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長谷川浩二のドラミングを超至近距離で体感|新コースも加わった「Drumming Immersive Vol.2」【Report】
- Text:Atsuki Sano/Photo:Akito Takegawa
10月3日、東京・御茶ノ水のRITTOR BASEで開催された「Drumming Immersive feat. 長谷川浩二 Vol.2」。今年5月の初開催に続く第2弾では、新たなプログラムも加わり、さらに充実した内容に。長谷川浩二ならではのパワフルかつ繊細なドラミング、そして参加者との濃密な交流が繰り広げられた特別な1日をレポートする。
プロ・ドラマーの愛器を自ら叩き、本人の演奏をドラム・セットの真後ろから体感する。そんな異色のコンセプトを掲げ、今年5月に初開催された「Drumming Immersive feat. 長谷川浩二」。好評を受けて、その第二弾が10月3日に開催された(こちら)。
今回も主役となるドラマーは、もちろん長谷川浩二。THE ALFEEや筋肉少女帯をはじめ、数々のアーティストのステージを支えてきた日本屈指のドラマーだ。彼の代名詞とも言える26”のツーバス・キットを参加者が実際に演奏できる“体験コース”、その真後ろから長谷川のプレイを目撃する“イマーシヴ観覧コース”という前回からのプログラムに加え、今回は新たに、長谷川と10分間マンツーマンで交流できる“プレミアム・コース”が設けられた。

憧れのドラマーと同じ楽器に触れ、その技術を間近で観察するだけでなく、質問やリクエストにも直接応えてもらえる。そんな参加者と長谷川の距離の近さが、本イベント最大の魅力だろう。今回も、実践的なアドバイスから長年のキャリアを振り返る貴重なエピソード、そして圧巻のドラム・ソロまで、ドラマーにとって刺激的な時間が繰り広げられた。
マンツーマンで伝授する
長谷川流ドラミングの極意!
新設のプレミアム・コース

第1部として行われたのは、今回新たに設けられた“プレミアム・コース”。実はこの企画、第1回終了後に、人前で演奏する参加者の緊張を気遣った長谷川からの提案で実現したプラン。1人あたり10分間、長谷川の愛器を演奏したり、奏法について質問したり、リクエストしたフレーズを実演してもらったりと、その内容は参加者によってさまざま。長谷川もひとりひとりの希望に応じ、惜しみなく技術や経験を伝えていった。
例えば、自身の演奏がハシりがちで、グルーヴが安定しないという悩みを相談した参加者には、まず実際にプレイしてもらい、さまざまな角度からチェック。その上で問題点を探っていく。この参加者に長谷川が指摘したのは、ハイハットに意識が向きすぎているということ。リズムの重心をキックとスネア、とりわけスネアに置き、右手のハイハットはそこに添えるような感覚で演奏することを勧めた。
さらに、クリックを使ってシンプルなビートから練習することや、手足のストロークを押し込むのではなく、鞭のようにしならせるイメージで叩くことなど、具体的な練習方法も実演を交えて紹介。シンプルな内容ながら、長谷川が長年培ってきたグルーヴの捉え方が凝縮されたアドバイスだった。

別の参加者はツーバスのフット・ワークについて質問。長谷川は高速でバス・ドラムを踏む際の動きを「タップ・ダンスのイメージ」と説明しながら、自らの足の使い方を見せていく。ただし、特定の動きをそのまま模倣することが正解とは限らないという。むしろ重要なのは、まず耳で音を聴き、その音を再現しようとすること。目指すサウンドを明確にイメージすれば、それに合わせて身体も自然に動こうとするという考え方を語った。
もちろん、わずか10分間ですべての課題が解消されるわけではない。しかし、演奏を直接見てもらうことで、自分では気づかなかった弱点が明らかになり、さらに克服するための練習方法まで教わることができる。参加者にとっては、今後のドラミングを変えるきっかけにもなり得る、貴重な時間となったに違いない。
その一方、技術的な指導の合間には、愛用機材にまつわる話題や、長谷川の過去の活動に関する質問も飛び出すなど、終始和やかな雰囲気。10分という時間の短さを長谷川自身が惜しむ場面も多々あり、マンツーマンだからこその親密な交流が印象的なプログラムとなった。
憧れの26インチ・ツーバスに挑戦!
長谷川本人から直接アドバイスも

