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Archive Interview – エリック・ハーランド
- Interview & Text:Rhythm & Drums Magazine Special Thanks:Blue Note Tokyo
- Photo:Takashi Yashima、Yasuhisa Yoneda(live) Interpretation & Translation:Yuko Yamaoka
僕にとって何より大切なのは常に音楽だ
音楽の中で何が起こっているのか、
ステージとオーディエンスの両方に注意を払っていたい
音楽と調和することができるとすべてにおいてオープンになれるよ
マッコイ・タイナーやチャールス・ロイド、ジョシュア・レッドマンと、さまざまなアーティストに引っ張りだこのドラマー、エリック・ハーランド。その人気の理由は、常に独創的なサウンドを奏で、瞬時に空間を輝かせるそのドラミングがあるからに他ならない。ここでは、エリックが参加したチャールス・ロイド&ザ・マーヴェルスの最新作『トーン・ポエム』のリリースにちなんで、ドラマガ2008年6月号に掲載した彼の初インタビューをWeb公開。エリックのプレイ・スタイルの“源流”にあるものを探ってみた。
▲2010年、ドイツのジャズ・フェスティバル=“ジャズ・バルティカ”出演時のパフォーマンス。
メンバーはエリック・ハーランド(d)、リューベン・ロジャース(b)、チャールス・ロイド(sax、fl、per)、ジェイソン・モラン(p)。
大切なのは“その楽器をプレイするのに必要な筋肉を鍛えること”
●そもそもドラムを始めたきっかけは?
エリック ドラムのレッスンを受けるようになったのは5〜6歳の頃からだ。それ以前は母がキッチンで料理しているときに料理道具を叩いたりして音を出していた。いつも鍋とかを叩いて遊んでいる僕を見て、祖母が母に“この子にドラムのレッスンを受けさせてあげれば?”と提案したそうだ。そういういきさつで始めたよ。
そのときはジャズではなく基本的なドラム・レッスンを受けていた。毎日ルーディメンツなどを練習していたよ。ジャズを演奏するようになったのは13歳頃からだ。5〜6歳頃に教会でゴスペルをやっていたんだけど、ゴスペルにはファンクのグルーヴがあるんだ。教会ではいわゆる“シャウト・ミュージック”っていうものもやっていて、それは神に対する信仰心を表現する音楽だったけど、すごく自由なスタイルで楽しかった。それはちょっとジャズっぽいフィールがあったので、そういう流れでジャズを聴くようになっていった。
一番最初に聴いたのはジョン・コルトレーンのカルテットだったけど、かなり度肝を抜かれたよ! そこでエルヴィン・ジョーンズが自由に音楽の中で動き回っているのを聴いて本当に感銘を受けたんだ。
●ジャズに触れてからあなたのドラムは変わりましたか?
エリック ものすごく変わったよ。僕の音楽的世界がずっと広がったんだ。そしてジャズに限らず僕はあらゆる音楽をチェックするようになった。ロック、フォーク、クラシックなどさまざまな音楽を聴いて自分の世界をさらに大きくしていった。ジャズの中にもたくさんスタイルがあるしね。ファンクも同じだ。そのように自分の知識や音楽に対する見識も広がっていった。そうすることによってどんな音楽にも対応できるようになり、誰とでもプレイできるようになっていく。たくさんの言語を理解しているようなものだからね。
●ジャズに出会い、具体的に何が変わりましたか?
エリック そうだなぁ……何より“聴き方”が変わったと思う。だけどプレイ面では当時もファンクをやっていたし、特にジャズにこだわった練習法はやっていなかった。ジャズとファンクはサウンドがまったく違うから。だけど聴き方に変化があった影響で、ソリストや聖歌隊のような演奏をするようになったかな? ジャズを学ぶためにはたくさんレコードを聴き込む必要があったと思うけど、何より大切なのは“その楽器をプレイするのに必要な筋肉を鍛えること”だと思う。
自分の頭に聴こえてくるものを実際にプレイするためには、敏捷性が必要になる。他のプレイヤーの音に対して拡張するように対応しつつ、気持ち良くしっくりやれないといけないんだ。ある決まった形にプレイする練習ばかりしていると、それ以外のやり方では自由にやれなくなるんだ。だけど自由にどういうスタイルもやれるように練習を積んでいたら、何の心配もなく、どんなものにも対応できるようになるよ。もっとオープンなアプローチが取れるんだ。そして自分の思うままにやりたいことを演奏に結びつけることもできる。
自分の筋肉そのものも自由に対応できるように鍛えられている場合は、そういうプレイが自然にできるよ。速いテンポでプレイしたり、何でもやれるように筋肉は鍛えておかないとね。そのためにスティックと手首の間をうまくコントロールしないといけない。指や手首の動き、手足それぞれのコーディネーションなどを理解するべきだ。
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