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    アコースティックエンジニアリングが手がけた“ドラムが叩ける”プライベート・スタジオ Archive #13[埼玉県 靏見さん宅]

    • Photo:Masao Sekigawa/Text:Isao Nishimoto

    レコーディング・スタジオ、リハーサル・スタジオ、ライヴ・ハウスなどの防音/音響工事を行う建築設計事務所、アコースティックエンジニアリングが一般住宅に施工したドラム用防音室を紹介している当連載。今回は、埼玉県に住む靏見さんの自宅スタジオを訪問した。この連載で紹介しているスタジオの中ではかなりコンパクトな部類に入るが、実はいくつものこだわりが詰まった部屋だった。

    床から天井まで黒で統一して
    ルーク・ホランドのような動画を撮影

    普段は会社員として働く傍ら、仕事が休みの時間を使ってV系バンドのドラム・サポートなどを行っているという靏見さん。以前はリハーサル・スタジオの近くに住んでいたこともあるそうだが、「自分専用のスタジオを持ちたい」という願いが徐々に膨らんでいったという。

    「叩きたいタイミングで予約が取れなかったり、仕事で遅くなってから機材を持ってスタジオに行ったりするのがだんだん億劫になってきて、自分の家に防音室があった方がいいなと2~3年くらい前から考えるようになりました」

    そんな靏見さんの現在の住まいは、昨年夏に完成した木造の一軒家。スタジオ作りをアコースティックエンジニアリングに依頼したのは、ドラムの師匠からの推薦が大きかったそうだ。

    「GrooVVthドラムスクールという教室をやっている大野達哉さんが僕のドラムの師匠で、アコースティックエンジニアリングが良いよと薦めてくださったんです。あとはドラム・マガジンの記事や、いろいろなプロ・ドラマーの演奏動画とかも見たりして、やっぱり間違いないかなというところで選ばせていただきました」

    ▲靏見さんの「ドラムを叩けるだけの広さにプラス・アルファ」という言葉どおりのコンパクトなスタジオ。壁は全面に吸音パネルが貼られたデッド寄りの部屋だが、しっかり整えられたルーム・アコースティックのおかげで、音が詰まったように聴こえることがなく、“耳から感じる圧迫感”は驚くほど少ない。これはアコースティックエンジニアリングが作るスタジオの大きな特徴でもある。

    部屋の広さは約5.2畳。「ドラムを叩けるだけの広さにプラス・アルファくらいで考えていました」という、必要最小限の空間だ。特に印象的なのが、壁/床/天井まで黒で統一された内装。逆にスタジオ以外の居住スペースは白を基調としており、正反対の雰囲気になっている。

    「もともと白が好きで、家全体は白をメインにしているので、スタジオはメリハリをつけたいと思って黒にしました。2019年からYouTubeに動画を上げているんですけど、背景を黒く沈ませて、ドラムと自分だけに光が当たっているような動画を撮りたかったのも理由の1つです。ルーク・ホランドみたいな感じですね」

    その成果は、“@つるにき”というアカウントでYouTubeにアップしている最近の動画で観ることができる。リハーサル・スタジオを借りて撮影していた以前の動画と違い、漆黒の空間をバックにプレイする様子は、「部屋があまり広くないので、ちょっとでも広く見えるようにしたいという気持ちも少しありました」という意図にも叶う仕上がりだ。

    ▲床は黒いモルタル調のビニール・タイルにカーペットを置いて使用。ドラム・セットの横に置かれたパソコンとPCラックも黒、壁のエアコンと照明用スイッチも黒……と、徹底したこだわりで統一。

    スタジオの周りを部屋で
    囲み外への音漏れを最小限に

    ルーム・アコースティックは、靏見さんの希望でデッド寄りの響きに調整されている。床は住宅の防音室で一般的な乾式床だが、石膏ボードの層を通常の倍にすることで質量を上げ、乾式床の特徴であるふくよかな低音域と、湿式床(コンクリート)のタイトさを併せ持つ響きを実現した。

