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    吉澤 響[セカイイチ]20周年の“最高傑作”に込めた想いと活動休止のその先 【Interview】

    • 取材&文:編集部 撮影:ハヤシマコ(Live)

    「Where we are」があるから
    またセカイイチを
    再開させることもできる

    ●2016年のアルバム『Round Table』を境に、バンドはソウルやファンク色が強くなりましたが、そういった楽曲を叩く上でノリを出すために意識していることはありますか?
    吉澤
     これはどれだけ隙間を作るか、というところに尽きます。叩きすぎない、というか。自分が叩いていないところ、例えば16分音符を感じさせる楽曲でもハイハットは8分音符を叩く、でもその8分音符は16分音符の1つ目と3つ目で、そのウラに隠れている16分音符の2つ目と4つ目は休符(=隙間)として他のパートに譲る気持ちで叩いています。楽曲全体のフレージングとしても引き算するところがなくなったら完成だなと感じています。

    ●それまではギター・ロック色が強く、ある種ジャンルを横断していたセカイイチですが、その音楽性が、『Round Table』以降に大きく影響しているなと感じる部分や、逆に昔の曲への考え方やアレンジが変わった部分はありますか?
    吉澤
     今の楽曲でも、楽曲によっては1曲の中での起伏の付け方はロック的だなと思う部分があります。そう思う時点でロックから距離を置いた楽曲の見方をしていると思うのですが、昔の楽曲を演奏するときは、極端に言って“昔のまま”で、違和感なく演奏しています。やはりそういったプレイやフレージングがその楽曲を“その楽曲”にしているのだなと感じます。

    ●M3「You make me feel brand new」は、優しめというか、全体的に淡々と進む印象の曲調に対してバック・ビートの力強さが印象的でした。
    吉澤
     淡々したビートと安定感/力強さを両立させることはとても意識しました。それが伝わったようでうれしいです(笑)。演奏面で気をつけたのは、叩くか叩かないかの0か100かで起伏をつけようと考えたのと、最後の最後でハイハットの数が増え、ライドを刻んでのビートに移行することで、楽曲の新たな山を作った感じです。音色は安定感や力強さを演出するためにピッチを低めにチューニングしましたね。

    ●M4「Blur」はシティ・ポップやAORのようなエッセンスもありながら、昔のセカイイチのバラードのような懐かしさも感じられました。
    吉澤
     この楽曲も、岩崎のデモをスタジオで詰めた感じです。デモが送られてきた時点で楽曲の雰囲気は出来上がっていて、「これ、めちゃくちゃいいね!」と返信したのを覚えています。

    ●16分のハイハットの刻みや8分のライドの刻みでメリハリをつけているように感じましたし、だからこそラスサビ最後の1回しでのフィルがドラマチックですよね。
    吉澤
     これもおっしゃる通りで、サビ以外はタイトに進めて、サビで一気に広げようという緩急を意識しました。最後のサビではメロディに対してコードの当て方が変わるので、そこでドラムも変化しています。ドラムの役割として、周りの変化にさらに色をつけることも大事だと考えていて、どの楽曲でもそういう部分があると、何かできないかと試すことにしています。

    ●M5「Where we are」はハイハットの3連を組み込んだビートが斬新ですよね。
    吉澤
     この楽曲もデモの時点で方向性がすでに定まっていました。ハイハットの3連符もすでに組み込まれていて、デモのときはもう少し回数が多かったですね。それを2小節でひとまとまりのリズム・リフに落とし込んだ感じです。

    こういうジャンルの楽曲がデモで送られてくると極力フィルを入れず、リズム・パターンを変えない、というところからスタートします。ループ感やサンプリング感を演出した方が、楽曲がよりよく聴こえると思うのと、余計なフィルが楽曲の世界観を壊すような気がするからです。

    ●今回のアルバムの中では活動休止に対する一番ストレートなメッセージなのかなと思ってしまうような、感慨深い楽曲でした。
    吉澤
     この楽曲はセカイイチとしてやりたかったことの1つを確実にアウトプットできたなと思っています。サウンドと歌の溶け合い方、そして歌が歌として届いて歌詞が入ってくる。そして歌詞の内容。この楽曲がセカイイチの楽曲として世に出ることがうれしいし、これがリリースされたから、またセカイイチを再開させることもできるんだろうなと思っています。

    ドラマーとしての自分を核に
    いろんな方向に一歩踏み出したい
    そうやって音楽を続けながら
    またみんなとも音を出せたら

    ●駆け足でお伺いしてきましたが、全曲通して、改めて今回のアルバムのポイント的な部分はどういったところでしょうか?
    吉澤
     アルバムを通してのドラミングのポイントは、
    ・余分なフィルやリズムのクセなどをできるだけ削ぎ落としたこと
    ・そうすることによって逆に見えてくる人間味を効果的に曲に役立てたこと
    です。

    アルバムの魅力は、サウンドと歌が今まで以上にしっかりと両立していることです。この手のジャンルで歌や歌詞がサウンドに溶けすぎないのは大きな魅力だと思っています。

    ●セカイイチとしては活動休止となりますが、吉澤さんの中でこれから挑戦したいことや、新しくやろうと思っていること、またこれからも続けていきたいことがあれば教えてください。
    吉澤
     音楽でも、音楽以外でも挑戦したいことや新しくやろうと思っていることは、たくさんあります。やはりバンドを続けていると、時間的にも気持ち的にもできないこともたくさんあったので……。ただ僕は何をしていてもドラマーだし、今もいろいろなところで叩かせてもらっているので、ドラマーとしての自分を核にして、軸足をそこに置きながらいろんな方向に一歩踏み出してみたいなと思っています。そうやって音楽を続けながら、またメンバーのみんなとも音を出すことができたらいいなと思っています。

    ●ありがとうございます! 最後に、5月の休止前ラスト・ライヴに向けて読者にメッセージをお願いします!
    吉澤
     5月でバンドは一旦お休みするので、新譜の楽曲を演奏する機会が当面このツアーしかないです(笑)。それもあってぜひ足を運んでほしいなと思いますし、そういう事情を抜きにしても、見に来てくれたみなさんはもちろん、自分自身の記憶に残るようなライヴになるよう頑張ります! 楽しみにしていてください!

    撮影:オオタシンイチロウ

    ◎Live Information

    セカイイチ『Where we are』リリース・パーティー
    5月3日(水・祝) 愛知・名古屋UPSET
    5月5日(金・祝) 大阪・umeda TRAD
    5月13日(土) 東京・新代田FEVER

    セカイイチの20周年大感謝祭
    5月14日(日) 東京・新代田FEVER

    チケット情報など、詳細はこちら(セカイイチ オフィシャル・サイト)から