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Interview – 山葵[和楽器バンド]
- Interview & Text:Rhythm & Drums Magazine
好きなことの延長線に仕事があって
それが人々の役に立って
そういうことを僕発信でできたら
●新作『TOKYO SINGING』は、コロナ禍での制作となったそうですが、やり方もガラッと変わったりしたのでしょうか?
山葵 僕に関しては、あの自粛があったから逆に自分と向き合うことができたというか、すごく作業に集中ができたので、あまりネガティヴには捉えていなくて。今回作詞作曲した「Singin’ for…」はそんな中でできた曲なんですよね。
●今回のアルバムを代表するような楽曲でありつつ、今の世の中に向けた応援歌のような印象も受けました。
山葵 ありがとうございます。みんなが元気になったり楽しんでもらえたり、今おっしゃったように思ってもらえるのはすごくうれしいことですけど、そこまでおこがましいことは実は考えてなくて。もちろんうれしいですけど、僕の中では2月末〜3月頭にやる予定だったらライブができなくなって、すごくもどかしいなっていう気持ちがある中で、またライブができたときにみんなで一緒に歌って1つの空間を共有できるような曲があればいいなと思って作ったんです。
●作曲方法は山葵さんの中で決まってるんですか?
山葵 場合によって違うんですけど、今回(「Singin’ for…」)は“I’m singin’ for you and me”っていう部分の歌詞とメロディが最初にできてたので、これに向けて曲を発展させていこうと進めていきましたね。あとはライブで盛り上がるならどういうビート感で、とか考えながら、細かい部分は後から詰めていく感じですね。
曲作りに限らず、やるぞって決めたらそれしか見えなくなっちゃって、ご飯も食べずにずっと集中するタイプなんですけど、今回はそれで5キロぐらい痩せちゃったんです。で、さすがに落ちすぎたなと思って、戻すためにトレーニングしたら、戻るどころか増えちゃって。周りがみんな自粛太りの中、僕は自粛マッチョでしたね(笑)。そのくらい、自分のやりたいことをより突き詰められた期間なのかなと思います。
●作曲された山葵さんご自身が思う、ドラム的なポイントはありますか?
山葵 そうだなぁ……いろいろありますけど、自分で作ってるので、やっぱり自分が一番気持ちいい流れにしたいなと思ってるんですよね。Bメロの歌とキメに対する絡み方とか個人的には好きですね。
●スネアとハイハットがウラでキレ良く入るところですよね。
山葵 そういう部分はドラマーとして自然と出てくるような気持ちいいアプローチをそのまま使ったような感じですね。あとはラスサビ前のシンガロングでスネアのロールでクレッシェンドしていく部分とか、プレイヤーとしては胸アツなところかなって思いますね。やりすぎるとクドいし、ドラマーってやりすぎちゃうというか、やりたくなっちゃうと思うんですけど、そこの塩梅は曲によって差し引きしていますね。
個人的にはアニソンも好きなので、そういうキメはすごく影響を受けていると思います。最近はあまり見なくなったんですけど、一番記憶に新しい曲だと、「ようこそジャパリパークへ」とか、「灼熱スイッチ」ですね。作曲目線から見ると、「灼熱スイッチ」なんかサビ頭のコード進行が、今までのポップスやロックだと使わないようなものなんですよ。発想が本当にすごいなと。そういうのを聴くと作曲家としてももっと勉強して、ドラマーだけじゃなくて、音楽家としてトータル力を上げたいなと思いますね。
●そういう視点で考えると、「月下美人」はスローなバラードですが、ビートのパターンがすごく作り込まれているような気がしました。
山葵 そうですね。正直結構悩みましたね。基本的にリズムがそんなに前に出るべき曲ではないので、どこまで引こうかなって。ドラムはロック・バラードとして支えるんだけど、フレーズとしてのダイナミクスをどういうふうに変化つけようかなと、大したことはしてないんですけど、悩みましたね。こういう隙間の多い曲の方がキックはここ鳴らすのか、鳴らさないのか、1打目と2打目の音量差とか、1回し目と2回し目のパターンの変化とか、感覚でやってる部分もありますけど、自分の中ではシビアにやってますね。
●そういう楽曲全体のバランスっていうのをすごく考えるようになったり、作曲者としてもどんどんスキルをつけていきたいともおっしゃっていましたけども、今の山葵さんの目標みたいなものはありますか?
山葵 そうですね……あんまり大きいことを言い過ぎると生意気な感じになっちゃうんですけど(笑)。何というか、いろいろなことが好きなので、運動するのも好きだし絵も描きますし、そういう自分の好きなことの延長線上に仕事があって、それが何か人々の役に立って、周りの人も巻き込んで一緒に楽しめて、そういうことを僕発信で何かできたらっていうのが目標ですね。ドラマーとしてだけの人生だったら、こういう発想にはならなかったと思うんです。どっちかっていうと、プレイヤーって、あるものに対して自分がどう向き合うか、曲に対してどういうアプローチをしてどうより良くできるかっていうことだと思うんですよね。それも好きなんですけど、もっと自分がいろいろ発信していける存在になっていきたいなというふうに思っています。
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