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    Pick Up Next Generations #2-Andrew Marshall

    • Score & Text:Yusuke Nagano Illustration:Yuji Shiozaki

    #2 Andrew Marshall

    形を変えながら進化していく音楽の中で、めきめきと頭角を現す“新世代”のドラマー達。本連載では、次代を担うであろう、注目のプレイヤーをピックアップ! YouTubeで観られる映像をもとに、彼らのドラミング分析をお届けしていく。今回取り上げるのは、若きカリスマとして注目を集めるシンガー・ソングライター、ビリー・アイリッシュのステージを支えるアンドリュー・マーシャル。ビリーのヒット・チューン「Bad Guy」のライヴ映像から、彼のドラミングの魅力に迫ってみよう。

    重心の低い堅実なグルーヴと
    エレクトロニックに精通したハイブリッド・ドラミング

    アンドリュー・マーシャルは、2020年のグラミー賞で主要4部門を独占するという史上2人目の快挙を成し遂げた18歳の女性シンガー=ビリー・アイリッシュのツアーで活躍するドラマー。

    ニューヨークで育ち、9歳でドラムを始めた彼は、幼い頃から父親にジャズ・クラブへと頻繁に連れて行ってもらい、14歳のときにはすでにプロの仕事も経験していたとのこと。

    正式にプロとしてキャリアをスタートさせたのは大学卒業後ですが、在学中にポップ・ミュージックに携わるドラマーを目指すことを決意。近年のポップ・シーンで重視される、トリガー・パッドなどの電子機器を使用したハイブリッド・ドラムの研究にも取り組み始めます。

    その後、2017年に活動拠点をニューヨークからロサンゼルスに移し、ほどなくしてビリー・アイリッシュのツアー・ドラマーに抜擢されました。

    今回のプレイ分析は、ビリー・アイリッシュの大ヒット曲「Bad Guy」のライヴ映像から検証していきます。

    ツアーで使用しているセットは、グレッチのアコースティック・ドラムにローランドのエレクトロニック・パッド類を組み合わせたハイブリッド・キット。メインのパッド(PD-85BK)は正面のタムとフロアの間に3台横並びに配置され、さらに奏者左手側にもPD-8を1つ設置。トリガー・モジュールは、TM-6 ProとTM-2を併用しています。

    パッドの総数は多くありませんが、DAWソフト=Abletonを駆使して、曲に合わせて音色が自動的に変化するように設定されているため、多彩な音色の操作が可能になっています。

    ちなみに、そのプログラミングもすべてアンドリュー自身が行っているということで、このあたりの対応力は、まさに新世代のドラマーと言えるでしょう。

    オープン・スタイルで叩く
    ハイハットのウラ打ちパターン

     Ex-1は、Aメロにおけるハイハットのウラ打ちパターン。2・4拍はフィンガー・スナップの音色をアサインしたパッドを右手で、ハイハットを左手で叩くオープン・スタイルになっています。キックの4分打ちの均一なツブ立ちと安定感も印象的ですが、ここには、ゴースト・モーションを動かさず、ドッシリと地に着けた状態を保つ左足も大きく貢献しているのではないでしょうか。

    特徴的な手順で
    ビートの安定感を強調

     Ex-2は間奏部分で、パターン構成はEx-1と同じですが、右手でハイハットを刻み、左手は低めにチューニングされたサイド・スネアを叩いて抑揚を加えています。譜例3小節目のフィル後に叩くクラッシュを、やや不合理と思われる左手で処理するのも特徴的ですが、このあたりは、ハイハットの一定感を強く打ち出すための選択と考えられます。

    エレクトロニック・パッドを絡めた
    洗練されたスティッキングに注目

    Ex-34は、パッドをフィーチャーしたプレイです。Ex-3は中間部分、左手でフィンガー・スナップ、右手でクラップをプレイする場面。Ex-4はエンディング部、エレクトロニックのハイハットにパーカッシヴなアクセントを絡める場面で、4拍目ウラのハイハットの3連符を右手のみで叩く動きには、洗練されたスティッキングが垣間見えます。また、Ex-3、4では同じパッドを使用しているので、音色が場面に合わせて自動的に切り替わっているのが見て取れます。

    まとめ

    重心の低い堅実なグルーヴとエレクトロニックに精通したハイブリッド・ドラミングで、ビリー・アイリッシュのステージを支えるアンドリュー。理想のプレイ・スタイルを学生時代から明確に意識し、そのために必要なエレクトロニックのスキルを探求。さらに、目指す仕事に適した環境を求めて拠点を移すことで、見事に夢を実現させます。

    LAに移り住んで3〜4ヵ月後にはすでにビリーとの仕事をスタートさせていたという展開の早さにも驚きますが、キャリアを切り拓く彼のような行動力は、これからの世代を担う多くのドラマーの指針となるのではないでしょうか。

    【Another Playlist】

    今回取り上げた映像の他にも、YouTubeには数々の動画がアップされている。こちらもチェックしてみよう!

    ◎Information
    Andrew Marshall HP Twitter Instagram

    ◎Profile
    長野祐亮(Yusuke Nagano):15歳でドラムを始め、つのだ☆ひろ、そうる透に師事。大学在学中からプロ活動をスタートし、数々のレコーディングやアーティストのサポートで活躍する。現在はインストラクターや執筆活動を通して後進の指導も行っている。「ドラマーのための全知識」、「1日15分!自宅でドラム中毒」など数多くの著書がある。

    ◎Information
    長野祐亮 Twitter

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