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【芳垣安洋のドラム・ノーベル賞!第184回】NYジャズの名サックス奏者、スティーヴ・グロスマン追悼
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- Text:Yasuhiro Yoshigaki
わずか1年余りでマイルスのグループを離れたのち、グロスマンが参加したのは、エルヴィン・ジョーンズのバンドでした。最初は大きな編成でしたが、70年代のほとんどはエルヴィン、ベースのジーン・パーラ、サックスのデイヴ・リーブマンとのカルテットでした。エルヴィンのバンドは、もちろんエルヴィンの凄まじいドラム・ソロが一番の売りではあったのですが、フロントに立つグロスマンとリーブマンの2人のサックス奏者の縦横無尽な演奏によって、コード楽器がないという特異な編成を微塵も感じさせない素晴らしい音楽となっています。もちろん、エルヴィンの伴奏力の高さがあるからこそでもあります。
この時期のものとしては『Merry-Go-Round』、『Mr. Jones』、『Live at the Lighthouse』が特にオススメです。『Merry-Go-Round』にはパーカッショニストのドン・アライアスも参加していて、リズムのウネりとホーン・セクションの重厚さ、チック・コリアとヤン・ハマーのツイン・キーボードといった、エルヴィンのマイルスへの対抗心なども汲み取れてなかなか興味深いですね。
チック・コリアの『La Fiesta』をエルヴィンが叩いてるのも一興。『Mr. Jones』では1曲カルロス・パタート・バルデスが参加し、アフロ・キューバンを演奏したり、コードレス・カルテットでジョン・コルトレーンの追悼曲を取り上げたり。『Live at the Lighthouse』では、エルヴィンのあまりの凄さに口があんぐりと空いてしまうほどです。
この時期、グロスマンはエルヴィンのバンドに在籍しながらも、他にいくつかのプロジェクトにも参加していました。NYに居を構えた日本人との交流も深く、日野皓正さんや菊池雅章さんの“Kochi”というグループ、やはりNYに長らく住まれていたベーシスト、中村照夫さんのグループ、“Rising Sun”などに参加しました。中村照夫さんの『Rising Sun』は、70年代中期のNYのジャズ・サウンドがよくわかる作品で、当時は日本でも相当話題になりました。他にも菊池雅章さんの、80年にリリースされた『ススト』が、何と言ってもエポック・メイキングな作品でした。