24台ものスネア・レポートの中から
厳選3台を抜粋してお届け!
今年ブランド発足50周年を迎えたTAMA Drums。ドラム・マガジンでも2024年7月号にて50ページに渡る総力特集を掲載。ここではその中から11月30日、12月1日に開催される「TAMA 50TH ANNIVERSARY EVENT」にも出演する次世代ドラマーの代表格、松浦千昇による“日本製スネア”の24台の試奏レポートの一部を抜粋してお届けする!
↓このページでレビューをお届けするスネアは、松浦がこちらの冒頭で披露しているデモ演奏でセレクトした3台!↓
STAR Solid Maple
たくさん叩かなくても絶対に成立するという信頼感
めちゃくちゃ綺麗でまとまった音なんですが、メイプルでも単板ということで、他のモデルとしっかり差別化されているように感じました。軽くタップしたときから、パワー・ヒットしたときまでのレンジがとにかく広くて、単板はその音量差がはっきり出ますね。STAR Mapleはアコースティックな会場で使うイメージが浮かびましたけど、これはもう少し大きめの会場で、ミドル・テンポ=BPM120あたりのファンクやポップスで、淡々と刻むのが一番気持ち良さそうです。一発叩けばそれでいい、たくさん叩かなくても絶対に成立するという信頼感があります。他のバンド・メンバーも、このスネアでバック・ビートを刻まれたらうれしいんじゃないかと思います。
GEAR SPEC
【サイズ】14″×6”
【シェル】8mmソリッド・メイプル with 8mmサウンド・フォーカス・リング
【フープ】ダイキャスト・フープ(8テンション)
【スナッピー】20本ハイ・カーポン・スティール(MS20RL14C)
【ヘッド】REMO コーテッド・アンバサダー(トップ)&スネア・アンパサダー(ボトム)
STARPHONIC BRASS
レンジのバランスも良い
元気の良いスネア・サウンド
クールな音色なのにテンションが高いですね。元気の良いスネア・サウンドで、最近のUSAポップスみたいな、エレクトロな音が多い楽曲の中でも、しっかりと音が聴こえてきそうです。ハンド・ハンマード・ブラスのような圧倒的な存在感があるわけではないんですけど、ちゃんとヌケてくれるし、アンサンブルの中でも馴染んでくれそうです。レンジのバランスもすごくよくて、やや上の方が出ている印象で、それが元気の良さにつながっているのかもしれません。逆にクローズド・リム・ショットは落ち着きがあって、ナチュラルな感じなのも面白いですね。ピッチをカンカンに上げて、トラップ・ミュージックなんかで使っても合うと思います。
GEAR SPEC
【サイズ】14″×6”
【シェル】1.2mmブラス
【フープ】グルーブド・フープ(10テンション)
【スナッピー】20本ハイ・カーボン・スティール(MS20L14C)
【ヘッド】EVANS G1コーテッド(トップ)&レゾナント300(ボトム)
STAR Reserve Bubinga/Maple
低い音のまま、細かいパッセージも
しっかり聴かせることができる
メイプルらしい、上のキラっとした要素と、ブビンガらしいアタックの速さ、その両方をしっかりと感じますね。口径が大きいので、やっぱりローピッチで使ってみたいです。下に寄りすぎると、音が出なくなる=飛ばなくなることがあるんですけど、このスネアはメイプルの効果もあって、音ヌケも良いですね。低い音のまま、細かいパッセージもしっかり聴かせることができそうです。このスネアが生きる場面としてパッと思い浮かんだのはファンク……特にLAファンクにハマりそうですね。もしくは“バコーン!”っていう1発をブチかます使い方も面白そうです。叩き切る力は必要ですけど、世界観をガラッと変えることができそうです。
GEAR SPEC
【サイズ】15″×8″
【シェル】5.5mm ブピンガ(2ply)+メイプル(4ply)+コルディア(inner/1ply)+オリーブ・アッシュ(outer/1ply)
【フープ】ブラス・マイティ・フープ(8テンション)
【スナッピー】20本カーボン・スティール(MS20SN15S)
【ヘッド】EVANS パワー・センター・リバース・ドット(トップ)&レゾナント300(ボトム)
総評
どのスネアにも鼻と目の間にくる
TAMAらしさというものが確実に存在
まずはこれだけの数のスネアを試奏する機会があったことに、「とにかくありがとうございます!」って思いました。24台もあれば似たようなスネアもあるのかなと思ったのですが、1台1台違っていたことに驚かされました。もちろんシリーズや材によって共通するところはあるんですけど、ちゃんと棲み分けされていて、それぞれに個性的なキャラクターがあるから、こういう音楽に合うだろうなとか、こういう場面で使ってみたいとか、はっきりと想像できましたね。めちゃくちゃ勉強になりましたし、自分のスネアの見聞が深まった気がします。
同じ材のスネアでも、スペックでこんなにも変わるんだなっていうのは発見でしたね。ドラムをやっていない人はもちろん、ドラマーの中にも、何でこんなに同じ材で何種類もあるんだと思っている人はけっこういると思うんです。ぜひ、そういう人達にこそ、今日の僕の気持ちになってほしいですね。
全部を試した上で、デモ演奏で使うスネアとして、STAR Solid MapleとSTAR Reserve Bubinga/Maple、STAPHONIC Brassの3台を選びました。Solid Mapleは超センシティヴで最初に叩いたときから、メイン・スネアにしようと決めていました。Bubinga/Mapleは超ローピッチにして、“ダスダス”っていう音色で使いたいな、と。意外とセンシティヴな音が出ることも選んだポイントです。STARPHONIC Brassは逆にめちゃくちゃハイピッチにして、あえて音を止める方法で使ってみたいなと思って選びました。
どのスネアにもTAMAらしさというものが確実に存在していて……僕の印象だとTAMAの音って鼻と目の間にくるんです(笑)。どれだけ繊細でも、どれだけ爆音でも、共通した芯があるというか、「コツンッ」っていう音が24台すべてで鳴るんですよね。鼻と目の間に、そういう音が響いてくるんです。