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Archive Interview- ヴィニー ・カリウタ〜世界最高峰のオールラウンダーが語るドラミングの極意!〜

  • Interview & Text:Rhythm & Drums Magazine
  • Interpretation & Translation:Akira Sakamoto
  • Photo;Wire Images/Getty Images

サウンドの変化は僕のコンセプトによる叩き方の違いで
それはチューニングやドラムの違いよりも大きい

●アルバムで使用した機材は、ドラムはグレッチ、シンバルはパイステなんでしょうか? 楽曲ごとにトーンやアンビエントが微妙に違うような気もしますが、楽器やチューニングを変えたりもしたのでしょうか?

ヴィニー  君の言う違いは、ほとんどは叩き方の違いだよ。楽器は同じものを使っていて、シンバルとドラムの組み合わせも変えていない。スネアは変えたかもしれないけれどね。スネア1台、ライド1枚変えるだけで、セット全体のサウンドが変わることもある。でも、サウンドの変化のほとんどは僕のコンセプトによる叩き方の違いで、それはチューニングやドラムの違いよりも大きいんだ。

楽器に関しては、グレッチとパイステの組み合わせが気に入っているのは間違いない。これなら何でも叩けると思えるからね。グレッチが生み出すトーンには独特なものがあるし、パイステのシンバルが良いのは、自分がシンバルをコントロールしているという感覚が得られるからなんだ。シンバルが僕をコントロールするんじゃなくてね。アンサンブルを埋め尽くすようなサウンドになることもないし、品質も安定していて個体差が少ない。いろいろなラインのモデルを組み合わせて使うこともできる。それぞれのモデルは特定の目的で作られていて、その違いが明確にわかりやすいのも良いね。

僕がパイステのフォーミュラ602モダン・エッセンシャルズをデザインしたときには、幅広い用途に対応できるようなものを目指していて、それを実現させることはできたけれど、それ以外にもジャイアント・ビートやトラディショナルといった別のシリーズのシンバルも大好きなんだ。オープンなサウンドが欲しかったりジャズっぽいものをやったりするときには、トラディショナルがうってつけだしね。そんなわけで、選択肢は豊富にある。レコーディングでも良いサウンドだし、何よりパイステとグレッチの相性は最高なんだ。

単独インタビューが実現した2018年2月号の誌面がこちら!

●ドラマーにとって、スタジオやライヴ会場など、さまざまな音響特性の空間に対応するのは大きな課題だと思いますが、あなたはそういった状況の中でどう自分のサウンドを維持していますか?

ヴィニー  アリーナなどの大きな会場で演奏するときには、大きな音で叩かなきゃならないと考えている人も多いみたいだけれど、必ずしもそうじゃない。音はマイクで拾うものだし、今はその性能も良いからね。一方、ジャズ・クラブのように狭い空間でモニターなしで演奏するときには、自分の音量が正確にコントロールできるから、特に問題はない。

劇場クラスの空間や小さなホールで演奏する場合は、ごく小規模なモニター・システムがあればいい。モニターの音量を大きくする必要はないし、その方が観客との呼吸も取りやすいからね。でも、ある程度のサイズの会場の場合は、質の良いモニター・システムの重要性は強調してもし過ぎることはない。モニターで自分の音がよく聴こえないと、より大きな音で叩きがちになるからね。基本的にはやはり、その部屋に応じた演奏をするのが肝腎なんだ。

アリーナや、音響設計がしっかりしていないようなホールで演奏するときには、あまり大きな音を出すと残響が多くなりすぎたり、音が回ったりしてしまう。そういう場所で音数の多い演奏をすると、音符が重なり合って、何をやっているかわからなくなってしまう。だから大きな会場で演奏するときには、誰かに僕のドラムを叩いてもらって、僕は会場内を歩き回っていろんな場所で音を聴いてみるんだ。そうする中でドラムから遠く離れれば離れるほど、ピッチが低く聴こえることに気づいたんだ。そういうときには、自分では少し高いかなと思うぐらいのピッチにチューニングするといい。こんな具合いに、あらゆる要素を考慮して対処しているよ。