PLAYER
UP
Interview – EKKUN[Ken Yokoyama]
- Photo:Maki Ishii
短い曲でも筋が通ってる
アレンジがしっかり詰められていて
“細部に神が宿る”ような感じ
●「Out Alone」のレコーディングが終わってから、コロナ禍となって、7月に今作『Bored? Yeah, Me Too』を収録されたそうですが、何か変化はありましたか?
EKKUN 今まではブースに入って録り始めたときに、フレーズを迷ってたときも結構あったんですけど、今回はライヴもできずで結構時間はあったので、そういうのは全然なかったというか、迷いがなかったですね。ドラムは完全に固めて、ここで何をやるかというのも決まってるし、身体もそういうふうに動くようにバッチリ練習もできて、準備万端でレコーディングに臨めたので、テイクは結構少なめで終わってたかなと思います。“KEN BANDで鳴ってないドラムの音を出したい”というコンセプトは「Out Alone」のときに思ったそのままですね。
●こういった状況になってしまって、バンドでスタジオに入る時間も増えました?
EKKUN 増えましたね。週2くらいのペースで入って、今度はアルバムを録る予定なので、今はそれに向けて曲を詰めてる感じです。
●ドラムのパートはほぼEKKUNが考えているんですか?
EKKUN そうですね。健さんが曲のアイディアを持ってくるときは、ドラムはイメージで「こんな感じで」って言われて、その場で「こんな感じ?」みたいな。それでやりとりしながら曲をどんどん固めていくって感じです。
●例えば「Wow Oh」はシャッフル系で、みたいな?
EKKUN そんな感じです。意外って言われるんですけど、俺、モータウンも好きなんですよ。好きで聴いてはいたんですけど、あまりやったことがなかったので、苦労はしたんですけど、シャッフル系をやるということには何の抵抗もなかったですね。
●好きで聴いてはきたけど、今まで演奏する機会がなかったビートなどをこの期間に詰めてきたという感じなんですね。
EKKUN 特にやっていたのは、KEN BANDには直接関係ないんですけど、両手両足のオルタネイトというか、いわゆるリニア・フレーズっぽいものを、“右手・足・左手・足”みたいなエクササイズをずっとやってましたね。最初の方は動かなすぎてウケましたね(笑)。
●EKKUNのドラムはパワフルなのに速いし細かいし、“無敵感”みたいなものを感じていたので、意外です。
EKKUN やっぱりちゃんと身体に入れていかないと発揮できないタイプなので、アドリブが効かないんですよ。何をどういうふうにやるっていうのは決めていかないとできないので、緻密っぽいのはその辺りからくるのかな。
●今回のミニ・アルバムは、フィルインにそういった“EKKUNらしさ”をすごく感じました。
EKKUN KEN BANDで曲を作りながらあらためて思ってたんですけど、16分のロールが得意なんだなというのに気づいたというか、思い出したというか(笑)。アレンジを詰めきってない段階だと、オカズが16分のロールばっかりなんですよ、手癖で。
●ではそこから引いていく作業があるんですね?
EKKUN そうですね。
●今回のBPMはEKKUN的にはどうですか? 「Still I Got Fight」はかなり速いと思いますが、身体に染みついている速さですか?
EKKUN そうですね。たださすがにBPMは230くらいあったので、やっぱり速いところは速いです(笑)。最初のフィルとかも。
●このフィルを聴いてEKKUNだなと思いました(笑)。スネアとタムの行き来が。
EKKUN 得意ですよね(笑)。
●2ビートも、これまで演奏されてきたようなテイストとは少し違ってくると思いますが、それに関してはいかがですか?
EKKUN 以前は詰め詰めでやっていたんですけど、KEN BANDではスペースの使い方を要求されますね。足(バスドラ)の入れ方は、最初に考えたパターンそのままのところもあるし、減ったところもあるし、曲の雰囲気に合わせていろいろ表情をつけるために考えました。ペダルもダイレクト・ドライヴからチェーンに変えましたし。ダイレクトだと速いところはいいんですけど、ムードを作るところで足が待てなくなっちゃって、負荷を増やしたというイメージですね。
●片足でのダブルも練習したり?
