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    【Report】パットの個性も浮かび上がるニック・ディヴァージリオの好サポート! 大団円を迎えたMR.BIG最後の日本武道館公演!!

    • Text:Seiji Murata/Photo:Masanori Doi

    2023年7月26日、とうとうこの日、MR.BIGの日本ラスト・ライヴを迎えることになった。18年に他に代替の利かないこのバンドのビッグ・エンジンであったパット・トーピーを失い活動を休止していたMR.BIGから3月にアナウンスされた久しぶりのツアーは、“The BIG Finish FAREWELL TOUR”と題され、バンドとして最後のツアーとなることが発表されていた。

    MR.BIG

    20日の名古屋、22日の大阪を経て、東京では彼らにとって縁深い日本武道館での公演を予定するも、全公演が早々にソールド・アウトとなり、追加公演となった26日が本当のラスト。このツアーでは、92年の2ndアルバム『Lean Into It』を完全再現するという初の試みに加えて、ベスト・ヒットでセットリストを構成することが発表されるなど、ラストを飾る特別なもてなしが用意される一方で、パットと同じパーキンソン病で苦しむ方々への助けになればとオークションにかけられることになった、09年バンド再結成後の日本公演でパットが使用したTAMA Starclassic Performer B/B(こちら)のセットアップが展示されていたり、パットの不在をあらためて実感する場であったことも、多くのファンが抱いた正直な想いではなかっただろうか。

    ニック・ディヴァージリオ

    この巨大な穴を埋める大役に抜擢されたのが、フィル・コリンズ脱退後のジェネシスや、SPOCK’S BEARDではリード・ヴォーカルをも務めたプログレ界の逸材、ニック・ディヴァージリオだ。彼の今年1発目のYouTube動画を観ると、パット・トーピーのグルーヴを自身の演奏で紹介しており、この時期すでに「Take Cover」、「Daddy, Brother,Lover,Little Boy」、「Colorado Bulldog」の難曲を、高いレベルで解釈し叩きこなしていることがわかる。また7月初旬のビリー・シーンとの初リハーサル動画では「このためにかなり長い間練習を積んできた」と語っていることから、このツアーにニックが相当な準備をしてきたことがうかがえる。

    こうして迎えた26日。ラモーンズ「Blitzkrieg Bop」をバックにメンバーが楽屋からステージへと練り歩く姿がセンター・ヴィジョンに映し出されると、早くも観客は総立ち。観客に手を振りながらステージに現れると、89年の1stの1曲目「Addicted To That Rush」からスタートした。

    ドラムについて最初に触れてしまうと、全曲でニックはパットのフレーズをほぼ完全になぞっていたが、それは続く「Take Cover」をはじめ、MR.BIGの楽曲にとってパットのドラム・アレンジがいかに有機的であり代替不可能なことを、完璧に準備をしてきたニックが一番痛感していた証ではないかと想像する。

    その意味で、このツアーはニックが個性を打ち出すものではなかったとも思えるし、だからこそ逆にパットの個性が浮き彫りになった部分もある。個人的にあらためて気づいたのは、1音1音のツブが立っていて、4拍のメリハリが強く、1拍が長くてグルーヴがウネり、小節線をまたいだりウラ拍から入ったりする“ブチ込み”フレーズがダイナミックでドラマチックだったということ。パットが長年取り組み完成させたこのグルーヴを、ニックは、少ないリハーサルの中で、このバンドの大きな特徴の1つである分厚いコーラスを含めて再現していたのは特筆しておかなければならない。

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