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レゲエをベースにしたサウンドと個性的な楽曲によって、高い評価を得ている若手実力派バンドがフィッシュマンズ。彼らが待望の4thアルバムを完成させた。ギターの小嶋謙介脱退後初の作品にあたる本作のタイトルは『オレンジ』。サウンドの方は、従来以上にシンプルかつラフで、非常に“バンドっぽい”仕上がりだ。そんな新作について、ドラムの茂木欣一にいろいろと話を聴いてみることにした。
ドンカマなしでやった曲は
最後の方でテンポが上がってるの(笑)
●まずはギターの小嶋さんの脱退について。
茂木 これはもう方向性の食い違いです。バンドの中の流行と、小嶋君自身のセンスが少しずつズレていったってことですよ。で、だったらお互い辛い思いして我慢するのもいやだしってことで。
●今回小嶋さんの代わりにゲストでギターを弾いてるシュガー吉永さんについては?
茂木 シュガーさんについては単純にファンですね。デビュー前、ライヴ・ハウスでハバナ・エキゾチカとよく対バンになったりした関係で、以前から知り合いだったんですけど、初めて見たときからとってもカッコいいギターを弾く人だなと思ってて。お願いしてみたら、すぐにOKの返事がもらえた。ラッキーでしたね。
●今回のアルバムはロンドン・レコーディングだったそうですけど、なぜロンドンだったんですか?
茂木 う〜ん、ムードかな(笑)。……もし理由があるとしたら、やっぱ気分転換でしょう。まじめにそうだと思う。なんかね“突き抜ける感じ”が必要だったんですよ。その点、逃げ場のないところに行っちゃえば、やるしかなくなるでしょ。
●で、実際に行ってみてどうでした?
茂木 やっぱリズムのノリに関してとか、日本でリハーサルやっててどうも首をかしげてたような部分が、向こうに行ったら突然うまくいったりするんですよ。気分的にすごくリラックスできたし、それがいい方向に作用したんじゃないのかな。
●これまで以上にバンドっぽくて、ロック色の強い仕上がりだと思うんですが、そのへんについては?
茂木 去年出した『ネオ・ヤンキーズ・ホリデイ』っていう3枚目は、打ち込みものとかも何曲か入ってて、わりと細かく組み立てるっていう趣向のアルバムだったんですよ。ダビングもいっぱいやって、チャンネルも思いっきり使ってっていう。それを作ったあと、ライヴをかなりやって、去年の秋ぐらいからライヴのムードがすごくよくなっていってね。細かく作った3枚目に対する反動と、ライヴの盛り上がりから、やっぱり生っぽいものがいいよねっていう方向にバンドが流れていって。だから今年に入ってリリースした2枚のマキシ・シングルの中には、スタジオで“いっせーのせっ”で録った作品とかも入ってるんですよ。みんなそういうやり方にすごい喜びを感じてて。それに佐藤(伸治)君が作ってくる新曲も、すごくバンド・テイストのあるものだったからね。どうせやるんだったら、ライヴのときの自分達が持ってる魅力的な部分をそのまま録っちゃおうよっていう。
●ライヴをやっていく中で、“フィッシュマンズの音”が見えてきた?
茂木 うん。個人個人の役割がね、より把握できてきた感じ。去年の秋頃からは特にそうですね。
●全体的にすごくシンプルなサウンドですよね。
茂木 ギターのダビングの部分とか、サンプラーで重ねてる部分とかって、結局ライヴだとカットしちゃうじゃないですか。それだったら最初から入れない方がカッコいいなっていう。
●レコーディングはどんな感じでした?
茂木 いい意味でラフ。ドンカマ聴かずにやった曲も2曲くらいあるし。聴いてもらえばわかりますよ。曲の最後の方でテンポが上がってるから(笑)。僕自身はね、そういうの聴いちゃうとけっこううれしくなっちゃう方なんです。全然構わないと思う。そういえば今回、曲の後半になるほどノリがよくなるとも言われたな。やっぱりね、そういう人なんですよ、僕(笑)。
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