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    Archive Interview 茂木欣一[フィッシュマンズ]③ 〜1994年12月号〜

    シンプルな手数でいいから
    息遣いを大切にしようね
    そうよく言ってるんです

    リズム・アレンジに関しては、どういうふうに煮詰めていくんですか?

    茂木 そのへんはベースの(柏原)譲君が中心になって。彼がいろいろアドバイスしてくれるんです。ドラムのパターンについても。

    具体的にはどんなアドバイスを?

    茂木 やっぱり息遣いですね。何小節か単位で息をするってことなんだけど……。ドラムのフレーズとかってシンプルなものが結局は力強かったりするでしょ。だからシンプルな手数でいいから、息遣いを大事にしようねっていう。それは常に言ってますね。

    ドラムのプレイに関して今回、特に留意したポイントは?

    茂木 僕ね、今ヒップホップ的なものが好きなんですよ、すごく。細かいテクニック云々よりも、小節内での起承転結っていうか……ヒップホップなんかにある“ナントカ・カントカ・チャンチャンチャン”みたいな(笑)。起承転結というか呼吸みたいなものに惹かれる。ドッシリ構えてドンッていくよりは、タンタカ・タンタカ・タンタンタンタンみたいな“送り出す感じ”のドラミングですね。バンドのメンバーもけっこうそういうの好きだし。

    ●2小節なら2小節内のグルーヴでひたすら勝負する、余計なことは何もしない、という。

    茂木 そうそう。で、その中の息遣いに細かく気を配ってね。“クールな熱気”みたいなものを表現できたらいいなっていう。

    レコーディングに使ったドラム・セットは?

    茂木 今回はプレミアだったんですよ。ミキサーのZAKさんがプレミアを借りたいねぇって言ったから(笑)。で、僕もキース・ムーンが使ってるから借りたいねぇって(笑)。

    そういう理由で……(笑)。

    茂木 そうなんですよ。で、チューニングに関しても全部ZAKさんお任せ。僕は彼を完全に信頼しきってますからね。もう、どうぞご自由にって感じ。

    叩いてみた印象は?

    茂木 何かね、“もっと力強く叩け”っていうドラムなんだろうなぁ、プレミアさんは。ま、僕の普段の叩き方がわりと軽めだというのもあるんだろうけど。スネアなんかね、デーンと構えてるんですよ、僕の顔に向かって(笑)。しっかりひっぱたけよ!みたいな感じで。だからすっごくスナップを効かせて叩いた覚えがある。バスドラにしても、もっと強く踏めよ!みたいなね。思ったより力を必要とされるドラムでした。

    音については?

    茂木 単純に立ってる音がする。スコーンって感じ。あれってロンドンだからスコーンなのかな……。日本で叩いてる自分のドラムよりも、スコーンっていう点がもっと間近に感じられるんですよ。

    ●フィッシュマンズのドラムの音って、録ったあとのエフェクト処理でけっこう作り込まれてる気がするんですが、そのへんについては?

    茂木 ZAKさんはイジりますからね。今回も最後の「夜の想い」っていう曲以外は、かなりミックス・ダウンで音が変わりましたね。

    そういうのって平気?

    茂木 僕は平気ですよ。全然かまわないと思う。例えば「気分」っていう曲だったら“気分”っていう感じのドラムの音になっていてほしいでしょ。要は、その楽曲が自分にとってグッと響けばいいわけで、そのためのエフェクトだったら、僕は大歓迎ですね。積極的に楽しんでますよ、今日は何してくれるんだろうなって。

    今回のアルバムを踏まえて、これからはもっとこんなことをやってみたい、というのは?

    茂木 もっとね、ドロドロしたい(笑)。次のアルバムはすごくレゲエっぽいのにしようねっていう話をもうしてるんですよ。最近ね、70年代後半のバーニング・スピアとか、あの辺のルーツ・レゲエを聴いて盛り上がってて。みんなで、ああいうディープな感じがいいよねって言ってるの。

    レゲエといっても、今流行りのダンス・ホールとかラバーズとかって感じじゃないんですね?

    茂木 今は違いますねぇ(笑)。

    世間の流行に逆らってますね(笑)。

    茂木 何かね……バンドの息遣いってことに関しては、ルーツ・レゲエの頃のレコードってもうたまらないっすね、本当に。

    あの頃のレコードってバンドの臨場感がそのまま詰まってるから。

    茂木 そうそう。で、そのスタジオも、清潔感はないわ狭苦しいわ冷房故障してるわ、みたいな感じ(笑)。そういうムードなんですよ。シンバルもね、チッじゃなくてチー、バシャッなの(笑)。

    でも、そういうムードって大切ですよね。

    茂木 やっぱね、僕も10代のときフーの『ライヴ・アット・リーズ』を聴いて、キース・ムーンがすぐ側にいてドカドカやってるような雰囲気……そういう生の空気感をレコードから感じとって、いたく感動したクチですからね。だから僕自身も、フィッシュマンズなりのバンドっぽい空気を盤に刻みたいと思ってしまうんですよ。

    ●ドラマーとしては、どんなドラマーでありたいですか

    茂木 あのう……もっと笑わせたいなっていうのはありますね。というか、面白い“素材”でありたいというか。“そんなのありー?”みたいな掟破りな感じをもっともっと出していきたいです。

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