今月の逸品 ① 【DW Design Series Mini-Pro】

1つ目は、DWのDesign Series Mini-Proです。

タムとフロア・タムはそれぞれ10インチ、13インチということで、このジャンルの定番サイズですが、スネアは12インチと、少々小さめのものが採用されています。セットされるスネアのサイズは10インチから14インチまで幅広く、さまざまな意見があると思いますが、このキットは楽器同士の音色の繋がりと音量のバランスが優れており、自然なピッチ感とボリュームのスネアは、重要なファクターです。口径を小さくしてピッチを上げ、失われる音量は口径に対して多めのラグによる質量と剛性で補うという手法ですね。

ワイヤー・ブラシや、クロス・スティックを使用する場合など、演奏性の観点では、もう少し口径が大きい方が扱いやすいかもしれませんが、現代では、ドラム・セットの前にマイ・スネアを購入するケースが多数だと思うので、セットにフィットしたサウンドの小口径スネアが付属することは、手持ちの楽器とキャラクターが被る可能性の低さもあって、むしろ好都合ではないでしょうか。ミドル・クラスのしっかりした造りで、DWらしくのびのびとダイナミックに鳴ってくれるので、普段は22インチをメインにしている方でも、比較的快適に演奏できるのではないかと思います。

上級モデルのデザインそのままギュッと小さくしたような、第一世代のモデルも優れた製品でしたが、Design Seriesになったタイミングでタムのラグがセパレートになり、バス・ドラム・スパーはフロア・タムとの連続性が意識されたシンプルなタイプが採用され、適切な仕様変更が行われています。リフトアップした深めのバス・ドラムならではのサウンドを軸とした、高い次元のチューニングが施さたキットとして生まれ変わったと言えるでしょう。

Design Series Mini-Pro Specification
●シェル：メイプル
●サイズ：16″×14″BD、10″×6″TT、13″×9″TT、12″×5″SD
●フィニッシュ：Black Satin／Tobacco Burst
●フープ：Standard Triple Flange Hoops

国内代理店：モリダイラ楽器（HP）

今月の逸品 ② 【Gretsch Brooklyn Micro Kit】

2つ目は、GretschのBrooklyn Micro Kitです。

16インチのバス・ドラムは深さが14インチに設定されることが多いのですが、このキットは12インチであることが大きなポイントです。浅めのシェルは、ナチュラルなバス・ドラム・サウンドを志向する場合に有利です。また、レッグとライザーの仕様のおかげで、無改造でリフトアップと直置きが選択可能で、サウンド・メイクの幅が広い仕様になっています。

スネアは13インチが採用されていますが、やや少なめの6ラグ仕様で、トータルのバランスが考慮された絶妙な組み合わせです。タムのブラケットがシェルに直づけになっているのも見逃せません。90年代以降主流になった、サスペンション機構が組み込まれたタム・マウントは、豊かな音の伸びを引き出す一方、アタックがマイルドになるという作用もあるため、必要に応じた選択をすべき部分です。実際に触るとすぐにわかると思いますが、このキットは間違いなく直づけがベストで、音楽と共に歩んできた老舗の底力が感じられます。

Brooklynは完全にプロ仕様のシリーズですが、シェル・パックという流通形態のおかげか、大幅に割引されているようで、USA Customや Broadkasterで同じサイズを注文しようとした場合に比べて、お買い得感があるのもうれしいポイントです。

現場での体感として、環境や状況などの制限から選択された結果としての小口径という結論から、多様化する音楽からのニーズに応じたそれとして、ジャズの文脈以外でも18インチや16インチのバス・ドラムが求められる機会が増えてきています。取り組んでいる音楽によっては、すぐに使用できるとは限らないかもしれませんが、口径の違いはチューニングでは埋められない絶対的な差があり、タムのサイズ選びに対する知識の蓄積にもつながるはずです。

少しでも気になった方は、この機会にぜひチェックしてみてください。

Brooklyn Micro Kit Specification
●シェル：メイプル／ポプラ6プライ
●サイズ：16″×12″BD、10″×7″TT、13″×12″FT、13″×4.5″SD
●フィニッシュ：White Marine Pearl／Satin Grey
●フープ：302ダブルフランジフープ
※Single Tom Holder & Tom Base付属

国内代理店：キョーリツコーポレーション（HP）

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