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    音楽制作プロダクション兼レーベルが立ち上げたリハスタ〜鯖街道スタジオ〜

    • 取材&文&撮影:西本 勲

    動画撮影やライブ配信も見据えた、音の良いリハスタが大阪・住道にオープン!

    「若いバンドマンをサポートしたい」そんな熱い思いから、大阪府大東市に新しいリハーサル・スタジオが6月にオープンした。その名は鯖街道スタジオ。良い音で快適に練習できるのはもちろん、レコーディング、映像収録、ライブ配信なども視野に入れた作りで、在阪ミュージシャンにとってはうれしいニュースと言えるだろう。さっそくスタジオの様子をレポートしていこう。

    ボールで遊べる公園が野球少年を育てるように
    リハスタを作ってバンドを増やしたい

    大阪と京都を結ぶルートの1つであるJR学研都市線・住道駅から北へ徒歩8分。スタイリッシュな外観が目立つビルの1階に鯖街道スタジオがある。一度聞けば覚えてしまうこの名前は、スタジオを運営する音楽制作プロダクション兼レーベル、鯖街道レコーズに由来する。では、どうしてリハスタを作ったのか? まずはそんな疑問を、自身もミュージシャンであるオーナーのDOCTOR-HASEGAWA(ドクターハセガワ/以下DH)にぶつけてみた。

    DH「もともと鯖街道レコーズは、音楽好きでバンド経験もある3人のメンバーが、それぞれに仕事を持ちながら“何か一緒にやろうぜ”ということで始まったものです。CDを作ったりライヴをしたり、グッズを販売したりといろいろなことをやっているんですけど(プロフィール欄参照)、リハスタを作った理由を野球の例で話すと、若者や子供の野球人口って昔に比べて減っていますよね? その原因は少子化だけじゃなくて、ボール遊びができる原っぱがなくなったとか、公園でボールを使ってはいけないとか、そういうことが大きいと思うんです。音楽も同じで、リハスタがないとバンドは増えないじゃないですか。世の中ではヒップホップとかクラブが盛り上がる一方で、ロックのお客さんは減っているにもかかわらず、フェスには何万人もの人が集まっている。だったら、演奏する側のレベルは絶対に下げてはいけないですよね。ちょっと生意気なことを言いましたが、やっぱり野球ができる公園のように、リハスタはどの街にも1つは必要だと思う。“バンドやろうぜ!”っていう若者を増やしていきたい……そんな気持ちが、スタジオを作る発端でした」

    Profile●DOCTOR-HASEGAWA(ドクターハセガワ):スタジオの運営母体である鯖街道レコーズの主宰。学生時代から音楽活動を始め、バンドやDJで各地のライヴ・ハウスやFUJI ROCK FESTIVALなどの大型フェスに出演。現在はルード・ロック・バンドBANYAROZ(バンヤローズ)にトランペット&サックスで参加。さらに京都でバーや飲食店を複数経営するなどマルチに活動中。ちなみに鯖街道(さばかいどう)の名前は、日本海の豊かな海産物を京都へ運ぶ街道に由来する。「いろんな良いものが我々のところに集まるといいな、という願いを込めて名づけました」。

    そんな鯖街道スタジオは6月にオープンしたばかり。知人が所有するビルのテナントに空きができたことから、スタジオ作りの話が進んだという。

    DH「リハスタを作りたいというのはずっと前から言っていたので、どこかで作っていたと思いますが、その時期が早まったのはここが空いたから。もちろん、近くにスタジオがないということも調べた上で決めました」

    スタジオがあるビルの1階には専用のエントランスが設けられ、スタジオ名のロゴ・マークがデザインされたエントランス・ホールが広がる。そこを進むと2階へ通じる吹き抜けの空間があり、プロ向けのちょっとお洒落なスタジオのような雰囲気が漂っている。

    ビルの玄関を入ると、“鯖街道スタジオ”のロゴ・マークと、
    ツリーワークスの小さなウインド・チャイムが出迎えてくれる。
    エントランス・ホールの奥は、
    大きな窓からたっぷり陽射しが入る明るい空間。
    2階は休憩スペースとして使われ、
    今後の利用方法を調整中だという。
    これが実現すれば、“2階に○○○があるリハスタ”として注目されることは間違いない。

    スタジオはROOM 1とROOM 2の2部屋で、どちらも約12畳。室内の随所に木を使った明るめの内装が特徴的で、足を踏み入れた瞬間からクリエイティヴな気分にさせられる。設計/施工を手がけたのはアコースティックエンジニアリングで、DOCTOR-HASEGAWA曰く「後で知ったことなのですが、アコースティックさんは僕がすごく仲良くしている、韻シストのチームとも接点があって」とのこと。さらに、鯖街道レコーズのメンバーでスタジオの運営にも関わる半林義充氏が説明を続けてくれた。

    半林「昔からサウンド&レコーディング・マガジンで、いろいろなアーティストさんのプライベート・スタジオの記事をよく見ていたんです。それで“大阪の小さなリハスタは難しいかなと思いつつ、ダメ元でオファーしたら、快諾していただきました。そしたら僕たちがリスペクトする韻シストさんのTAKUg)さんのスタジオもアコースティックエンジニアリングさんの設計とお聞きしまして。機材はbranch studioさん(アコースティックエンジニアリングが設計した、大阪・南森町のレコーディング・スタジオ)に選定していただいたのですが、branchさんも韻シストさんと縁深いスタジオだとうかがってますので、とても光栄に思っています」

    ROOM 1全景。数人編成の一般的なバンドが余裕でリハーサルできる広さだ。
    こちらはROOM 2。建物の構造の都合で形はわずかに違うが、
    広さと作りはROOM 1とほぼ同じ。常設機材も同じものを揃えている。

    先ほど触れた内装のデザインは、以前から温めていたイメージと、アコースティックエンジニアリングが提案する方向性が一致して生まれたという。

    半林「アコースティックさんが作るスタジオの特徴でもあると思いますが、我々もタバコ臭くて黒っぽい無機質なスタジオにはしたくなくて、ウッディな感じが良いねというのはありました。エントランスなどのテーマ・カラーを藍色にするのも、アコースティックさんに提案していただきました。“鯖”のイメージですね」

    Next➡クリアな響きのスタジオに良い音のドラムを常設