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Product Report – British Drum Co.
- Photo:Paul Worpole Photography、Takashi Yashima(products) Special Thanks:ELECTORI CO.,LTD.、G-ROKS Shimotakaido
さまざまなパーツを自社生産 スピーディな納品も実現
BDCでは、ストレイナーやラグ、スネアワイヤーといったパーツも、自社でデザインから生産まで完結しています。ストレイナーに関しては、非常にシンプルなフリップダウン・スタイルを採用しました。日々の使用やライヴ会場ごとでのセットアップなどを考え、耐久性はもちろん、実用性とデザイン性のバランス、非常にスムーズで静かに操作できる機能性も高いと自負しています。
また、ライヴ現場でドラムをチェックするときに、最初に目にするのはバス・ドラムのヘッドとそのロゴですよね? 次に目がいくところはタムに取りつけられているラグになります。ブランドを主張し、親しみやすくかつユニークなデザインのラグというと、ハードルが高いものになったのも事実です。いくつかのアイディアが出てきたのですが、最終的にアール・デコ調に影響を受けたデザインを採用することにしました。何とか、象徴的でかつ流行に左右されないデザインに辿り着けたと思います。
スネアワイヤーはほとんどすべてのモデルが、ブラス・プレートに取りつけた20本線になっています。スティール製のコイルは最大限にレスポンスが得られる素材を使用しており、ブラス・プレートは、センシティビティを上げて自然な鳴りが出るようになっています。唯一の例外はニコ(マクブレイン)のシグネチャー・モデル(TalismanとIcarus)で、彼がお好みの42本線を採用しています。何といっても彼のシグネチャー・モデルなので!
(ラグやストレイナーだけでなく、バッヂやベント・ホールなど、細部のデザインも凝っていますよね?)……それは音だけでなく、芸術的な外観も含めてそれぞれが個性的なキャラクターを持っており、ほとんどの製品にその開発背景があるからです。
●今冬国内で発売されるスネア3モデルのバッヂとベント・ホール
例えばYEW TREE(イチイ)をシェル材に使用したArcherスネアの場合、イチイがアーチャー達の使っていた長弓に古くから使われていることをKeithが知り、そのコンセプトでスネアを作ってみたいという思いからスタートしました。この木を使うことで、非常に強いというだけでなく、柔軟性も卓越した弓を作り出すことが可能になっていたのです。これを実現させるためには、木の異なる部分を使うことがポイントでした(我々はそれらを“ハイエナジー木材”と呼んでいます)。Archerスネアは、そのコンセプトと特性が想起されるバッヂを取りつけています。
同様にBluebirdスネアは、ブルーに刻印されたBのバッヂが採用され、Merlinにはゴールドに刻印されたバッヂが使われています。今後の製品にも同様の手法でそれらのコンセプトを生かしたバッヂを作成することになると思います。
創業してからこの5 年間、ブランドが大きくなるにつれて、新たな機械や工具を増やし、より効率的な工程を作ってきました。そのため、新製品開発により時間を割くことができるようになっています。新たなコンセプトができてくれば、その日のうちにプロトタイプを作ることも可能になってきています。
さらに、パーツ供給や製造工程を最大限コントロールしていくことを念頭に、改善を積み重ねてきました。つまりパーツ在庫を、可能な範囲で自社で保有することに加えて、できるだけ外注をなくして、社内で完結するような工程にしています。パーツの品質もしっかりと管理でき、バッヂ、ガスケット、ワッシャー、ウッド・インレイ、シェル・ステッカーまで自社生産しているのです。
木材や金属加工といった外注が必要な材料以外はコントロール可能なので、職人によるハンドメイドながら12 週間の納期で製品を完成させることができるようになりました。特にCOVID-19 による状況下において、この納期は非常に素晴らしいと多方面から評価を受けています。