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  • SPECIAL

    UP

    音楽制作プロダクション兼レーベルが立ち上げたリハスタ〜鯖街道スタジオ〜

    • 取材&文&撮影:西本 勲

    自分達の思いを全部詰め込むのではなく
    お客さんと共に作っていくスタジオでありたい

    音の響きも、経験豊かなミュージシャンを納得させるクオリティ。楽器やアンプの豊かな鳴りを引き出しつつ、大音量でも各パートの音がクリアに聴き取れるのはもちろんのこと、このスタジオの真価は小さな音で演奏したときにも発揮されるという。

    DH「僕は長年バンドを続けているんですけど、リハスタに入るときは、必ず小さい音で演奏する時間帯を作るんです。スタジオって爆音で鳴らすのが快感ではあるけど、音を小さくすることで自分の粗さがわかって、また爆音に戻ったときに違いが出る。ただただデッドなスタジオだと、小さい音で演奏すると傷つくばかりですけど(笑)、ここは音楽の温かさがちゃんと残った上で、いろいろなことに気づかせてくれるんです。そういうことをやりやすいスタジオというのは大事だと思いますね」

    壁の吸音パネルを上下に分けるストライプのような部分は、
    木のブロックを凸凹に組み合わせて反射音を拡散し、定在波を抑える役割を果たす。
    大きな鏡の隣にも同様の処理が施されている。
    高めの天井も特徴の1つ。このような複雑なデザインも音の響きに好影響を与えている。

    そんな鳴りの良いスタジオに置かれたドラム・セットは、カノウプスのYAIBA II(シンバルはROOM1と2で異なる)。先述のbranch studioによって選定され、最終決定した半林氏も「新品の状態から良い音で鳴っている」と太鼓判を押す。ドラマーが良い音で快適に練習できるかどうかは、スタジオに依存する部分が他のパート以上に大きい。その点、ここは間違いなくドラマーの期待に応えてくれるスタジオだ。

    DH「今回、ドラム・マガジンさんに取材に来ていただいたのがそもそもうれしいんです(笑)。ドラムはめちゃくちゃ大事ですから。ドラマーが良かったら、バンドは絶対に良くなります。逆に、ドラムが下手だとバンド全員が下手クソに聴こえる。だから、良いドラマーがたくさん育ってほしいんです。ドラムに興味を持って、家で雑誌とかを叩いて、初めてリハスタで本物のドラムを叩いたときの興奮ってあるじゃないですか。その気持ちをたくさんの人に感じてほしい。最初は個人練習でもいいんです。そのうち、やっぱりギターが欲しい、ベースも欲しいというところからバンドになって、今度はもっと大きな場所で演奏してみたい……そうなっていくのがいいですね」

    ROOM 1に常設されたカノウプスYAIBA IIのGroove Kit(バーチ・シェル/22″×18″BD、10″×8″TT、12″×8″TT、16″×16″FT)。
    フィニッシュはアンティーク・ナチュラル・マット・ラッカー。
    スネアもYAIBA II(バーチ)の14″×6.5″で、こちらはアンティーク・ブラウン・マット・ラッカー。
    シンバルはジルジャンAカスタムで、14″ HiHats、16″ Crash、18″ Crash、20″ Rideという構成。
    ROOM 2も同じくカノウプスYAIBA IIのGroove Kitを常設。
    サイズは同じだが色違いのアンティーク・ブラウン・マット・ラッカーになっている。
    スネアは同フィニッシュのYAIBA II(バーチ)14″×5.5″。
    シンバルはセイビアンXSRで、構成は14″ Hats、16″ Fast Crash、18″ Fast Crash、20″ Ride。
    フット・ペダルは両セットともDWの6000AX。
    自身もドラムを叩くという半林氏のセレクトだ。

    鯖街道スタジオのもう1つの特徴は、コントロール・ルームが備えられ、本格的なレコーディングなどの用途も見据えた作りになっていること。映像収録やライヴ配信といった、今ならではの使い方も想定しているそうだ。

    DH「高画質/高音質の配信も、このスタジオからできるようになっています。自分の音楽を世界中の人が見てくれるかもしれないというのは、僕らの時代にはなかったこと(笑)。このあたりは今の若者のやり方に合わせて、キラキラしているバンドをこのスタジオから生みたいです。そのためにどんな設備や環境が必要か、お客さんの希望を聞きながら一緒に成長していこうと考えています。最初から自分達の思いを全部詰め込んで“ハイ、完璧なスタジオができました”というのではなく、8割くらいの完成度でスタートしているつもり。あとの2割は、若いバンドマンと共に作っていけたらなと思っています」

    スタジオに併設されたコントロール・ルーム。
    取材時は最小限の機材が置かれていたが、
    モニターに適した響きのチューニングが施され、
    将来さまざまな用途で使える環境が整っている。
    ROOM 1と2に用意された、コントロール・ルームにつながる入出力端子。
    ロビーからスタジオへ通じる前室でもレコーディングなどができるように、
    入出力端子とコンセントが用意されている。

    オーナーの思いと利用者の思いが合わさって、新しいリハスタの未来像が育っていく。そんなことを期待させる鯖街道スタジオのこれからが楽しみでならない。目の前には大きな駐車場もあり、車で来るのも便利だ。少し遠くからでも足を運んで利用する価値は十分あるスタジオだと言えるだろう。

    Infomation】
    鯖街道スタジオ
    営業時間:平日 13:00-23:00 土・日・祝 11:00-23:00 不定休
    〒574-0046 大阪府大東市赤井1-15-21住道グランドビル 1F
    JR片町線(学研都市線)住道駅 徒歩8分
    TEL:070-1364-1921
    WEBからの予約
    公式HP