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DW Drums 50th Anniversary – Part 1 ジョン・グッドが語るDW革新と進化の歴史
- Interview & Text:Rhythm & Drums Magazine
- Translation:Taka Matsumoto(①)
今年で創業50周年を迎えたDW(Drum Workshop)。カリフォルニア・サンタモニカの小さなドラム・ショップからスタートした同社は、試行錯誤を重ね、現在ではドラムからハードウェアまでを自社で手がけるアメリカを代表するメーカーへと発展を遂げた。ドラム・マガジン2022年10月号ではDWの半世紀に渡る歴史に焦点を当てた特集記事を展開。ドラマガWebでは、その一部を抜粋し、全4回に分けてお届け! まずPart.1は、副社長であるジョン・グッドへのインタビューから。
Part 1:Inside the DW〜ジョン・グッドが語るDW革新と進化の歴史〜
私達の手元を離れてからその楽器を演奏する
ドラマーのことを考えるのが大切なのです
●創立50周年ということで、あらためてDW社設立のきっかけを教えてください。
ジョン Drum Workshop のルーツは、カリフォルニア州サンタモニカの小さな店にさかのぼります。 当時のサンタモニカはベニスとマリブの間にある静かな海辺の町でした。ドン(ロンバルディ)はドラムの先生をしていて、私はドラマーとしてやっていきたいと思っていました。私達は生活費を稼ぐために高さが調整できるキャニスター・スローンを作ることにして、口コミで売っていたのです。それがDWの最初の宣伝です。
その後、ドンがCamcoの金型を買う機会を得て、それをきっかけに私達はフット・ペダルのメーカーになりました。それに修正を加えてできたチェーン・ドライヴ・ペダルは私達のレガシー製品となり、今もなお業界標準となっています。そのペダルには“5000” という名前がついていますが、それはCamco のカタログのモデル・ナンバーがそうだったからなのです。数十年経った現在では、5000 シリーズと9000 シリーズのヘヴィ・デューティなハードウェアのラインナップを取り揃えており、多くのドラマーがレコーディングやライヴで頼りにしてくれています。
●長い歴史の中で、ドラム・メーカーとしてのターニング・ポイントはいくつもあったかと思いますが、その中でも印象深い出来事はなんでしょうか?
ジョン ターニング・ポイントの1つはドラムの製造を始める決断したときです。まだとても小さい会社だったので、私は生活費を稼ぐために(テックとして)ツアーにも出なければなりませんでした。マドンナやジャクソンズ、フランク・ザッパなどのメジャーなツアーに同行していました。そういったツアーを通して、よりドラムが鳴るように、よりチューニングがしやすいように、ドラムを改良する必要があると感じるようになりました。究極のドラム・セットとはどんなものか、そしてそれによって当時では考えられないようなクリエイティヴなインスピレーションをドラマーに与えることができるというヴィジョンが、そのときすでに私の中にはありました。
その当時、私達はすでにペダルとスタンドを作っていましたが、ドラム製造の世界に足を踏み入れるというのは、やはり大きな決断でしたね。競争の激しい世界でしたし、他の会社はやりたいことをやれるだけのリソースを世界中に持っていたわけで。私達もまさかそのレベルで戦えるとは思っていませんでしたが、世界レベルのドラムを作りたいという情熱がそれを可能にしたんだと思います。DW 初のドラム・セットをNAMM Show で披露したときのことは忘れられません。みなさんから興味を持ってもらえたことは本当に良かったです。ただ問題は、それだけ多くの(注文が入った)ドラムをどうやって作るか、でしたね。良い決断をしたと思っています。それが私のその後の40 年を決定づけたわけですから。
●現在はシェルの加工からパーツの組み立てはもちろん、フット・ペダルやハードウェアなども自社工場で手がけている点がDW の特徴だと思います。設計以外を外部に委託するメーカーも増えている中、自社工場を持つメリットはどんな点でしょうか?
ジョン 自社工場を持つということは品質管理にとって常に重要なことですし、それが常に目の前にあることで集中し続けることができます。私達は完成した商品を扱うだけの倉庫ではなく、メーカーなのです。ファクトリー・ツアーで製造工程を見た人達はみんな細部へのこだわりに驚いていますね。私は人生をかけてそのプロセスに磨きをかけ、自分達のものにしてきました。特許を取得した技術もいくつかあり、独自の接着剤なども開発しました。
私は常により良いものを目指し、ハードルを高く設定しています。DW のドラム製造において常に中心にあるのは“ 哲学を確立すること” で、その哲学が土台となっています。私達の手元を離れてからその楽器を演奏することになるドラマーのことを考えることが大切なのです。本当に多くの人達が私達のドラムを叩いてくれて、楽しんでくれていることに誇りを持っています。使ってくれるドラマーだけではなく、DW のドラムを使って作られた音楽を楽しんでくれている人達がいるということが誇りです。カリフォルニア・カスタム・ショップは特別な場所で、そこで働くすべての人が自分のスキルに誇りを持ってDW のドラム作りを実現しています。
●ファクトリー・ツアーの映像を見ると、オートメーション化も含めてそれぞれの工程が確立されているように感じました。そんな中でも、職人の技術や経験はやはり重要なものなのでしょうか?
ジョン 今でも手作業によって行われている工程はたくさんあります。CNC ドリル加工のような、より精度が求められる工程には機械を使っていますが、エッジやフィニッシュ、組み立てなど、多くの工程は自動化していません。ドラムに命を吹き込むのは熱心な職人達のチームなんです。
●半世紀に渡るものづくりにおいて、一貫してこだわってきたことはありますか?
ジョン 革新と進化が私達のテーマです。私達は立ち止まることはありません。製品と製法をより良くすることで人から求められるDW であり続けることができるのです。
●では、次の50 年に向けて考えていることはありますか? また、この先ドラム・シーンはどのように変化していくと考えていますか?
ジョン この先もDW が生み出してきたものが受け継がれていくことが私の願いですね。私が世に出した製品が新しい世代に影響を与え、その世代がまた次の世代に影響を与えていってほしいと思っています。50年というのは祝福すべき節目です。
Part 2 製品から探るDW半世紀の歴史 へ続く(9月29日公開予定)
⇩ DW Drums 50周年記念特集のフル・バージョンは本誌をチェック!
Ⅰ Inside the DW
副社長=ジョン・グッドが語るDW革新と進化の歴史
Ⅱ History of DW Innovations
製品から探る“技術革新”の足跡
Ⅲ We Love DW
愛用ドラマーが語るDWを使う“理由”
チャド・スミス/ジム・ケルトナー/BOBO/Tomonori[Fear, and Loathing in Las Vegas]
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