続く第2部は、“体験コース”からスタート。長谷川の26”ツーバス・キットに参加者が実際に座り、演奏できるという、前回から引き継がれた目玉プログラムだ。今回は第一弾の経験を踏まえ、参加者が事前に30秒程度のフレーズを準備する方式を採用。独特のセッティングを前に戸惑ってしまうことも少なくないため、あらかじめ演奏内容を決めておくことで、限られた時間をより有意義に使えるようにしたという。
登場した5名の参加者は、それぞれ思い思いのフレーズを披露。トレードマークである26”のバス・ドラムをはじめ、大きく傾斜したスネアなど、長谷川独自のセッティングに苦戦しながらも、憧れの楽器を自ら鳴らす体験を楽しんだ。
もちろん、ここでも長谷川によるアドバイスが随所に飛び出した。THE ALFEEの「ジェネレーション・ダイナマイト」などを演奏するとテンポがハシってしまうという参加者には、プレミアム・コースでも語られたスネアを中心にリズムを捉える方法を紹介。また、演奏時の姿勢について相談した参加者には、肩や首が前に出てしまう癖を指摘し、自然な姿勢を保つことの重要性を説いた。

いずれも特別な超絶技巧ではなく、リズムの感じ方や身体の使い方といった基礎的な部分に踏み込んだ内容。長谷川のヘヴィでパワフルなドラミングが、こうした細やかな意識の積み重ねによって支えられていることをうかがわせる。
また、参加者からはTHE ALFEEのライヴ・アルバム『LIVE IN PROGRESS』に収録された「殉愛」のイントロにまつわるリクエストも。長谷川が当時のフレーズを思い出しながら実演し、それを参加者が自身の演奏に取り入れようとするなど、ファンにとってたまらないやり取りも繰り広げられた。
演奏後には長谷川との記念撮影も行われ、憧れのセットに座ってプレイするという特別な体験は、かけがえのない思い出になったことだろう。
THE ALFEEの名曲をドラムで演奏!
楽曲を支えるアレンジの秘密も明らかに

続いては、長谷川の演奏をドラム・セットの真後ろから目撃できる“イマーシヴ観覧コース”。通常のライヴでは決して見ることのできない角度から、長谷川の手足の動きやドラミングの細部を観察できることに加え、参加者が演奏してほしいフレーズを直接リクエストできるという、ファンには夢のようなプログラムだ。
寄せられたリクエストも、THE ALFEEの「鋼鉄の巨人」、「星空のディスタンス」、「孤独の美学」といった楽曲から、過去のライヴで披露されたフレーズまで実に多彩。長谷川も時には「どんなフレーズだったっけ?」と記憶を辿りながら、ひとつひとつのリクエストに応えていった。
中でも興味深かったのは、THE ALFEEの楽曲におけるドラム・アレンジについての質問だ。ドラム・パートのアレンジを任されることもあったという話題を受け、長谷川は、楽曲の基本となるビートやツーバスのパターンは作曲段階でおおむね決まっているものの、そこから先の細かなアレンジは自分で考えることが多かったと説明。その実例として挙げられたのが「幻夜祭」だ。バンド全体で繰り返される基本的なフレーズに対し、ドラムだけが6連符を交えたフレージングを加えるという、自身のアイディアを実演しながら解説した。

