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Interview – ネイト・スミス

  • Interview & Text:Rhythm & Drums Magazine Interpretation & Translation:Akira Sakamoto Photo:Laura Hanifin

肝心なのはダイナミクス
16分やゴースト・ノートの
間合いが大事になってくる

●ホセ・ジェイムズがビル・ウィザーズをカヴァーしたアルバムでは、正統派のグルーヴに人力ディレイなどの現代的な要素を織り交ぜていましたね。

Nate あの音楽はすでにツアーで2、3年くらい毎晩演奏していたから、曲は身体に入っていたんだ。最高だったのはピノ・パラディーノ(b)と共演できたことだった。彼は人間としてもミュージシャンとしても素晴らしくて、音楽のあらゆる部分を把握していたから、僕はとてもリラックスして演奏できた。ただ彼についていけば良かったんだ。

●ザ・フィアレス・フライヤーズの「Ace of Ace」では、キックとハット、スネアだけを使っていますが、ああいった最小のパーツだけで良いグルーヴを出すには、何が大切になってきますか。

Nate 肝腎なのはダイナミクスだと思う。スネアはRoots EQでミュートしているし、キックには枕を詰めていたから、最終的には叩く強さでバリエーションを出していくしかなくて、16分音符やゴースト・ノートの間合いが大事になってくるわけ。ああいう状況こそ、限られたパーツで自分のサウンドを追求する格好の機会になるね。

●一方の「Nate Smith is the Ace of Ace」では、タムをいくつも並べてボトム・ヘッドを外したセットを叩いていますね。

Nate あのときには、どんなキットが用意されているのか知らなくて、キットを見てすぐにフィル・コリンズやチェスター・トンプソン、サイモン・フィリップスといった、タムをたくさん並べるスタイルで、大好きなドラマーのことを思い出さなきゃならなかった。ああいう大がかりなキットを叩くのは、10代の頃以来だったからね。

さまざまなセッション・ワークに参加するネイトだが、The Fearless Flyerではいつもと一味違ったアグレッシヴでファンキーなプレイを聴かせる。

●プログラミングではなく、生身の人間だけが生み出せるビートの魅力は何だと思いますか?

Nate 人間は呼吸もするし、心臓も鼓動していて、僕ら人間が創り出す音楽には、その要素が組み込まれている。それは完璧ではないけれど、だからこそ美しいと思う。タイムも揺れるから、1小節目と2小節目とでは微妙に違う。ドラマーの演奏は特にそうじゃないかな。

●今注目している若いドラマーはいますか?

Nate たくさんいるよ。ブッチャー・ブラウンのコーリー・フォンヴィル(Corey Fonville)にサヴァンナ・ハリス(Savannah Harris)、それに、マーカス・ギルモアは僕とそれほど歳は違わないけれど、神童と呼ばれていた。ニューヨークには素晴らしいドラマーがうじゃうじゃいるよ(笑)。

●最後に良いドラマーであるための条件とは、どんなものだと思いますか?

Nate 周りの音をよく聴くことだと思う。耳はとても大切な道具だし、記憶力も大切で、ドラマーが自分の演奏をよく聴いてくれていると思えばメンバーは安心できる。ヴォーカリストは特にそうだ。ドラマーの条件としてはあまり顧みられないことかもしれないけれど、実はものすごく重要だと思う。

リズム&ドラム・マガジン20年7月号

リズム&ドラム・マガジン20年7月号では、ネイトによる新作ソロEP「Light and Shadow」を軸に、ドラマー/作曲者/プロデューサーとして多彩に活動する彼を深掘りしていく。さらに、新作のプレイ分析から、ブリタニー・ハワードのツアーで使用した彼のキット、編集部がセレクトしたおすすめディスコグラフィーまで、今注目の“魅惑のビート・メイカー”の情報を盛りだくさんでお届けしていきます! 詳しくは本誌をチェック!

◎Profile
ネイト・スミス:ヴァージニア州生まれ。ジェイムズ・マディソン大学/バージニア・コモンウェルス大学での研究に招かれ、デイヴ・ホランドのバンドで演奏し、クリス・ポッターのグループも加入。その後もホセ・ジェイムズ、ポール・サイモン、ブリタニー・ハワードなど多数のアーティストのセッション/ツアーに参加し、ドラマーとしてのみならず、プロデューサー/作曲家/シンガーなど多岐に渡って活躍。近年ではVulfpeckのサイド・プロジェクト=The Fearless Flyersの他、ソロとしての活動にも熱心で、今年4月にはEP「Light and Shadow」をリリース。

◎Information
Nate Smith HP Twitter