保
    ・複数の素材を組み合わせて、楽器演奏/音楽制作に適した室内音響を実現
    ・ドラム・セット、ギター、ベース、アンプを常設
    ・プロ仕様のレコーディング・システムを完備
    ・メイン・ルームの床に2種類の異なる仕様(湿式/乾式)を設定

    DAWを中心とした音楽制作機材がセッティングされたメイン・ルームの一角(*)。
    アルミ製の見切り(写真中央)を挟んで2種類の仕様に分かれたメイン・ルームの床。手前がコンクリート(湿式床)、奥がパーチクル・ボードと石膏ボードを組み合わせた乾式床となっており、それぞれ、異なる響きとなる(*)。

    特にアコースティックエンジニアリングが力を入れているのが室内音響だ。同社で設計を担当する中島 元氏は、ドラマーの自宅スタジオを依頼された場合を例に、次のように説明する。

    中島「弊社の設計の趣旨は、お客様の要望に合わせたスタジオを設計すること。それはもちろん、外に音が漏れないようにする遮音性能に関することもありますが、その方がどういうドラムを使ってどういうプレイをするか、それを設計に反映させるのが一番大事なところだと考えています。ただベタベタに吸音されたデッドな部屋を作るのはすごく簡単なんです。そうではなくて、その人の志向に合うバランスのとれた響きを、予算の範囲内で実現するように提案させていただいています」。

    アコースティックエンジニアリングの設計者は自身も楽器を演奏し、ミュージシャンの立場に寄り添った設計/提案で定評がある。中島氏は趣味でドラムを叩くため、特にドラマーとは打ち合わせ段階から話が弾むそうだ。

    今回FUYUが使用したTAMA Starclassic Walnut/Birchがセッティングされたメイン・ルーム。壁と床でそれぞれ異なる素材が使われていることがわかる。ドラム背後の壁の中段に設けられているのは、反射音を拡散させるサウンド・ディフューザー。
    木材を原料としたMDFという素材で組み上げられたサウンド・ディフューザー。主に中高域を拡散させる効果があるという。上下に間接照明が仕込んであり、くっきりした陰影が内装面のアクセントにもなっている(*)。