プランのご案内
  • 2024年12月27日(金)12:00 ~ 2025年1月6日(月)11:00まで、サポートをお休みいたします。期間中のお問合せは、1月6日(月)以降、順次対応させていただきます。
  • GEAR

    UP

    サイズ、材質、チップ……“ここ”に注目! スティック選びのコツ

    • Text:Yusuke Nagano Photo:Masao Sekigawa Illust:Chihiro Yaegashi

    “スティックと言ってもいろいろなモデルがあって、どれが自分に合っているのかわからない……”という悩めるドラマーのため、本誌2012年11月号に掲載の特集「スティック×スティック×スティック」の記事を一部発掘! スティックの“選び方のコツ”を伝授していこう。これを読めば、理想のスティックが見つかるはず。

    はじめに − スティックの各部名称

    ※写真で示しているグリップ部はあくまで目安で、ドラマーによってかなり異なる。

    PART I スティックの“ここ”がポイント!

    まずは、スティックを選ぶ際にチェックしておきたいポイントを7つの項目に分けて紹介していく。サイズ、材質、重量、仕上げ、チップの形状……こんなに違う!

    Point 1:長さ

    スティックの長さは、いろいろなバリエーションがありますが、標準的な長さは400mm前後(398〜407mmくらい)と言えるでしょう。個人的な感覚では、395mm以下だと短め、409mm以上だと長めという印象です。

    長いほどショット時にスティックをしならせる感覚や遠心力を利用したパワフルな音色を得やすく、また一定のトルク感で安定した音量を持続させやすいという特性も強くなります。

    逆に短いとスティックの俊敏さが高まるため、ストロークの変化による多彩な表現を導きやすくなりますが、逆にストロークのバラつきが音色に反映されやすくなるとも言えます。ただし、このあたりはスティックのどのあたりをグリップするかということも影響するので、一概には言えない部分でもあります。

    ▲写真上からジルジャン のBuntaシグネチャー・モデル(422mm)、ヤマハのYCSR-3(400mm)、パールのyukihiroシグネチャー・モデル(旧モデル、生産終了/393mm)。

    ちなみにある程度の経験者ならば、スティックを試打した際に5mmくらいの長さの違いによる、操作性の差は敏感に感じ取れるようになるものです。

    Point 2:太さ

    スティックの太さも、さまざまなバリエーションがあります。直径13mmから16mmくらいまでが一般的な範囲ですが、中には極太の19mmといったものも存在します。

    最も標準的な太さは14mm前後ですが、長さが同じならば太いほど低域の効いた重量感のあるパワフルな音色が得やすく、細いほどシャープでレスポンスの良い音色が得やすくなる傾向となります。

    安定感のある音色を得やすいのが太いスティックで、多彩な表現をしやすいのが細いスティックとも言えます。極太のスティックは広い会場で生音を聴かせるドラム・コーや、パラフルな音色を必要とするロック・ドラマーに愛用者が多く、細いスティックは繊細な生音を必要とするジャズ系やキッズ・ドラマーなどに愛用者が多いものです。

    ただし、これも奏法や体格、材質、ホールド感の好みとも関係があるため一概には言えない部分でもあります。これも長さ同様、ある程度の経験者ならば、スティックを試打した際に、0.5mmくらいの太さの違いを感じ取れるようになるものです。

    ▲左からヤマハのコージー・パウエル・シグネチャー・モデル(生産終了/19mm)、ジルジャン Maple Acorn Tip(15.7mm)、同Big Band Jazz(14.6mm)、パールのyukihiroシグネチャー・モデル(旧モデル、生産終了/14mm)。

    Point 3:材質

    スティックに用いる素材はいろいろありますが、ここでは代表的な木材を3種類紹介しましょう。

    ■ヒッコリー

    白い木目と木肌が特徴的。重さも硬さもほど良く、スティックの木材としてはもっともポピュラーで愛用者の多い素材です。適度な柔軟性があり、スティックのリバウンド感もシャープで音のツブ立ちも明確耐久性も高い方と言えます。

    オーク

    やや暗めの木肌が特徴的で、値段も比較的安価になります。重量があって硬めの材質なので、重めで落ち着いた音色を得やすいのですが、柔軟性が少ないため、リバウンド感や音色に対する対応力がやや低く感じるかもしれません。

    メイプル

    白色で緻密な肌目が特徴的。軽くて硬い木材で、コントロール性に優れて表現力も高いと言えます。スティック自体の鳴りも豊かで、その特性はライド・シンバルを刻む際に、明るくクリアな音色となって顕著に表れるため、ジャズ系ドラマーに愛用者が多いものです。ただし、パワーや重量感は少なく、耐久性も低めになります。

    以上が代表的な木材ですが、この他にも、バーチ、ローズウッド、黒檀などの他に、カーボンやアルミニウムといった素材を用いたスティックもあります。

    Point 4:チップ

    直接打面に触れる部分であるチップにもいろいろなタイプが存在し、それによって音色も変化します。

    まずはチップの大きさですが、大型になるほどパワフルで太い音色になり、逆に小型になればシャープで繊細な音色になる傾向となります。

    次に、チップの形状です。これも実にさまざまなタイプがありますが、大きく6種類に分けて紹介していきましょう。

    アコーン(おにぎり型)