さらに、レコーディングとライヴで演奏内容を変えることもあるという。録音ではミキシングによって細かなフィルの音量を調整できるが、ライヴでは必ずしもそうはいかない。細かい音符を詰め込んだ結果、フィルの音量が下がってしまうのであれば、あえて音数を減らし、楽曲のフックとして力強く響くフレーズに変更することもあるそうだ。
単に難しいフレーズを正確に再現するのではなく、楽曲をより魅力的に聴かせるために何を演奏するべきか。長年にわたり第一線で活躍してきた長谷川の、セッション・ドラマーとしての音楽的な判断を垣間見ることができた。
こうした貴重な話が飛び出す一方で、参加者のリクエストに対して「もう覚えていない」と笑いながら応じたり、思い出したフレーズをその場で実演したりと、長谷川らしい飾らないキャラクターも随所に発揮。和気あいあいとしたやり取りの中で、プロの技術と経験を間近に感じられることこそ、このイベントの醍醐味と言えそうだ。
圧倒的なパワーとスピード
そして美しいトーン!
2度に渡る渾身のドラム・ソロ

イマーシヴ観覧コースの終盤には、参加者からドラム・ソロのリクエストも寄せられた。リクエストされたのは、長谷川が米川英之、永井敏己と共に活動するTHE ARAKUREのライヴで披露しているドラム・ソロ。スネアを起点に、タムやシンバル、ツーバスへと次々にフレーズを展開していく。
とりわけ強烈なのは、その一打一打が放つ鮮烈なトーンと、まるで巨大な機関車が疾走するかのようなヘヴィな迫力だ。めまぐるしく展開するフレーズの中でも音の輪郭は明瞭で、手足が繰り出すコンビネーションが次々と耳に飛び込んでくる。その圧巻のパフォーマンスには、途中、黄色い歓声が上がる場面もあった。
これだけでも十分なクライマックスと言えるが、イベントの締め括りには、さらにドラム・ソロが用意されていた。司会者から連続してのソロ演奏をお願いするのはたいへん心苦しいと恐縮しながらのリクエスト。それでも長谷川は、再び愛器へと向き合い、この日のフィナーレを飾る渾身のソロを披露した。

こちらもスネアからスタートし、クロス・スティッキングなどを織り交ぜながら、セット全体へとフレーズを拡張。先ほどのソロ以上にスピード感とダイナミクスの幅が際立ち、手足のコンビネーションを駆使しながら、縦横無尽に叩きまくる怒涛のパフォーマンスとなった。
そして何より驚かされるのが、これほどの音数と音圧にもかかわらず、1つとして音が潰れることのない、その美しいトーンだ。スネア、タム、シンバル、バス・ドラムのそれぞれが明確な輪郭を保ちながら響き、複雑なフレーズの細部まで鮮やかに聴き取れる。圧倒的なパワーとスピードを備えながら、同時に一音一音の質を徹底して追求する。その演奏は、まさに長谷川浩二というドラマーの真骨頂を示すものだった。
トップ・ドラマーと同じセットを
囲む特別な時間——
進化した「Drumming Immersive」

前回の開催から約5ヵ月。新たなプレミアム・コースの導入によって、さらに充実した内容となった「Drumming Immersive feat. 長谷川浩二 Vol.2」。
憧れのドラム・セットを実際に叩けること、通常のライヴでは見ることのできない角度からトップ・ドラマーの演奏を体感できること。その特別さはもちろんだが、今回あらためて際立っていたのは、長谷川と参加者との距離の近さだった。
ひとりひとりの演奏に真摯に向き合い、技術的なアドバイスを送る一方で、昔の楽曲や当時のエピソードを語り合い、ときには冗談を交えながら笑い合う。長年そのドラミングに魅了されてきたファンと、長谷川本人とが、同じドラム・セットを囲んで交流する姿には、通常のライヴやクリニックとは異なる温かさがあった。
そして最後には、そんな気さくなやり取りから一転、圧倒的な演奏で会場を魅了してみせる。親密な交流と、比類なきドラミング。その両方を間近で味わえることこそが、「Drumming Immersive」というイベントの最大の魅力なのだろう。