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    【Interview】ギャヴィン・ハリソン[ポーキュパイン・ツリー]

    • Interview & Translation:Akira Sakamoto/Interview:Rhythm & Drums Magazine
    • Photo:Derrick Bremner
    ポーキュパイン・ツリー(L→R):リチャード・バルビエリ(key)、スティーヴン ・ウィルソン(vo、g、key)、ギャヴィン・ハリソン/Photo:ALEX LAKE

    ロックのドラムを録音するには
    それ相応の部屋が必要なんだ

    ●冒頭の「Harridan」は5拍子のベース・リフから始まりますが、この5拍子は最後の1拍を工夫することで推進力が生み出されているように感じました。これはあなたの狙いでもあったのでしょうか?
    ギャヴィン あの5拍子のアイディアはジャム・セッションのときじゃなく、ドラム・クリニックをしに南アフリカへ行った帰りの飛行機の中でひらめいて、搭乗券に書き留めておいたものなんだ(笑)。ファンキーでありながら、実は5拍子という。で、その2週間後にスティーヴンが僕のスタジオに来たとき、「5/4拍子のアイディアがあるんだけれど、ベース・ラインは音数の多いイメージなんだ」と言って、スティーヴンがベースを手に取り、僕がドラムで演奏を始めたら、彼は30秒ぐらいであのベース・ラインを考えてくれた。コーラスの部分や中盤の激しくなるセクションまで、曲のすべてを1日ぐらいで書き上げたんじゃないかな。

    ●「Herd Culling」も、11拍子でありながら違和感のないリズムですね。
    ギャヴィン 変拍子でもリズムにうまく合うリフがあれば、変拍子に慣れていない人達にも違和感なく聴いてもらえるんだ。「Herd Culling」は全体的には11拍子だけれど、部分的に4/4や6/8に聴こえるようなリズムにしたり、終盤ではストレートなロック・ビートを叩いたりして、最後にまた明確な11拍子を叩いているよ。

    ●「Of The New Day」や「Dignity」では、1曲の中でダイナミクスの表現が劇的に変化しますよね。こうした場合、ダイナミクスはピークの部分を基準に引き算的に考えるのでしょうか、それとも足し算的に考えていますか?
    ギャヴィン ダイナミクスの強さは、音楽や歌詞の展開に従っている。「Herd Culling」もそうだけれど、激しく盛り上がる部分では爆発的なパワーを表現する必要があるし、ドラムのサウンドも各パートのサウンドも変わってくる。リズム・パートも曲そのもののダイナミクスや表現の強さに添うようにデザインしているんだ。

    ●本番の録音に取りかかる前に、3人で最終確認はしましたか?
    ギャヴィン 残念ながら、そういう機会はなかったね。僕らはデモを基本に作業していて、デモのミックスもダイナミクスもリズムも本番の作品と同じ感覚で作業していた。だからリチャードも、曲のどの部分でどのぐらい音を重ねてサウンドスケープを作り上げれば良いのかを、デモで確認することができたんだ。とはいえ、3人がライヴで演奏すれば、何か魔法のようなことが起こるから、ツアーが終わる頃にライヴ・アルバムを作れば、スタジオ盤とは少し違った展開になるだろうというのは経験的にわかっているけれどね。

    ●デモはかなり精密に作ったんですね。
    ギャヴィン ああ。ドラムのパートはアルバム全体で統一感を出したかったし、自分のパートを練習すればデモよりも良い演奏ができると思ったから、2020年に全部録音し直したけれど、例えば「Harridan」のベース・ラインなんかは、スティーヴンが2013年頃に録音したものをそのまま使っている。スティーヴンはその他のパートも全部は録り直していないんじゃないかな。

    ●ドラム・サウンド自体がとても明瞭で歯切れも良いということも、ドラムが果たす役割をより重要なものにしているように思います。
    ギャヴィン 僕のスタジオでドラムを置いてある部屋の音響はデッドで、コントロール・ルームにもなっているけれど、隣にとても大きなホールのような響きの部屋がある。だから、両方の部屋の間にある大きなドアを開けて、響きの多い隣の部屋をアンビエント・ホールとして利用できる。ドラムを録音するときにも、そのアンビエント・ホールにマイクを2本立てて、“本物の”リバーブ音を拾っているから、デジタル・リバーブとは違う、とてもオーガニックなサウンドになる。デジタルのリバーブはいつも同じかかり方をするけれど、ルームのリバーブはランダムで、それがオーガニックで美しい響きを生み出しているんだ。

    ●60年代や70年代のロック・ドラムはもともと、そういうふうにルームの響きも一緒に拾うのがむしろ標準的でしたよね。
    ギャヴィン そう、ロックのドラムを録音するには、それ相応の部屋が必要なんだ。デジタルでそれを再現することもできるけれど、それはどこまでいっても“作り物”だからね。

    ●「Rats Return」では、核となるリフがとても印象的ですが、あなたのドラムがそれを強調して、よりオーケストラ的な効果を生んでいると思います。この曲のアプローチはどのように考えたのでしょうか?
    ギャヴィン あれは僕が考えた4小節のリズム・パターンが基になっている。リズム・パターンと言えば普通は1小節単位か、せいぜい2小節単位だと思うけれど、4小節単位でどの小節もパターンが違うリズムというのはあまりない。聴く人は、これがランダムなパターンじゃなくて4小節単位になっていることに気づくまでに、少し時間がかかるかもしれないな。しかもこの曲では、最後の細かいパートを除く全曲に渡ってこのパターンが繰り返されるというのもコンセプトになっている。モンティ・パイソンの監督でもあるテリー・ギリアムの『ブラジル』(1985年)という映画があって、すべての劇伴が「ブラジル」という同じ曲のバリエーションになっている。スティーヴンにこの曲のアイディアを伝えるときにも、「映画の『ブラジル』みたいな感じで!」と説明したよ(笑)。

    ●面白いアイディアですね。「Walk The Plank」はアンビエントっぽい雰囲気の曲で、バンドとして新たな音像を示した印象ですが、ドラムのアプローチを考える上で、何か違ったコンセプトを取り入れたりはしましたか?
    ギャヴィン これはリチャードが作ってきたデモが基になっていて、アルバムに収録した演奏もデモにかなり近いものになっている。スティーヴンはそのデモに歌詞とメロディをつけて、ギターは使わず、彼もキーボードのパートをいくつか加えたんだ。僕は部分的に生のドラムを加えたけれど、全体としてはエレクトロニカ風のサウンドになっているね。

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    変拍子を演奏するコツは、2と3の組み合わせで把握すること