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【Report】THE PRIMALS Live in Japan – Beyond the Shadow@幕張メッセイベントホール(d:たちばなテツヤ[THE PRIMALS])
- Report:Satoyasu Shomura
- Photo:Taichi Nishimaki
スクウェア・エニックスが開発したオンラインRPG「ファイナルファンタジーXIV」。同ゲームのサウンド・ディレクターである、祖堅正慶を中心に結成されたオフィシャル・バンド=THE PRIMALSが、去る2022年6月4日(土)、5日(日)に約4年ぶりとなる単独公演『THE PRIMALS Live in Japan – Beyond the Shadow』を幕張メッセイベントホールにて開催した。国内はもちろんのこと、世界からも熱い支持を集めているTHE PRIMALS、チケットは一般発売後、即日完売となり、当日は国内外のオーディエンスが会場に集結、大いに盛り上がりを見せた。今回、この模様を音楽、ドラム、ファッション、映画、漫画/アニメ、そしてゲームと全方位へアンテナを張る庄村聡泰に5日の公演をレポートしてもらった!
『ファイナルファンタジーXIV』の世界を彩る
THE PRIMALSの熱きロック・サウンド
ドラマガ読者の諸兄諸姉の大半はおそらくドラマーであろうし、それは言わずもがなでもあろうし、なのであるが、その中でドラマーでもありゲーマーでもある諸兄諸姉の割合ともなると、如何程のものなのだろうか。
本稿はオンラインRPG『ファイナルファンタジーXIV』(略称『FFXIV』)のオフィシャル・バンドとして当ゲームのサウンド・ディレクター、祖堅正慶(g、vo)を中心に2014年に結成されたTHE PRIMALSについて、である。
はっきり言ってしまえばこれは先の通りドラマー兼ゲーマー、その中でもFFXIVプレイヤーの呼称である「光の戦士」(略称「ヒカセン」)足る諸兄諸姉でない限り、決して馴染みの深いバンド名ではないであろう。ヒカセンではないがUKロッカーでもありメタラーでもある筆者からすれば、PRIMALと言えば続くのはSCREAM(PRIMAL SCREAM)、あるいはFEAR(PRIMAL FEAR)の2択で決まりだ。
決まりだった。
決まりだった、の、だが、
あんなに素晴らしいライヴを観せられてしまった日にゃあ“第3の選択肢”を脳内に刻み込まざるを得ないのだ。そう、PRIMALと言えば続くのはSCREAMと FEARと“S”だ。
2013年に『新生エオルゼア』をリリース以降、その根強い人気に未だ拡張パックのリリースが続けられているFFXIVの劇伴の数々にロック・アレンジ(ロックの“魔法”と称するべきか)を施すことで、世界中のヒカセン達を興奮の坩堝へ叩き込むTHE PRIMALS。
彼らは去る6月4日、5日と幕張メッセイベントホールにて『THE PRIMALS Live in Japan – Beyond the Shadow』と題した約4年ぶりのワンマン・ライヴ を開催。2日間共にチケットは即日完売(筆者が参加した2日目に至っては13時開演といういわゆる昼公演にも関わらず、である)。会場前に設置された物販スペースに掲示されたグッズの数々もこれまた見事に完売の嵐だ。スゲエなオイ。
満員御礼となった会場にはオフィシャル・グッズのオリジナルサイリウム(形状的にはちと短いFFVI版アルテマウェポンと言ったところか)を手に、今か今かと開演を待ち侘びるヒカセン達。直前には同ゲーム最大の功労者とも言えるプロデューサー、吉田直樹氏が関係者席に降り立つ様でどよめく一幕もありつつ、場内は暗転。読み上げられる諸注意もまたヒカセン達へのうれしいサプライズ。「エメトセルク」を演じる高橋広樹氏の声ではないか。
高らかに開催を宣言する同氏の声により、遂にライヴがスタート。いきなりの目下最新曲である「ENDWALKER」だ。ソリッドなギターのディレイ音が耳を切り裂く「輝ける蒼 ~希望の園エデン:覚醒編~」や呪術的なコーラスやオリエンタルなフレーズが印象的な「究極幻想」で描かれるヘヴィな世界観に、早くも圧倒されてしまう。ズシズシと力強く叩き込まれるビートを主導するのはSPARKS GO GOでの豪腕振りでもよく知られるたちばなテツヤ(d)だ。随所にスティック回しをキメつつの振りのデカいドラミングがとにかく気持ちイイ。
MCでは関係者席の吉田直樹氏へ一言を求める無茶振り(「台本にないことをするな!」と御本人はたいそうお冠だったようだが)が挟み込まれるも、これまたヒカセン達にはうれしいサプライズ(笑)。
続く「メタル ~機工城アレキサンダー:起動編~」ではマイケル・クリストファー・コージ・フォックス(vo)の体躯すべてを使った渾身のアジテーションが冴え渡り、再び会場は熱狂の渦へ。ステージ後方のモニターではゲーム内のあんな場面やこんな場面が映し出され、何とも贅沢な一種の2.5次元感に陶酔していると、場面が展開。
突如としてメンバー全員がステージを降り、入れ替わるように表れた黒いローブの人物が鍵盤を操り始める。これはFFⅢの「悠久の風」のメロディではないか。続いて初出は第一作であるFFの「マトーヤの洞窟」のメロディが。とりわけアラフォーである筆者あたりの年齢層にとっては否が応でも胸が熱くなってしまうこの名曲。曲間でその人物は目深に被ったフードの下に隠された正体を露わにする。何てこった。FFシリーズの音楽の生みの親、植松伸夫氏その人ではないか。驚きに包まれる会場を尻目に氏がプレイしたのはFFシリーズ全タイトル内屈指の人気曲の1つに数えられる、FFⅤから「ビッグブリッヂの死闘」。これを作曲者御本人の手弾きによる生演奏で聴けるという日が己の人生に訪れるとは、である。
余談であるが、実は大学時代のバンド・サークルでFFの曲のバンド・コピーを同人音楽即売会に出品した経験のある筆者であるので、これはもう、泣いていいヤツだとすら思ったし、そのままの勢いでFFⅥボス戦の「決戦」そしてFFⅦボス戦の「更に闘う者達」へと雪崩れ込んでいただいても一向に構わんぞむしろ演れ演ってくれえであったのだが、その願いが聞き入れらることはなかった模様ってそりゃそうだ、FFXIVのライヴなんだから(笑)。
MCでは植松氏に祖堅がよくメシをたかっていたという制作チームならではの裏話やゲーム音楽がここまで支持される事となった今日への感謝や、そんな植松氏のソロ・アルバムである『Modulation』(11月9日発売予定とのこと)が鋭意制作中であることなどが伝えられ、THE PRIMALSの今後のライヴにもゲスト出演のなどへの可能性も示唆するという、期待感溢れる逸話の数々も披露してくれた。
Next➡ライヴはクライマックスへ!
“名プレイ”を盛り立てるTHE PRIMALS渾身の演奏