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ジョン“JR”ロビンソンが語るクインシー・ジョーンズとマイケル・ジャクソン【Archive Interview】
- Translation & Interpretation:Yuko Yamaoka
- Interview:Yuichi Yamamoto/Rhythm & Drums Magazine
クインシーが僕に尋ねてきたんだ
「マイケルの新譜でプレイしないか」って
僕は「もちろんやりたい!」と即答した
それが『オフ・ザ・ウォール』の録音だったんだ
本日はアメリカを代表するセッション・ドラマー、ジョン“JR”ロビンソンの67回目の誕生日。音楽史に残るマイケル・ジャクソンの傑作『オフ・ザ・ウォール』、『BAD』を筆頭に数々の作品にグルーヴを刻んできた“ヒット曲請負人”。ここでは2013年にクインシー・ジョーンズと共に来日したタイミングで実現した対面インタビューの一部を公開! 名曲を彩ってきたJR流グルーヴの秘訣を語る!!
●今回はクインシー・ジョーンズとの来日になりますが、1981年にもクインシーのオーケストラで来日されていますね。そのときのことは覚えていますか?
ジョン (日本語で)ハイ(笑)! もちろん鮮明に覚えているよ。僕にとって初来日だったし、自分の夢が叶ったような経験だったからね。
●あの公演の模様は当時テレビでも放映されて、“ジョン・ロビンソン”というドラマーが、日本の音楽ファンにとって身近な存在になったきっかけだったと思います。
ジョン 僕の中にも美しく素晴らしい経験として記憶に残っているし、当時の映像は、今見ても本当に熱い! 燃えて煙が出ているようなパフォーマンスで、バンドは火を噴いていたよ!
●あなたとパーカッショニストのオリー・ブラウンとのコンビもカッコ良かったですね!
ジョン ありがとう! 今回のリハーサルは明日から始まるんだけど、あのときと同じように良い演奏ができたらと思っているよ。
●あらためて……あなたにとってクインシー・ジョーンズはどんな存在ですか?
ジョン 僕にとっては父親みたいな存在だね。初めてクインシーに出会ったのは1978年のことで、ある音楽イベントのとき、彼と隣同士になったんだ。その翌年にルーファス&チャカ・カーンの『マスタージャム』を彼がプロデュースすることになり、初めて一緒に仕事をしたんだ。そのときに彼が僕に尋ねてきたんだよ、「マイケル・ジャクソンの新譜でプレイしないか」って。僕は「もちろんやりたい!」と即答したよ。それが『オフ・ザ・ウォール』のレコーディングだった。
クインシーは僕のことを“JR”と呼んでいて、そのおかげで僕は音楽界ではJRで通ってるんだけど、あるとき彼はこう言ったんだ、「JR、僕は君をスターにしてみせるよ」ってね。僕は冗談っぽく「OK!」って返事したんだけど、彼は本気だったんだ。だってクインシーはプロデュースを手がけたすべての人をスターにしただろう? 僕もその1人。だから彼は僕にとって世界のすべてと言える存在なのさ。
●クインシーとの出会いがなかったら、あなたのドラマー人生は別のものになっていたでしょうか?
ジョン ハハハ、まったく別の人生になっていただろうね! 少なくともマイケルと仕事をする機会はなかっただろうから、(自身の名刺にプリントされた「Rock With You」のフィルを指しながら)このフィルも生まれることはなかったわけだ。もちろんクインシー以外にも、スティーヴ・ウィンウッドやイーグルスのグレン・フライなど、たくさんの人と一緒に仕事をしてきたけど、僕が携わった大きな仕事はやっぱりクインシーを通して取り組んだものだね。クインシーからの繋がりでダイアナ・ロスから連絡を受けたり、マーヴィン・ゲイの「ミッシング・ユー」をやったりもしたよ。
●「Rock With You」の話が出ましたが、あの冒頭のフレーズはクインシー、もしくはマイケルからのリクエストだったんですか? それともあなたから提案したものなんでしょうか?
ジョン マイケルから特にリクエストはなかったね。「Rock With You」は基本的にロッド・テンパートンの作ったデモを僕なりに解釈してプレイしたんだ。レコーディングはルーファスのメンバー……デヴィッド・“ホーク”・ウォーリンスキーがキーボードで、ボビー・ワトソンがベースだったんだけど、僕らは思うようなテイクをなかなか得ることができなくてね。何度レコーディングを重ねてもさっぱりだったんだ。そしたらクインシーとロッドがコントロール・ルームから出てきてね。僕の後ろに2人が立ちはだかって、クインシーがこう言ったんだ「JR、それを聴いただけで、すぐにこの曲だ!と全世界が認識するような、そんなフィルをやれないか?」って。そして次のテイクでやったのがこのフィルだったんだ。
●すごいプレッシャーだったんじゃないですか?
ジョン そりゃあ、そうだよ! もう2人の呼吸が聞こえるような近さに迫ってこられたんだから! でもそのおかげでこのフィルには独特の身構えが感じられるんだ。そして、シンプルだけど“永遠”と呼べるフレーズだと思う。いつも言っている冗談があるんだけど、僕が死んだらその墓石にデジタル・ボタンをつけて、押したらこのフィルが流れるようにしてほしいって。そうやって僕を偲んで欲しいんだよ(笑)。
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