プランのご案内
  • 2024年12月27日(金)12:00 ~ 2025年1月6日(月)11:00まで、サポートをお休みいたします。期間中のお問合せは、1月6日(月)以降、順次対応させていただきます。
  • GEAR

    UP

    【連載】博士 山本拓矢がデジマートで見つけた今月の逸品 ♯25〜GRETSCH Snare Drums〜

    • Text:Takuya Yamamoto
    • illustration:Yu Shiozaki

    第25回グレッチ・スネア・ドラム

    ドラム博士=山本拓矢が、定番商品や埋もれた名器/名品など、今あらためて注目すべき楽器たちを、楽器ECサイトであるデジマート(https://www.digimart.net/)で見つけ、独断と偏見を交えて紹介する連載コラム。今回は博士が執筆したGRETSCH DRUMSの公式研究本『That Great GRETSCH DRUMS』の発売を記念し、本著の中で紹介し切れなかった2種類のスネア・ドラムにフォーカスします。

    いつもお読みいただき、ありがとうございます!先日発表されましたが、この度リットーミュージックより、私の著書が発売されることとなりました。タイトルは『That Great GRETSCH DRUMS』ということで、昨年で140周年を迎えたGretschの公式研究本(詳細はこちら)です。

    Gretschと言えば、この連載の初回にCOBスネアの1つとして触れたG4160をはじめとして、長い歴史に裏打ちされた優れた要素のある楽器をたくさん生み出してきました。拙著では同社の歴史を解説しつつ、60台以上のスネアやキットを試して、特性や変化などを掘り下げて解説しています。

    そんなわけで今回は、実際に試したものの構成の都合により掲載に至らなかった楽器や、以前試して印象に残っていたものの、タイミングが合わずあらためて試せなかったGretschの楽器を、デジマートで探して紹介してみたいと思います。

    まずはGretschのスネアの中でも最も手頃な価格帯ながら、使いでのある1台です。

    今月の逸品 ① 【BH-5510-BK

    Black Hawk Mighty Mini Snare として、口径違いの10”と12”の2種類がラインナップされているうちの、10”のモデルです。以前の♯21 〜小口径シグネチャー・スネア・ドラム〜(こちら)でも紹介した口径ですが、あちらと比較した場合、執筆時点の実勢価格で1/6から1/8と、驚くべき価格です。口径通りにチューニングしてセットに加え、プレイの幅を広げるのはもちろん、パーカッション・キットに組み込むスネアとしても面白いでしょう。

    また、低価格である点を逆手にとって、思い切った使い方を試してみるのも良いかもしれません。具体的には、限界を超えたロー・ピッチにして、思い切ったミュートを施し、ハンド・クラップ系のサウンド指向した、それ専用の楽器としてしまう、といったものが考えられます。昨今、ハンド・クラップ・サウンドを再現した重ねシンバルが各社から発売されていますが、シンバルを2〜3枚用いることから、どうしてもそれなりに高価になってしまいます。

    このミニ・スネアはそういった楽器と比べても安価ですし、チューニングの幅も存在します。嵩張ったり、ヘッドを筆頭に消耗する部位があったり、PAとの連携に関して意思疎通のための一声の配慮が要るなど、単なる置き換えにはなりませんが、スネア・ドラムとしての真っ当なポテンシャルの引き出し方にこだわらなければ、さらに世界は広がるかもしれません。

    続いて、比較的高価な部類の中から、もう1台をご紹介いたします。

    今月の逸品 ② 【G4164SA

    USA Snare Drumのカテゴリーで、3mm厚のアルミニウム・シェルを採用した、Solid Aluminiumモデルです。ソリッドの名称が示すものに加え、両端のレインフォースメント部分は5mm厚ですから、おそらく、厚めに鋳造した筒状のものを削り出してシェルに仕立てていると思われます。

    3mmアルミニウムは、複数のメーカーから発売されており、一定の人気がある仕様の1つで、アルミ特有のドライさと、くっきりとした輪郭のあるアタックが特徴的です。アルミ・シェルは1mm程度でも成立するので、3mmはかなり厚みがあると言えます。ウッド・シェルの場合、4〜5mm程度が最薄クラスなので、その3倍としてみると12〜15mm厚に相当する、と言い換えると、わかりやすい方もいるかもしれません。

    コントロールが容易で、扱いやすい鳴り方をしてくれるので、COBやベル・ブラスが派手すぎると感じる一方、ウッドとは異なる質感が欲しい、といった場合に重宝すると思われます。メタルとウッドの中間のような要素もあるので、普段使いにも良いでしょう。高価な楽器であり、為替や物価高の影響もあるためか、在庫は豊富とは言えません。

    品番に注目してみると、G4164は同じサイズのCOBシェルを用いたスネア・ドラムなので、SAはソリッド・アルミを示す記号と見られます。末尾無印はCOBで、SAはソリッド・アルミ。6.5”の10ラグは4164で、5”の浅胴8ラグは4160ということで、4164については、今回紹介したモデル以外にも、HBやPB、SSにBCなど、多数のバリエーションが存在しています。

    G4164SAが見当たらない場合、Gretschブランドで絞った上、G4160SAや、G4164などで検索すると、姉妹機や兄弟機のようなものが見つかるかもしれません。

    冒頭でもお知らせした、『That Great GRETSCH DRUMS』では、今回ピックアップした2機種以外を多数取り上げています。本連載と合わせて、何卒よろしくお願いいたします。


    Profile
    ヤマモトタクヤ●1987年生まれ。12歳でドラムに出会い、高校時代よりプレイヤーとして音楽活動を開始。卒業と同時に入学したヤマハ音楽院にて、さまざまなジャンルに触れ、演奏活動の中心をジャズとクラブ・ミュージックに据え、2013年、bohemianvoodooに加入。 音楽と楽器の知識・スキルを生かして、ドラム・チューナーとしてレコーディングをサポートしたり、インタビュー記事や論説などの執筆業を行うなど、音楽全般への貢献を使命として活動中。

    Twitter:https://twitter.com/takuya_yamamoto

    【Back Number】

    過去のバックナンバーはこちらから