    通常の角度でヒットしたときは、打面に接する面積が比較的大きくなり、音量や太さも得られます。またヒットする角度により、接する面積を変化させることができるため、シャープから太い音色までさまざまな音色を引き出すことができます。

    ボール(丸型)

    ヒットする面積が比較的少なく、クリアなツブ立ちが得られます。またヒットする角度を変化させても、打面に接する面積を一定に保ちやすいので、安定した音色を得やすいのも特徴です。特に小型のボール型のチップは、非常に繊細な音色を得ることができます。

    ティアドロップ(しずく型)

    アコーンのアゴの部分に丸みを抑えたようなシェイプがティアドロップ型。ボールの特徴であるツブ立ちの良さと安定感、アコーンの特徴であるヒットする角度での表現力を併せ持った形と言えます。

    スクエア(俵型)

    ボール型と同様で安定感のある音色が特徴ですが、接地面積が大きくなったことで太さパワーを得やすくなります。小型のスクエア型のチップは、繊細な音色にも対応しやすいものです。

    ノッカー

    チップがない和太鼓のバチのような形状のスティック。太く荒々しい音色が特徴で、パワー・プレイに特化したモデルと言えます。ライドをツブ立ち良く聴かせるには、コントロール力が必要となるでしょう。

    ナイロン

    チップ部にナイロンを使用することで、明るくクリアなツブ立ちが得られます。音色は硬めでパワフルな傾向となりますが、これもチップの大きさや形状、全体とのバランスなどで印象が変わります。木のスティックと異なり、チップが欠けてしまうことがないので、音色の安定性や耐久性に優れているのもメリットとなります。

    ▲写真の通り、チップの大きさを比較したもの。大きくなるほどパワフルで太い音になり、小さくなるほどシャープで繊細な音になる傾向となる。写真右のチップほどの大きさになれば強力な極太サウンドに!
    ▲左から、ナイロン、ノッカー、スクエア(俵型)、ティアドロップ(しずく型)、ボール(丸型)、アコーン(おにぎり型)。なお、チップの形状の名称は各メーカーそれぞれ異なるので、各社の呼び名をチェックしてほしい。

    Point 5 仕上げ

    スティックの表面の塗装もスティックのホールド感やスティック自体の鳴りに影響を与えます。

    一昔前まで主流を占めていた、厚めにラッカー塗装が施されたスティックは、湿気の影響を受けにくいというメリットがあるのですが、汗によって滑りやすくなることを嫌う人もいました。

    そこで、最近では各メーカーから独自の薄めの塗装で、滑り止めの工夫を凝らした製品が多くラインナップされています。まったく塗装を施さないで、ナチュラルなホールド感を追求した無塗装スティックもあります。

    Point 6:重心

    スティックは長さや太さだけでなく、重心のバランスも音質に関係する大切な要素となります。

    重心に最も影響をおよぼすのはショルダーの形状。ショルダーがチップに近い部分から急激に削れているタイプやショルダーの削れ方が少ないタイプは、重心が前寄り(チップ寄り)になり、逆にショルダーの削れ方がなだらかになるほど重心は後ろ寄り(グリップ寄り)になります。

    前重心のスティックのほうが、スティックの重さを打点に乗せやすいため、パワフルで太い音質を安定して得やすいのですが、極端過ぎるとリバウンド感は重くなります。

    逆に重心が後ろ寄りになると、操作感は軽快になり、繊細な音は得やすくなりますが、極端過ぎるとパワーや安定感を欠くことになります。

    ▲写真はショルダーのチップ部からの削れ具合いを比較したもの。写真上のショルダーの毛ズレが少ないタイプと真ん中の急激に削れているタイプがチップ寄り重心。下の写真がなだらかに削れているもので、重心はグリップ寄りとなる。

    ただし、重心は同じスティックでもグリップする位置によって変化させることが可能であり、卓越したドラマーは細かくグリップの位置を変えながら、スティックから多彩な表現力を引き出しています。

    ▲グリップするポジションによって重心バランスは変化する。1はグリップ・エンドぎりぎりに持った状態で、支点となるグリップから相対的に重心位置が遠くなるため前重心に感じられ、パワフルで太い音色に。2のように短く持つとコントロールが増し、繊細なスティック・ワークがしやすくなり、3は1と2の中間のポジション。また、片方のスティックだけ短く持ったり、演奏中にグリップの位置を変えたりするドラマーも。

    Point 7:重さ

    重さもスティックの大切な要素です。軽めのスティックは身体に負担のない操作性と、音のキレやレスポンスの良さが魅力ですが、あまりに軽過ぎると、線が細く存在感がない音色となってしまいます。

    逆に重いスティックは、音量や質感は得やすくなりますが、バランス良く操作する技術が必要であり、重過ぎると音色や演奏自体が粗くなる原因にもなります。ただし、重さの感覚は実際の重量以上に、長さや太さなどのトータル・バランスの関わりで印象が変わる部分でもあります。

    ちなみに木材のスティックは、同じモデルでも木の密度によって重量に差があるため、ある程度の経験者は、自分の好みのスティックの重さをグラム単位で把握している場合が多いです。

    Next ➡︎ 【PART Ⅱ】スティック選びの“ここ”をチェック!