EKKUN そうですね。両足ダブルでもいいんですけど、片足には片足なりの良さがありますし、KEN BANDの曲にハマるときもあって。両足だとはっきり出過ぎちゃうんですよ。でも使い分けてはいます。俺が入ってから作った新曲は両足で踏んでる方が多いですけど、「Balls」でハイハットをクローズしながらダブルを踏むときは片足でいってます。
●「Your My Sunshine」も収録されていますが、こういったカヴァー曲はどのようにアレンジを詰めていったんですか?
EKKUN 健さんがある程度、「昔の曲をこういうふうにカヴァーしたい」っていうのがあって、それをもとにみんなで詰めていく感じですね。
●最初のスネアの入りが2拍目からで、新鮮な感じがしました。
EKKUN これは健さんのアイディアなんですけど、アレンジのセンスがすごいですよね。聴こえてくる音に対してのセンサーというんですかね。普通だったら1拍目から入ってくると思うし、俺もずっとそうしてたんですけど、あるとき健さんが「1拍ズラして入ってきてみようよ」って言って、それでやってみたら「おぉ〜」ってなったんです。やってること自体はシンプルなんですけど、シンプルに終わらないアイディアがすごいなと思いましたね。
前から感じてたんですけど、KEN BANDの曲って、2分とか3分とか、短い中にもちゃんと筋の通った展開があるんですよね。一緒に曲作りをしてみて“あ、こういうことなんだ”って思いました。細かいところに神が宿るじゃないですけど、そういう細部まで見えてて、やっとken yokoyamaの曲になるんですよね。だから出来上がった曲のアレンジは氷山の一角というか、その下で詰められてることがたくさんあるんです。
●そういった練られてるアレンジといえば、「Count Me Out」で繰り返すリフのようなドラム・フレーズもすごく意図を感じました。
EKKUN KEN BANDに入ってからは、特にそういう1発というか、1フレーズはすごく大事にしてて、極端な話、曲ってずっと8ビートを叩いてても終わるけど、その中で何も変化がないとおかしいわけじゃないですか。それで、パートごとの世界観をドラムで表現しようという考えでリフを捉えるようになりましたね。指揮者みたいな感じですかね。がっちりアクセントとしてみんなで合わせるところもあれば、場面チェンジのお知らせもあるし。その1発のシンバルとか1発のスネアとかをよく考えるようになりましたね。
●それだけ詰められているから、6曲のミニ・アルバムがすごく濃いものになっているんですね。
EKKUN レコーディングまでに相当練習して詰めたので、こんなに準備してレコーディングに臨めたことはないんじゃないかっていうくらい準備しましたね。
●今までになかった経験だったんですね。
EKKUN でも俺の中では、そういうバンドが自分の中では究極のバンド像っていうのが前からあったんです。例えばライヴのときも、その日の自分しかいないし、お客さんもその日だけしか集まれない人達だから、ハプニングじゃないけど、何が起こってもおかしくないんですよね。そこにガイド(クリック)があると、いい意味でも悪い意味でも冷静になっちゃうなって。クリックに合わせて叩いてればいいってものでもないし、かといってリズムがグダグダになってもいいわけではないから、だったらその日のチームで、その日のベストを出せるような演奏、ライヴをやりたいですし。あとはレコーディングも、以前はAメロとかBメロとか分けて録ってて、それが最善の方法だったんですけど、自分の理想としては1曲通して叩けたらいいなと。それで1テイクでできたら、究極ですよね。だから理想を現実化させたいから、自分とも向き合ったし、バンドとも良い向き合い方ができたかなと思います。
●最後に、KEN BANDの3人とは以前から親交の深かったEKKUNですが、現状では、今までの“KEN BANDのグルーヴ”に寄せていっているような感覚はあるんですか?
EKKUN いや、合わせにいっているというよりは、独立した1人のドラマーとして、4分の1という意識で、誰が前に出てくるとかじゃなくて、みんな横並びでやってるって感じですね。みんなを気にしてうかがう感じではなく、“これですよ”って。俺に合わせろとも違うし、KEN BANDの1人としてドラムを叩いている感じですね。
◎Information
EKKUN Twitter Instagram
Ken Yokoyama HP Twitter Instagram