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Interview−ギャヴィン・ハリソン[ポーキュパイン・ツリー]

  • Interview & Translation:Akira Sakamoto/Interview:Rhythm & Drums Magazine
  • Photo:Derrick Bremner

たとえこのアルバムが最後になったとしても
僕らは良い終わりを迎えたと言える

英国のプログレ・ロック・シーンを代表するバンド、ポーキュパイン・ツリー。メンバーそれぞれが多忙を極めており、長らく作品をリリースしていなかった彼らが、トリオ編成で再始動し、13年ぶりとなるアルバム『クロージャー/コンティニュエイション』を発表した。この絶好のタイミングで、キング・クリムゾンのドラマーであり、難解なポリリズムを自在に操る超人=ギャヴィン・ハリソンの独占取材に成功した!

スティーヴンがベースを弾き僕がドラムを叩いて
インプロヴァイズしたのが事の発端だった

●今回はポーキュパイン・ツリーでの取材となりますが、その前に昨年のキング・クリムゾン(以下クリムゾン)の来日ツアーについて、感想をお聞きしたいと思います。
ギャヴィン 日本にはとてもたくさんのファンがいるから、行くことができて素晴らしい気分だった。日本はクリムゾンが世界中で一番の成功を収めた国なんじゃないかな。バンドも素晴らしくて、どのジャンルにも属さず、他のどんなバンドとも違う、まさにクリムゾンならではの音楽をやっていると自負している。信じられないような音楽体験ができるからね。

●数十年前のレパートリーを演奏しながら、これまでとは違う、新しいサウンドを生み出しているのもすごいですね。
ギャヴィン ロバート(フリップ)は、書かれた時期に関わらず、どの曲も新曲のように扱っているからね。僕がクリムゾンに入ったときにも、ロバートからドラマー3人のためにアレンジしてくれと言われたから、どの曲もまさに新曲として、新しいアプローチで演奏するように心がけたんだ。もともとドラマーが1人だけで演奏していた曲を、3人のドラマーで音楽的にうまく扱う方法を探るのは大変だけれどね。ドラマー3人のための最初のアレンジは、自宅のスタジオで3人のパートを自分で録音して、いろいろ試しながら練り上げた。その録音をビル・リーフリンとパット・マステロットに送って、その後みんなで集まってアレンジを調整したんだ。

『クロージャー/コンティニュエイション』
ソニー SICP-31546 HP

●今回発表になったポーキュパイン・ツリーの『クロージャー/コンティニュエイション』は、そのクリムゾンにおける活動や、あなたのもう1つのプロジェクトであるパイナップル・シーフでの活動と並行して、この10年ほどの間に少しずつ録音していたそうですね。
ギャヴィン 2012年頃、スティーヴン(ウィルソン/vo、g、key)が僕のスタジオに来て、「なぁ、これまでにやったのとは違う方法を試してみないかい? 一緒にジャム・セッションをするんだ」と言って、彼が僕のスタジオにあったベースを弾いて、僕がドラムを叩いてインプロヴァイズしたのが、事の発端だった。ティーンエイジャーが親の家のガレージでやるみたいにね(笑)。それがとても楽しくて、いろいろと面白いアイディアが生まれたんだ。スティーヴンはベース・プレイヤーじゃないから、シンプルなグルーヴを弾くんじゃなく、ベースをギターのように扱ってコードも弾いて、コード進行を考えてくれたから、その時点でいくつか曲ができた。そして、これは何か次のプロジェクトにつながりそうだと思ったんだ。新しいバンドとか、スティーヴンと僕の双頭プロジェクトとかね。

●なるほど。
ギャヴィン でも僕は、「いや、スティーヴンと僕が一緒にやれば、ポーキュパイン・ツリーの音楽に他ならない」と思い直して、リチャード(バルビエリ/key)を呼んでポーキュパイン・ツリーのプロジェクトとして制作に取りかかった。メンバーはそれぞれの活動があったから、数ヵ月か半年、あるいは1年ごとに数日間だけ集まって、少しずつ作業を進めたんだ。2019年には十分なだけの素材が集まったし、コロナ禍で時間もできたから、アルバムを完成させることにしたんだ。前作『ジ・インシデント』(2009年)まで、曲のほとんどはスティーヴンが作っていた。共作のものもいくつかあったけれどね。でも、この『クロージャー~』はすべての曲が共作によるものなんだ。

●リチャードがジャム・セッションに加わることもあったんでしょうか?
ギャヴィン リチャードはサウンド・デザイナーで、いろいろな音を重ね合わせていくのが彼の作業のやり方だから、ジャム・セッションには向いていない。彼もアルバムの2、3曲をスティーヴンと一緒に作ったけれど、他はスティーヴンと僕とで作った。1曲だけ3人で一緒に作ったけれど、同じ部屋で作業したわけじゃないんだ。

●2020年にはあなたのソロ・アルバム『Chemical Reactions』、昨年はパイナップル・シーフの新作『Nothing But The Truth』も発表されましたが、さまざまな活動をされている中でも、ポーキュパイン・ツリーはあなたにとってホームと呼べる位置づけなんでしょうか?
ギャヴィン どうだろう……今後ポーキュパイン・ツリーがどのぐらい活動を続けるかは、正直わからない。新作のタイトルでもある『クロージャ―(撤退)/コンティニュエイション(継続)』は、「今回が最後になるのか、もう1枚アルバムを作ってツアーをするのか?」という自問にもなっているんだ。ただ、僕らはプレッシャーのない状態で作業をするのが好きだし、今もアルバムをもう1枚作ったり、もう一度ツアーをしたりしなきゃならないというプレッシャーがない状態にある。新作の作業を2012年に始めたときにも、誰もそのことを知らなくて、レコード会社やマネージメントやプロモーターから締め切りを迫られるようなプレッシャーもなかった。僕はこのバンドに参加してから、プレッシャーをかけられながらアルバムの曲を作り、プロモーションをやり、録音し、ツアーするというのを、8年の間に4回繰り返して、いい加減うんざりしていたし、アルバムを作るのもツアーをするのも今回が最後になるかもしれない。でも、またやるかもしれない。新作のタイトルは、そういった僕らの今の心境を表しているわけ。ただ、たとえこのアルバムが最後になったとしても、僕らは良い終わりを迎えたと言えると思う。『ジ・インシデント』よりも優れた、最高の作品で締め括ることができたと思えるだろうからね。

●そんな新作ですが、イギリスのアルバム・チャートでも1位を記録しているそうですね。その意味でも最高の作品だと言えるんじゃないでしょうか。
ギャヴィン 僕らもビックリしているよ。若い男の子のバンドというわけでもないし(笑)、3分間のポップ・ソングをやっているわけでもない。コマーシャルなものとはまったく違う、変拍子のややこしい音楽で、演奏時間も9分ぐらいあってラジオ番組にはまったく向いていないのにね。

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ダイナミクスもリズムも本番と同じ感覚でデモの作業をした