SPECIAL
大学時代に出来上がった
“発表する、表現する”思考回路
多様な⾳楽のバックグラウンド
●ということは高校時代、ライヴ活動とかも特になく?
ERWIT 中学は⽂化祭でコピー・バンドをちょこっとやりましたけど、⾼校はまったくでしたね。⾳楽を聴くのは好きだったんですけど、⼈前で演奏することがなかなかなくて……。そもそもガンガン活動するようなタイプではなかったんです。
⾼校⽣の頃は邦楽と洋楽を交互に聴いていて、海外だとFall Out Boyみたいなポップ・パンク、国内だとBEAT CRUSADERSみたいな、いわゆるロキノン系と呼ばれていた⾳楽をよく聴いていました。邦楽でも何かしら海外のエッセンスを感じられる⾳楽が好きでしたね。⾼校の終わり頃には ceroとかが注⽬され始めていて、そういうサウンドも探ったりしていました。
Predawnやコトリンゴを聴き始めたのもその時期で、ロック以外の⾳楽を学びながら⼤学へ進学、といった流れですね。
●美術⼤学へと進まれるんですよね。
ERWIT ですね。でも、はじめから芸術系の⼤学に⾏きたかったわけではないんです。⼩さい頃から⽝を飼っていて、⽝図鑑をずっと眺めているくらい⽝が好きだったこともあって、当時はドッグ・トレーナーになるための専⾨学校に⾏きたかったんです。けど、両親に⼤学には⾏ってくれと⽌められて(笑)。得意科⽬なんて家庭科と図画⼯作しかない……みたいな⽣徒だったので、どうしたものかと悩みました。そんなとき、“あそこの⼤学は絵を描いたら⼊学できるらしい”って噂を聞きつけて、芸術系の⼤学に⼊るに⾄ったんです。
●そんな経緯があったのですね(笑)。
ERWIT その⼤学には偶然、サウンド・アートという⾳を使った芸術作品を作るゼミがあって、そこへ⼊りました。環境が変化すると共に⾃分の意識もかなり変わっていきましたね。
サウンド・アート以外にもいろんなことをする⼤学だったので、映画制作をしたり、プログラミングをしたり、ノコギリで⽊を切ったり、絵を描いたり……そうやって出来上がった作品を発表したり、軽⾳サークルではバンドを組んでライヴをする機会も増え、“発表する、表現する”っていう思考回路が⾃分の中でようやく⽣まれてきたんです。
⾼校までは愛知の⽥舎に暮らしていたので、楽器をやっている⼈もほとんどいなかったし、ライヴ・ハウスは観に⾏く場所だと思っていたので、⼤学に⾏ったのは⼤正解でしたね。
●聴く⾳楽も変わりました?
ERWIT だいぶ広がりました。ERWITのMVやアー写を担当してくれている澤平桂志君が同じサークルの先輩で、彼からいろいろな⾳楽を教えてもらいました。桂志君と当時ハマっていたのがAmerican Footballっていう90年代のエモ・バンドで、同時にメンバーのマイク・キンセラがやっているOwenっていうソロ・プロジェクトも聴いていました。その派⽣で、Phoebe Bridgersのようなインディ・ロックやOlafur Arnaldsみたいなポスト・クラシカルも聴き始めて……。
●2⼈でいろいろ新しい⾳楽を⾒つけていったんですね。
ERWIT あの頃はまだサブスクリプションが主流ではなかったので、新しい⾳楽に出会うきっかけは、友⼈との会話、YouTubeの関連、好きなアーティストのインタビュー、レコード・ショップのレビューくらいでしたからね。“最近何聴いてる?”みたいな会話をよくしていましたし、6、7年経った今も相変わらずしてます(笑)。
●当時やっていたバンド・メンバーは⼤学の仲間だったり……?
ERWIT そうですね。あとは中学の同級⽣とか。当時めちゃくちゃハマっていたWiennersや、その前⾝バンドのSchool Youthのような、ショート・チューンでガチャガチャした⾳楽をやりたい!と⾔って声をかけていったんです。今のERWITとはまったく違いました(笑)。
●ERWITさんは、そのときに⾯⽩いと思ったものに猛然と突き進んでいくタイプなんですね。
ERWIT ですね。そのときカッコいいと思ったものを⾃分でもやってみる、とにかく勢い任せでした。⼤学時代はI HATE SMOKE RECORDSに所属するパンク・バンドや国内外のエモ・バンド、他にはLatterman周辺のメロディック・パンクなどを聴き漁っていたので、おのずとパンク⾊が強かったです。でも僕の性格上、落ち着いている⾳楽の⽅が向いているなと感じる瞬間がありまして、いろいろ経由してERWITのスタイルに辿り着きました。
●今回のインタビューは神⾕さんにも同席いただいておりますが、神⾕さんからみて ERWITさんのギターはどうですか?
神⾕ パンクを経由しているということもあって、ピッキングが強いからギターに⾳圧があるんですよ。躊躇とか迷いがないというか。ちゃんと⾳が出ているので⼀発⽬から“おおっ”てなるんです。不器⽤さなのか器⽤さなのかわからないところで説得⼒のある⾳を出すのは独特ですね(笑)。ERWIT君は、純粋に⼀直線で嘘がないんですよ。そういうところは素晴らしいと思います。
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