UP

Archive Interview −ジョン“JR”ロビンソン

  • Translation & Interpretation:Yuko Yamaoka
  • Interview:Yuichi Yamamoto/Rhythm & Drums Magazine

モダンなポップ・ミュージックにおいて
キックが後ろにくることはほとんどない
すべてビートの上にジャストでくるんだ

●最新の教則DVD『The Time Machine』を見せてもらいました。教則シーンも、そして演奏シーンもとても楽しめる作品ですね!

ジョン ありがとう! 

●グルーヴを解析する場面では、「キックは正確に、スネアはやや後ろに」という解説をしていましたが、詳しく教えてください。

ジョン 僕が思うに、モダンなポップ・ミュージックにおいてキックが後ろにくることはほとんどない。すべてビートの上にジャストでくるんだ。それが土台になっている。そしてグルーヴを心地良くするために、僕はスネアを気持ち後ろにするんだ、ほんの数ミリ秒だけね。もちろんギターやキーボードなど、他のパート次第ではあるんだけど。

●録音した音をコンピューター上の波形で見ると、スネアはジャストよりズレているのですか?

ジョン そうだよ! ハイハットも少し後ろになっているだろうね。次のダウン・ビートではまた一緒に戻ってくるけど。僕がここで言っているのは、厳格なドラムの空間に“人間っぽさ”を出しているってことなんだ。昔の偉大なドラマー達を聴いたら……それはどんなジャンルの音楽だろうと、彼らはそういう風にやっているからね。

●その説明シーンで、バック・ビートをヒットする直前、左手の手首を回すような動作が見られますね

ジョン もともと僕はトラディショナル・グリップで演奏していたんだ。そしてボストンのバークリー音楽学院に進んだとき、マッチド・グリップに変えた。トラディショナル・グリップはビッグなバック・ビートをプレイできるけど、手を痛めてしまってね。そしてマッチドでもラウドにプレイできるように、あの動きを自分で開発したんだ。それと、左手がハイハットを叩くときはスティックの先端と真ん中部分を使って叩いている。手首を回転させて、スティックの違う面を使うことにより、いろいろなグルーヴを創り出すことができるんだ。

●スネアのタイミングを遅らせるために、意識的に左手を回す動きを取り入れているのですか?

ジョン 自然にやっているんだよ。余り頭で考え過ぎてしまうと何かしらの輝きを失ってしまうことがあるからね。でも僕の左手に注目するなんて面白いポイントに気づいたね。とても良いポイントだよ。あの動きについて質問されたことはこれまでほとんどなかった。みんな右足や右手の動きに注目しがちだからね。左手の動きはゴースト・ノートを入れるときも、また入れないときも含めて、とても重要なポイントなんだよ。

さまざまなメディアで自身の奥義を語るジョン・ロビンソン。1:24〜からのストレートとルーズの使い分けは彼の真骨頂!

●フット・ワークに関してですが、あなたはヒール・ダウン奏法を使っているのが大きな特徴だと思います。何故ヒール・ダウンを選んだんでしょうか?

ジョン ヒール・ダウン・テクニックはエド・ソフ(Edward “Ed” Soph)から学んだんだ。彼はノース・テキサス州立大学で教えていて、ウディ・ハーマン・バンドでやっている人だよ。彼はヒール・ダウンにすることによりヘッドからビーターをリリースすることができると強調していた。そもそもヒール・ダウンは20年代~30年代、ビ・バップ時代のジャズ・ドラマー達がよくやっていたテクニックだからね。

●ヒール・ダウンであれだけのパワーとスピードが出るのがすごいですね。

ジョン 僕はアクシス・フットペダルを、もうかれこれ15年愛用している。これはダイレクト・ドライヴだ。ダイレクト・ドライヴはよりパワーを得ることができるからね。僕はヒール・ダウン・テクニックとダイレクト・ドライヴの組み合わせで、最高にビッグなキック・サウンドを出すことができる。それが僕のスタイルに合っているんだ。

●DVDでは小口径のジャズ・キットでもプレイしていますね。とてもナチュラルな響きで新鮮でした。

ジョン ありがとう。ああいうジャズ・キットでもっとプレイすることができたらと思っているんだ。ジャズのアルバムを作るのが今の僕の目標でもある。実際に僕が携わる音楽では、24インチのキックを使うことがほとんどだからね。

●ああいう小口径のジャズ・キットで仕事をすることもあるんですか?

ジョン もちろんあるけど、自分が希望するほどの機会があるとは言えないかな。でもクインシー・ジョーンズの『愛のコリーダ』ではキックが18インチのビ・バップ的なキットを使ったんだよ。チューニングをグッと低くしてね。それは僕のアイディアだった。当時はルーファスで大きなロック・キットを使っていたんだけど、今回は小口径のキットでいこうってクインシーに提案したんだ。エンジニアのブルース・スウェディンにはブ厚いドラム・サウンドになるようなマイキングをしてもらったよ。

18年のデヴィッド・フォスター公演では小口径キットを使用(詳細は画像をクリック)。

●DVDの中で「同じリズムを3分間叩き続ける」という練習法を紹介していましたが、そこにはどのような目的や効果があるんでしょうか?

ジョン 同じグルーヴをしばらくやってみるということだね? あのコンセプトは、ジェームス・ブラウンのオーディションみたいなものだよ。彼のオーディションでは、ドラマーは同じグルーヴを延々とやり続けないといけない。フィルはまったくなし。シンバル・クラッシュもなしだ。僕があの練習を紹介したのは、聴いている人に踊ってもらいたいからなんだ。そのためにドラマーが気持ちを込めてグルーヴをプレイすることは大事なことだからね。僕はそういう姿勢で、マイケル・ジャクソンのアルバム『BAD』を制作したんだ。その時はアナログ・リールのテープをデジタル・マシンと同期させた。そしてプログラミングと同じグルーヴを、リアルタイムでも延々とプレイし続けたのさ、各曲でね。それはとても難しいことだったよ。フィル・インはまったく入れなかった。ジャズならば何かの合間に自由にプレイしたりするけど、これはそのまったく逆だった。とにかくストレートにプレイしたよ、フィーリングをたっぷりと込めながらね。

●『BAD』に収められている「Smooth Criminal」を聴けば“ドラムはプログラミング”と誰もが思いますが、実際にはあなたも叩いているんですよね?

ジョン そうだよ!

●あの曲に人間の叩くグルーヴが加えられていたことは、とても大きな価値があると思います。

ジョン 僕もそう思う。だからみんながあの曲で気持良くなれるんだ。僕はスタジオで作業するのはとても得意で、機材にも慣れているし、プロトゥールスの知識もあるし、ドラム・パートのプログラムもできる。でも僕自身が打ち込んだとしても、僕が実際にプレイしたものを越えることはないんだ。

マイケル・ジャクソンの代表曲「スムース・クリミナル」もジョン・ロビンソンがプレイ