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    【Interview】大喜多崇規[Nothing’s Carved In Stone]〜 EP「BRIGHTNESS」での原点回帰と挑戦〜

    • Interview Support:Isao Nishimoto Text:Rhythm & Drums Magazine Photo:Taichi Nishimaki

    “今の自分はどんなタイプのドラマーかな”と考えたとき
    熱量のあるロック・バンドのドラマーとして
    エネルギッシュなパフォーマンスに
    力を入れたいという部分で芯を持てた

    バンド結成15周年の節目を超えたNothing’s Carved In Stoneが、去る5月にEP「BRIGHTNESS」をリリース。今作は、アレンジャーを迎えるという新たな試みや、トリガーを全編で活用したハイブリッド・ドラミングへの回帰により、洗練されたバンド・サウンドに仕上がっている。そのボトムを担う大喜多崇規に、一新したドラム・セットやEPの制作エピソードを通して、近年の意識の変化について語ってもらった。

    昨年、結成15周年を迎えたNothing’s Carved In Stone(以下:NCIS)ですが、大喜多さんのキャリアの中でも、最も長く続いているバンドではないでしょうか。

    ○昔から何をするにしても、“とりあえず3年継続してみて、もし違う風景を見たくなったら別のステージに進もう”という意識でやっていたんですけど、まさか、こんなに長く続けられるとは思わなかったですね。NCISでの活動が10年以上ももっているということは、まだまだやりたいことがここにあるんだなと思います。

    メンバーが僕のドラムを受け止めてくれるのも大きいですし、音楽的にも“絶対これじゃなきゃダメ”っていう制限があまりなくて。あれもやってみよう、これも挑戦してみようという感覚で進んでこれたなと思います。

    最近は、整体師の方のアドバイスでフォームの矯正に取り組んできたそうですね。

    ○実は、始めたのはけっこう前なんです。アルバム4枚目の『Silver Sun』(2012)くらいのときに、鍼灸師さんや整体師さんと知り合う機会があって。肩甲骨まわりが硬くなっていたのと、猫背もあったので、何かの病気の原因にならないように長い時間をかけて姿勢を直しました。ドラムについても、スナップを使ってとにかく効率的に叩けることに重点を置いていたんですけど、ある程度良い形になったときに、自分のプレイがどこか機械的で、感情的な熱いパフォーマンスからは離れてしまったように思えてきたんです。

    “今の自分はどんなタイプのドラマーかな”と考えたときに、やっぱり熱量のあるロック・バンドのドラマーとして、エネルギッシュなパフォーマンスに力を入れたいという部分で芯を持てたというか。効率重視で叩くよりも、スティックをブンブン振り回しているのが遠くからでもわかるくらいの演奏の方が、きっとカッコいいだろうなという答えに辿り着きました。

    Nothing’s Carved In Stone(L→R)
    日向秀和(b)、生形真一(g)、村松 拓(vo)、大喜多崇規(d)
    New EP「BRIGHTNESS」
    ワーナー WPCL-13557

    ●なるほど。直近の活動では、2月に日本武道館で15周年記念ライヴをされました。感触はいかがでしたか?

    ○少しライヴから離れて、自分のスタイルを見つめ直す期間を経て、メンバーの出している音を“綺麗だな”と思ったり、純粋に感動する気持ちを思い出したんですね。そのあとの二度目の武道館ということで、ロック・ドラマーとしてのスタイルをあらためて大事にして、“熱量”と”良い演奏“の両方を心がけました。演出面にも関わらせてもらっているので、自分達でアイディアを出して、お客さんをもっと楽しませるような演出を練っている段階でも、武道館という大きな会場でやる醍醐味を再確認できました。

    ●武道館では、新しいドラム・セット=SAKAE OSAKA HERITAGEのEvolvedもお披露目されましたね。前にお使いだったのもEvolvedのプロトタイプでしたが、使い心地はいかがですか?

    ○自分で叩いた音量感が10だとしたら、以前のプロトタイプは、感覚的に8ぐらいまで出音が落ちる印象で。この新しいセットも性能は一緒なのかなと思っていたんですけど、いざ叩いてみたら、別物に思えるくらい音も進化していました。いつも、力いっぱい叩いてようやく欲しい音を鳴らしていたのに対して、新しいEvolvedは叩いた音量感に対して1:1で戻してくれるんです。力む必要がないだけでも、プレイのクオリティが上がりますよね。

    ▲大喜多のニュー・キット=SAKAE OSAKA HERITAGE Evolved。
    ドラム・セットの詳細はこちらの写真をクリック!

    サウンドの印象はどうですか?

    ◯Evolvedは、SAKAE OSAKA HERITAGEのラインナップの中でも強烈な音だと思います。中域や低域にパンチが出るような感じのニュアンスだけど、すごく真っ当な音というか。ドーピングされていない素直な音っていう感じなんですけど、より切れ味が鋭くなって、アタックというか、太い輪郭がある印象です。エレクトロ・ミュージックが出す低音ってけっこう強力だと思うんですけど、同期が走っている中でもドラムの生音の方が強く鳴ることはマストだと思っていて。このキットは、そういうところも優秀ですね。レコーディングに持っていくと、エンジニアも「全然違う!」って言ってくれますし、本当に叩きやすいです。

    以前はツーバス・セッティングでしたが、20”バス・ドラムを外して、ワンバスにしたのはどういうきっかけだったんですか?

    ○スタイルを見つめ直したことが、ドラム・セットにも表れたのかなと思うんです。以前は、生ドラムとは別に、トリガーをセットしたサブのバスドラやスネアを用意していて、例えばAメロではトリガーを踏んで、サビで生音に戻ってくるっていうふうに使い分けていたんです。

    それを見つめ直すきっかけになったのは、コロナ禍明けの対バン・ツアーで共演したNOISEMAKERのUTAや、coldrainのKatsuma、ZAX[The BONEZ、Pay money To my Pain]のセッティングで。みんな、トリガーをメインの楽器にセットして、生音とトリガーの音をブレンドしながら鳴らしていたんです。そこに影響を受けて、あらためて自分の使い方やスタイルと照らし合わせたときに、トリガーのためだけのバスドラは、もういらないなと思ったんです。それで新しいEvolvedは、バスドラ1台にトリガーをつけて凝縮させるようなセッティングに組み直したという感じです。

    ●なるほど。スネアも新しくなって、SAKAE OSAKA HERITAGEのPhosphor Bronzeをお使いなんですね。

    ○僕はブラス・スネアが好きでずっと使っていたんですけど、もう、これ以上進化できないなっていうぐらい長く愛用していたこともあって、新しいスネアを導入しました。Phospherは、たまたまスタジオで借りたときに、すごく良いスネアだな。また使いたい”と思っていたんです。深さは6.5″で、“バーン!”と強烈な鳴りで音を埋めてくれるんですけど、ブラスみたいに叩くポジションによって音色が変わることはない材質なので、叩き慣れるまでに少し時間がかかりました。でも安定した音が出るのは魅力ですとね。ウブ(生形真一/g)とかは特に音のデカいドラマーが好きなので、僕がこのスネアを使うようになって喜んでます(笑)。

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