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【ジェフ・ポーカロ生誕記念】The Inspirations Behind the Session King〜ジェフのインスピレーションの源を考察〜
- Text:Robyn Flans/Rhythm Issue 300
- Translation:Taka Matsumoto/Photo:Jyoji Ide
本日4月1日はジェフ・ポーカロの生誕記念日。DM2022年10月号では没後30周年の節目に、稀代のドラマーを偲ぶメモリアル特集を展開。ここでは同号にも掲載した海外記事を抜粋して公開。執筆者は生前のジェフと親交が深く、『It’s About Time』の著者でもあるロビン・フラン。イギリスのドラム雑誌『Rhythm』に寄稿された原稿で、黄金のグルーヴと称えられ、今なお多くの音楽家に影響を与え続ける彼のフィールの本質を紐解く内容となっている。
ジェフ・ポーカロは生前も死後も、「グルーヴ・マスター」や「黄金のグルーヴを持つ男」など、“グルーヴ”という言葉がつく呼び名で知られてきた。それは数多くいるドラマーの中でも、ジェフのようなフィールを曲に吹き込めるドラマーは他にいないからである。以下の記事は、私が1988年の『Modern Drummer』で彼のグルーヴについて書いたものだ。
私はジェフ・ポーカロについて何を書こうかと考えながら車を走らせていた。考えることに集中していたのでラジオのボリュームはほぼゼロだったが、突然かかった音楽にボリュームを上げた。ほぼ無意識に私が耳にしていたのは、とても心地良いグルーヴだった。それがボズ・スキャッグスの「Lowdown」で、そのドラムを叩いているのがまさに自分が考えを巡らせていたドラマーであったことに気づいたとき、私は笑った。私はほとんど聴こえないラジオからそのドラムを感じたのだ。曲が終わり、私は局を変えた。次にスピーカーから流れてきたのは TOTO の最新アルバム『The Seventh One』の「Pamela」だった。またあのフィールだ。そのとき、私がジェフ・ポーカロについて伝えたいのはこれだと確信した。
数時間後、私はレストランにいた。友人との会話の最中に後ろからかすかに聴こえてくる音楽が気になった。TOTO のファースト・アルバム『TOTO』の「Georgy Porgy」だったのだが、私はなぜそのレストランでずっと流れ続けていた他の音楽には気づかなかったのだろうか。もしかしたらジェフのようなグルーヴの演奏をする人が他にいないからなのかもしれない。彼の演奏を生で見たことがある人なら、それが彼であることがわかるだろう。彼は身体と魂を音楽のフィールに捧げているからである。
“グルーヴ”はおそらく、私の近著『It’s About Time: Jeff Porcaro, The Man and His Music』の中で最も多く使われた言葉だろう。それは本著でインタビューした人の多くが口にした言葉であり、ジェフがこの世に残した消えることのない痕跡を描写する、名詞としても動詞としても使うことができる言葉なのである。「彼はとても深く“グルーヴして”いる」や、「彼の“グルーヴ”はまるで海のようだ」といったように、彼は常にそういうドラマーであった。
ジェフ・ポーカロのグルーヴ
スティーリー・ダンの「Parker’s Band」は、ジェフがドラマーのジム・ゴードンと一緒に叩いた曲であるが、スティーリー・ダンのギタリスト、デニー・ディアスは「ジェフのおかげでこの曲はとてもソリッドに仕上がった」と言い切っている。「ゴードンはスタイルが違う。彼も素晴らしいドラマーだが、ジェフのようなソリッドなフィールはない。ジェフがグルーヴを生み出すともうそこから逃れることはできなくなるんだ。ゴードンはタイミングに揺らぎがあって、ジェフのようなソリッドなバック・ビートは持っていなかった」と言う。
また、スティーリー・ダンのドナルド・フェイゲンは、「普通はロックンロール・ドラマーの中から誰を選ぶのか決めるのは難しいが、彼には彼が追求したグルーヴがあり、本当にグルーヴが素晴らしかったから、彼を使おうと思った」と語っている。
ドラマーのヴィニー・カリウタがポーカロと初めて会ったのは、トム・スコットのセッションで、彼の友人のベーシスト、ニール・スチューベンハウスのゲストとして参加したときだった。「グルーヴがとにかく桁違いだったんだ。サンバのような、ファンクのようなグルーヴで、ジェフはとにかく終始すごかったよ。あんなのが聴けて本当に最高だったね。俺には魔法みたいに聴こえたんだ」……そうカリウタは回想する。
プロデューサー兼ギタリストのジェイ・グレイドンは、彼のグルーヴとポケットをこう表現した。「俺はこの街にいるすべてのドラマーのグルーヴを知っている。すべてのドラマーがどこにポケットを置くのかを知っている。ジェフのポケットの何が特別かというと、彼はスネアのバック・ビートをほんの少し遅らせていた。マイクロ秒レベルの話だけどね。他の人達はみんなど真ん中で叩くのがいいと思っていたけど、実際はその方がいい感じに聴こえたんだ」。
プロデューサーのラス・ティテルマンも「彼は完璧なドラマーであるが、常に深いグルーヴと深いフィールを持っている」と賛同する。エンジニアのニコ・ボラスはこのように説明した。「どのTOTOの曲でも重要なのはあのグルーヴなんだ。他のものは置き換えたり、取り除いたり、別のアイディアを試したりしてもいいけど、あのグルーヴだけは変えてはいけない。ジェフが“要”なんだ。「Africa」はまずあのグルーヴがあって、そこにジェフのアフリカに対する思いや想像力が加わって生まれた曲なんだ。音楽は概してメロディとグルーヴが第一で、それ以外の部分は楽しむための二次的なもの。ジェフ(の音楽)がトップ10に入っているのに気づくのは、いつもスーパーの食料品売場を歩いているときだってことがそれを証明している。何が聴こえてきていたとしても、実際にはグルーヴとメロディしか聴いていない。ジェフはそういった意味で完璧なリーダーだったんだ」。
ベーシストのネイザン・イーストは、「ジェフは曲に入るためのカウントまでもが深くグルーヴしていた」と笑いながら語った。「ジェフはスティック同士を叩き始めただけですでにいいフィールなんだ。だから曲のアタマに行くまでにいい助走がつけられる」とイーストは言う。そしてブルース・スプリングスティーンまでもが、ジェフのグルーヴを深く美しいと評している。
*本記事は2022年10月号の内容を抜粋した内容となります

原稿の後半では、ジェフのルーツ、彼にインスピレーションを与えたドラマー、名演におけるアプローチの核心にも言及。さらに、リーランド・スクラー、スティーヴ・ルカサー、ゲイリー・カッツら盟友たちがジェフの素顔を語った貴重なインタビューも掲載。
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