根本に立ち返ると、ドラムがすごく好きだから、つい考えてしまう
聴いたことがないものはもちろん
さらにこうしてみようと思ったものも試したい

逆算しておくことで
新しい展開が生まれることも楽しめる

●近年のソロ活動を見ていると、アグレッシヴにロックする今作の音像に辿り着いたのは、必然だったように感じました。

金子　まさに地続きというか。ソロの「illusions feat. SKY-HI」で日高（光啓／SKY-HI、AAA）君とコラボしたときのことが、結構ヒントになったんです。アンビエントな空間の中で、そこに相対するラウドな表現をしていくんですけど、僕のソロではライヴをシーティング（着席スタイル）でやることが多かったのに対して、日高君のライヴに出たときにこの曲をやったらオール・スタンディングで、ロック・バンドのライヴみたいな盛り上がりになったんです。それまでソロではバンドみたいなことはできないと思っていたんですけど、それがきっかけで、憑きものが落ちたというか。“俺はこれまで何を凝り固まった考えをしていたんだろう。普通にロックをやれるじゃん！”と思えてきたんです。

●ドラム・サウンドは鋭いのに、太さも纏っていて、RIZE、AA＝ともまた違う感じで、カッコいいですね。

金子　今回は細井（智史）さんに録ってもらったんですけど、特徴が出ていますよね。レコーディングは2つのスタジオで、半分ずつやりました。1つはaLIVE（Recording Studio）なんですけど、あそこは父がよく使っていたこともあって、子どものときから出入りしていたんです。長く使われている部屋独自のものだと思うんですけど、音が良い意味で暗くて、RED ORCAみたいに、同期とかハイ・エンドもしっかりあるような楽器が揃ったバンドとは、相性が抜群に良いなとあらためて思いましたね。

●レコーディングで使った機材は？　スネアはRIZE同様、小口径だと予想したのですが、いかがでしょう？

金子　今回はriddimで作ってもらった12″のスネアです。グレッチみたいな雰囲気もありつつ、すごくフレッシュな音なんですよ。ちなみにRIZEの『THUNDERBOLT～帰ってきたサンダーボルト～』は10″でしたね（笑）。今回はその他にプロトタイプですけど、パールの12″も使いました。重量感があるんですけど、そのぶん音がすごくカッコいいんですよ。それはレコーディング向けだなと思いました。

●今作のドラム録りは、かなり早く終わったという話を小耳に挟んだのですが……。

金子　早かったですね。音出しが13時からで、夜までかかると見込んでいたマネージャーが16時半にスタジオに来たんですけど、そのときにはもう終わっていましたから（笑）。

●（笑）。曲を作っているからこそ、ドラムでやるべきことが見えているということでしょうか？

金子　そうですね。先に“逆算”してしっかり曲を作ってから録ると、楽だし、速いんですよ。先に決まっていることで、逆に予想もしなかった新しい展開が生まれたとしても、余裕があるから楽しむこともできるんです。

●逆算という言葉もそうですが、数学的にドラムをコントロールできるところも金子さんの強みですよね。

金子　なるほど。確かにライヴなら、その場その場で思いっきりやっちゃいますけど、音楽を作るときは、結構考えているかもしれませんね。めちゃめちゃ根本に立ち返れば、ドラムがすごく好きだから、つい考えてしまうというか（笑）。聴いたことがないものもそうだし、聴いたことはあるけど、さらにこうしてみようと思ったものを試したくなったりとか。今回は、僕が突っ込んで作曲に携わらせてもらいましたけど、メンバーのみんなも曲を作ってきてくれているので、これからどんどん枝葉を広げていけたら素敵だなと思います。

●過去のインタビューでは“底下げ”というワードをよく使っていましたが、RED ORCAではどんな意識で臨んでいるんですか？

金子　今作は僕がほとんどすべてを作っているので、底下げという意味では、ドラマーとしても寄りかかれる場所を、曲作りの段階で組み込んでいました。経験上、こう叩くとシンバルが曲がるからそのあとに直して、水を飲んで、モニターを直して……というふうに逆算して、じゃあここは8小節くらいシーケンスを入れて、ドラムのインターバルを作れるとうれしいな、とか。

●そんなところまで“逆算”する人はめずらしいと思います（笑）。ライヴも楽しみですが、ライヴ用のアレンジも考えているんですか？

金子　「Phantom Skate」の後半部分とかは、ライヴでは打ち込みの音も出しつつ、僕も演奏します。レコーディングでも生でやってみたんですけど、それだと少しトゥー・マッチだったんです。「Saturn」みたいにアンビエントの曲は、ライヴの尺も、コードや歌詞も変えたっていいし、来門がそのとき言いたいことを言ってもらおうくらいに考えてます。

◎Profile
かねこのぶあき：1997年RIZE結成、AA=のドラマーとしても活動。ソロ・プロジェクトやバンドでの精力的な活動の傍ら、俳優として映画やドラマ、CMなど数々の作品に出演している。

◎Information
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