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Interview – 戒[the GazettE]
- Interview & Text:Rhythm & Drums Magazine Photo:Keiko Tanabe
もらったアイディアに対して
柔軟な姿勢で取り組んでいく方が
結果的に自分自身が得られるものは大きい
メンバーをつなぐ接着剤みたいな役割も意識しています
00年代中期に“ネオ・ヴィジュアル系”の代表格として名を上げて以来、バンド結成19周年を迎えた現在に至るまで、ブレのない音楽性と精力的なライヴ活動で国内外から幅広い支持を集めているバンド=the GazettE。そのキャリアと共に、V-ROCKシーンにおいても貫禄のうかがえる存在となった彼らが、3年ぶりとなるニュー・アルバム『MASS』をリリースした。ここでは、タイトかつダイナミクス豊かなドラミングでバンドを鼓舞する戒にインタビューを実施。新作でのプレイや、緻密に構成されたヘヴィなバンド・サウンドを支えるドラマーとしての意識に迫った。
ショットの1打1打に
集中して向き合える環境になった
●3年ぶりのアルバム・リリースとなった新作『MASS』は、ライヴを想像させるアグレッシヴな展開の楽曲が揃っていて、軸がブレることなく進化し続けるthe GazettEというバンドの貫禄を感じました。今作の収録曲は、いつ頃から作り始めたのですか?
戒 2019年の9月に横浜アリーナで前作のツアー・ファイナルを終えて、その年末にメンバー内で1回目の選曲会をしたのがスタートですね。基本的に、アルバムにはthe GazettEのライヴの流れに見合うような曲を選んでいくんですけど、過去の曲を含めたセットリストを組んで「この曲の次に、こういう新曲をフックとして入れたいね」と話し合いながら決めていく作業もありました。
●では、最初の段階から具体的なイメージを重ねていったんですね。戒さんのドラミングもますますタイトで洗練されているように感じたのですが、今作のレコーディングはどのように進めたのですか?
戒 前作からなんですけど、一発録りではなくバラ録りでレコーディングするようになって。キック、スネアとタム、アクセントのクラッシュ、刻みのクラッシュ、ハイハット、ライドなどを個別に録って進められるので、ショットの1打1打にかなり集中して向き合える環境になったんです。打ち込みでは出せないような生感も出せますし、音の作り方についても幅がすごく広がったというか。あと、一発録りのときは、音の被りが多いとEQとかでもなかなか調整できないところもあったので、そういう意味で、今のthe GazettEのサウンドにはこのやり方がすごく合っていると思います。
●なるほど。収録曲について、シングルとして先行配信されたM2「BLINDING HOPE」の楽曲作りは、どのように進めていきましたか?
戒 「BLINDING HOPE」は、アルバムの“MASS”というタイトル案と同時にRUKI(vo)から上がってきたもので、「今のthe GazettEを表現するにあたって、今作のメインとしても良いんじゃないか」と満場一致で決まった曲です。the GazettEでは、1つのアルバムで軸となるバンド・サウンドが決まったら、どの曲もそこからあまりブレないようにして制作を進めていくんですよ。今回は、最初に仕上げることになったこの曲を、あとから収録する曲の音作りのリファレンスになる存在にしたかったので、サウンドはかなり時間をかけて作り込んだんです。ミックスにも2〜3日くらいかけましたね。
●ドラムもまたバンドの一貫したスタイルを感じるヘヴィなサウンドで、金モノよりも、タイコ類のボトム寄りの音の存在感が強く演出されていますね。今作の機材は、どんなものを使われたんですか?
戒 キットは、メインで使っているYamahaのLive Customですね。スネアはけっこう種類を用意したんですけど、最終的にソナーのベル・ブロンズとTAMAのベル・ブラスの2台を使いました。the GazettEではチューニングを下げ気味にして音を作っていくことが多いんですけど、ロー・ピッチにする中でミュートを増やしていくと、思ったような太さの音が出てこなかったりするんですよ。この2台はそういうところにも対応できるので、今作では一番使いやすかったですね。
●M5「HOLD」はドラム始まりのイントロからアグレッシヴな展開を見せていく曲ですが、疾走感があるだけでなく、緩急のついたドラミングも印象深いです。
戒 バンド全体ですごく緻密なことをやっているので、こういう曲はけっこう神経を使うんですよ。合わせるところがキマることで初めて疾走感が生まれるようなフレーズだったりするので、テンションでさらっと持っていきたくなるセクションでも、自分にストップをかけてメリハリをつけないと、曲として物足りなくなってしまうんですよね。そういう意味で、この曲と「FRENZY」に関してはかなり気を遣ってプレイしました。