    「自分の音がデッドな感じでしっかり聴こえて、でも硬くなりすぎないライヴ感もある。ちょうど良い響きで満足しています」

    ▲出入り口は木製防音ドア×2枚。床を下げて天井高を確保している。
    ▲外への遮音層として機能するストレージ・スペースは、他の居住スペースと同じく真っ白な空間。左上に見える窓は特に防音されていないが、問題なし。
    ▲天井にも厚い吸音層を設けて響きをコントロール。ダウン・ライト(写真右)を消して、スポット・ライト(中央)だけにすると、黒い内装がより映える
    ▲ ドラム・セットはスタジオの完成に合わせて入手したTAMAStarclassic Performer Green Grove Aurora Finishes。シンバルはプレイテック、フット・ペダルはDW-9000だ。
    ▲YouTube撮影時の収音はYamaha EAD10で行っている。そのバランスのとれたサウンドは、ぜひ動画で確かめていただきたい。

    そして、もう1つこだわったところが遮音性能。スタジオが直接屋外に接する面をできるだけ少なくして、外への音漏れを最小限に抑えている。

    「夜中でも叩ける環境を作りたかったので、スタジオのドアの外にはストレージ・スペースを設けて、反対側も部屋を挟む形にしています。仕事で夜遅く帰ってきて、『10分くらいドラム叩こうかな』っていうのが普通にできるのでありがたいです」

    このように、“短時間でも叩ける”というのは自宅スタジオならではの大きな魅力。靏見さんもそれを存分に満喫している。

    「お風呂を沸かしている間にちょっと叩く、みたいなこともよくあります。リハスタと違って自分の機材をセットしたままでいいので、すごく楽ですね」

    ▲スタジオの周りを部屋や廊下で囲み、遮音性能を最大化した間取り。南側には大きい道路があり、交通量も比較的多いため、夜遅くでも安心して音を出せるという。スタジオの壁が斜めになっているのは、室内の寸法比を整えて不要な定在波の発生を抑えるため。

    取材の最後に「スタジオを作って本当に良かったです」と満足そうな笑顔で話してくれた靏見さん。現在はドラムの練習や先述の動画撮影などに活用しているが、さらなる計画もあるという。

    「将来的にはここでレッスンをしたり、スタジオ自体を貸し出すことも考えています。そのために防犯カメラ用の配線も通してあるんですけど、部屋が真っ黒なのでちゃんと映るのかな?なんて思ったりして(笑)。とにかく、このスタジオで自分の夢が1つ叶いました。アコースティックエンジニアリングさんには感謝の気持ちでいっぱいです」

    Profile:中学生の頃、ゲームセンターの『太鼓の達人』に熱中し、「それを見た父親から“お前、ドラムできるんじゃない?”と言われてやってみたらハマったんです」。音楽はもともとパンク系が好きだったが、ドラムを始めてからはアングラやドリーム・シアターなどテクニカル系へ移行。「日本人ドラマーでは、FUYUさんのグルーヴ感や、SHiNさんの派手な叩き方がめちゃめちゃ好きです」(靏見さん)。
    YouTubeチャンネル⇨www.youtube.com/@つるにき

    ※本記事は2026年4月号掲載の記事を転載したものになります。

    アコースティック
    エンジニアリングとは?

    株式会社アコースティックエンジニアリングは、音楽家・音楽制作者のための防音・音響設計コンサルティングおよび防音工事を行う建築設計事務所。1978年に創業して以来、一貫して「For Your Better Music Life」という理念のもと、音楽家および音楽を愛する人達へより良い音響空間を共に創り続け、携わった物件の数は2,000件を超えている。現在も時代の要請に答えながら、コスト・パフォーマンスとデザイン性に優れ、「遮音性能」、「室内音響」、「空調設備」、「電源環境」、「居住性」というスタジオの性能を兼ね備えた、新しいスタイルのスタジオを提案し続けている。

    株式会社アコースティックエンジニアリング
    【問い合わせ】
    TEL:03-3239-1871
    Mail:info@acoustic-eng.co.jp
    住所:東京都千代田区九段北2-3-6九段北二丁目ビル
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