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    名手が語ったマイケル・ジャクソンとのレコーディング秘話! 〜『スリラー』40周年盤発売記念!!〜

    キング・オブ・ポップス=マイケル・ジャクソンの代表作であり、世界で最も売れたアルバム『スリラー』。1982年の発売から40周年を迎え、レア音源などを追加した記念盤『スリラー<40周年記念エクスパンデッド・エディション>』が11月18日にリリースされた。ここでは『スリラー』に参加した今は亡き名手、レオン“エンドゥグ”チャンスラーが、ドラマガ2010年4月号で語ったレコーディング秘話を紹介しよう。

    Interview−レオン“エンドゥグ”チャンスラー

    マイケル・ジャクソンの第一印象

    僕がマイケルの作品に参加したのは『スリラー』が最初だね。その頃、クインシー・ジョーンズのセッションをいろいろやっていたんだ。レコーディングに参加する以前から、僕はいつもマイケル・ジャクソンというアーティストをリスペクトしていたよ。あれはちょうど彼が『オフ・ザ・ウォール』で最高のセールスを記録したばかりの頃だったね。

    初めてマイケルと会ったときの印象かい? 実際に会ってみて、彼が真に偉大なアーティストであることに気がついたよ。彼はとても礼儀正しく、自分の音楽にのめり込んでいる人だった。スタジオでもすごく真面目で、きっちり取り組んでいたよ。誰もがヴァイブに身を任せ、熱心に取り組んでいたからね。マイケル自身もミュージシャンの1人として作業していたよ。

    「ベイビー・ビー・マイン」でのマシン・ビートとの融合

    その頃は、ドラム・マシンはまだとても新しいものだったから、ドラマーのドラム・マシンに対する取り組み方にもいろいろなやり方があったんだ。

    (当時)マシン・ビートは参考トラック(リファレンスのトラック)として音が入っている感じで、そのまま(最終的にアルバム内に)キープされないことが多かったね。それに合わせてドラマーはプレイするけど、すべての音をマシンと一緒にやれるとは限らなかったから。

    そして当時もセッション・ミュージシャンはクリック・トラックとプレイしてきたから、 ドラム・マシンにはかなり慣れていたんだ。(セッション)ミュージシャンは正確なプレイを要求されていたので、マシンと1つのサウンドとして音をブレンドさせることはすごく自然だったのさ。

    そして(『スリラー』を手がけた)エンジエアのブルース・スウェーデンのレコーディング技術のおかげで、ドラムとドラム・マシンを融合させた「べイビー・ビー・マイン」のサウンドは素晴らしいものになったね。このサウンドは新世代のドラム・サウンドのスタンダードとなった。このサウンドは革新的なだけでなく、歴史的なものになったんだよ。

    「ビリー・ジーン」におけるドラム・アプローチ

    「ビリー・ジーン」のレコーディングでは、僕は昔のR&Bでドラマーがやっていたことに戻ってみたんだ。僕はアイク・ターナーやスライ・ストーンと前にレコーディングしたことがあるんだけど、その際、バスドラ、スネア、ハイハットのみでプレイしたんだ。そのやり方を「ビリー・ジーン」で取り入れることに関しては、ブルースも大賛成でね。彼のレコーディング・テクニックとマイクのセッティングを駆使すれば素晴らしいサウンドが得られると感じていたよ。

    ドラムは16トラック・アナログ・マシーンで録ったね。各ドラムをマルチプル(複合)トラックにして、バンド幅(帯域幅)を広げたんだ。各ドラムをマルチ・トラックにレコーディングすることにより、EQの可能性もさらに広がり、互いにブレンドさせることも可能だった。

    マイケルのヴォーカルが入ったトラックにプレイしたこのレコーディングは僕にとっても音楽史の一部となる仕事になったんだ。すでに(完成に近い)偉大な仕事に対し、最後に仕上げとして人間の奏でるリズミックなフィールを加味したようにも感じたね。

    この曲は、ベースとキーボード・パートのグルーヴのノリがすごく良くて、つられてしまうようなフィールがあったけど、とにかくドラムはごくシンプルである必要があったんだ。クインシー、ブルース、マイケルも僕も、全員そのコンセプトに同意したよ。

    トラックは催眠にかかったような感覚のものになっていて、リズムはそこに自然と乗っているべきだった。本当に天才的な制作チームで、この偉大なプロジェクトを見事に概念化したと言えるね。とにかく「ビリー・ジーン」にはサウンドから歌詞に至るまで、実に特別な曲に感じられたよ。

    『スリラー』制作時のエピソード

    当時の僕はRockie Robbinsというアーティストのプロデュースを務めていたんだよ。だから『スリラー』のレコーディングでスタジオ入りするときはプロデューサー・モードからサイド・マンのモードに切り替えないといけなかったことを覚えているね。

    当時スタジオ内では、みんなで「『オフ・ザ・ウォール』より3百万枚は(多く)売りたいね!」なんて冗談をよく言っていたものだ。まさかこのアルバムがあらゆるセールスの記録を塗り替えることになるとは想像していなかったよ。

    もう1つ、「ビリー・ジーン」を録った日は僕の妻の誕生日でね。僕はその日の晩、彼女のためにディナー・パーティを開いたんだけど、僕はパーティに少し遅れてしまってね。到着したときに「僕はクインシー・ジョーンズやマイケル・ジャクソンと、これまでで最高の素晴らしいセッションをやってきたよ」って話したことを覚えているよ。

    『スリラー<40周年記念エクスパンデッド・エディション>』
    CD2枚組/SICP31586-7/¥4,400(税込)
    ●シルバー・スリーブケース仕様
    ●28Pカラー・ブックレット

    詳細はこちら→https://www.sonymusic.co.jp/artist/MichaelJackson/discography/SICP-31586