「愛す」のバス・ドラムは
一緒に鳴らす楽器によって印象が変わる
“色男”みたいな感じですね

●先ほど“ドラムがない曲があってもいい”というお話も出ましたが、「二人の間」、「なんか出てきちゃってる」は打ち込みなのでしょうか？

小泉　「二人の間」はスタジオでアレンジを詰める段階でリズム・パターンの方向性はある程度決まっていて、フィルなどを考える作業を自宅のエレドラでやっていたんですけど、そのときたまたま見つけた音色がこの曲に合いそうだと思い演奏を録音し、メンバーに聴いてもらったところ、そのときの音源がそのまま採用になったんです。それとは別にメンバーが打ち込んだハイハットだったりも重ねています。

「なんか出てきちゃってる」は、デモを主に小川（幸慈／g）が作ってくれて、ハイハットはそのときのものをそのまま使用しています。バスドラとスネアは、自分が考えたパターンをいくつかレコーディング当日に尾崎に聴いてもらい、その場で採用されたパターンをワンフレーズ叩いて録音し、それをループさせています。なので、2曲とも意外とアナログな打ち込み、とでも言いますか、生音も生かす方向での打ち込みになりました。

●ライヴでのアレンジはすでに考えているのですか？

小泉　これからいろいろと試してみてからですが、楽曲の特徴的なサウンドはぜひ再現したいので、トリガーなどを使おうかなと。同期も鳴らしつつ、楽器も演奏する、というちょうど良いバランスをこれから探れたらと思います。

●「四季」は途中で展開が変わりますよね。

小泉　前半と後半とで雰囲気がガラッと変わる、という珍しい構成の曲ですが、ピアノの演奏を軸にリズムの方向性は決まっていった感じです。アレンジしていく中で、リズム楽器が次々と重なっていく感じはどうか、という話になり、フロアを絡めたフレーズをいくつか考えて、データでやり取りをしながら、音を重ねてみたものを聴いて検証しました。途中で着地点がわからなくなったのですが、最終的にこの形に落ち着きましたね。ボンゴを叩いて重ねているのですが、これによってイメージには近づけたのかなと思っています。

●「愛す」のバス・ドラムの音色はすごく特徴的で印象に残りました。

小泉　レコーディングでは、つるっとワンコーラス演奏したものの良い部分を切り取って、トラックを組み上げたように記憶しています。そのときはどうやったら生ドラムで打ち込みっぽい感じを出せるのか、というのを探っていて、テックの藤井さんとも相談しつつ、サウンドを決めていきました。バス・ドラムは、確かツブ立ちをよくするためにいろいろと試した結果こうなったのだと思います。イントロはスネアの位置にクラップがきていて、バンドインするとスネアが出てくるから、聴感上、バス・ドラムの音が目立って聴こえるのかもしれませんね。組み合わせによってキャラクターが変わるというか、“色男”な感じがします。

●「しょうもな」は今作の中では一番”今までのクリープらしさ”を感じるような気もします。

小泉　「手と手」みたいな感じでいきたい、という話があったので、それに近いところからアレンジをしはじめました。この曲に関しては、生演奏ならではの良さが出たらいいなと思って演奏をしたので、今までのクリープハイプらしさを感じていただけて、とてもうれしいです。

●「一生に一度愛してるよ」では、ドラムは終始ビートに徹している印象ですが、アプローチはどのように考えていきましたか？

小泉　今回のアルバムでは一番最後にレコーディングしたのですが、わりとすぐ形になり、終始楽しい制作でした。自分が普段使っているクリックのテンポの最高速度が252だったので、じゃあそのテンポでいこう、という感じで曲のテンポが決まったり、リズム・パターンも、曲の持っている雰囲気に寄ったら、自然とこの形になっていた、という印象です。