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周囲もアコースティック楽器なだけに
殿下のタイトなリズムと各タイコの音色が
より生々しく伝わってきた
実は、ここまでは5名(サポートのキーボードも数えると6名)での演奏だったが、いよいよ長官が登場し、ヴィデオ黒ミサも佳境へ。3名のギタリストによる迫力のアンサンブルで「STAINLESS NIGHT」と「FIRE AFTER FIRE」とハードなナンバーを続ける。殿下のドラミングもさらに迫力が増す中、第1部が幕を閉じた。するとすかさずSEが流れ出し、第2部へ。「変異生黒ミサ」とはすなわち基本的にアコースティック・ライヴなのだが、こちらも驚かされた。何と1曲目はハイスピードな「地獄の皇太子」。アコースティックと聞いて、てっきり往年の“アンプラグド”的な、バラードなどをリラックスした雰囲気で演奏するのかと思いきや、そのアレンジはかなりアグレッシヴ。アコースティック・ギターがメタリックなリフをかき鳴らすというなんだか不思議なサウンドが展開された。殿下は、ヴィンテージ・ラディックと思われる小口径のキックを配したドラム・セットでプレイ。周囲もアコースティック楽器なだけに、殿下のタイトなリズムと、各タイコのサウンドがより生々しく伝わってきた。
途中のMCでは、殿下がかつて引き起こしたという“新幹線での事件”の話に。構成員全員がうろ覚えのため、真実が良くわからないといったオチがつくといったリラックスした雰囲気となったが、ひとたび演奏となると、聴き応えのあるスリリングなサウンドを鳴らす。中でも「The Outer Mission」は圧巻。殿下が叩き出す7/8拍子を基調としたプログレッシヴな展開は、聖飢魔Ⅱの演奏力の高さを物語るものだが、それだけに留まらず、閣下がメロディアスに歌い上げることで、キャッチーな側面も表現。難解なことをやりつつもそれを感じさせないという高度なアンサンブルが目の前で繰り広げられている様には、ヴィデオ黒ミサも楽しかったが、やはり生の黒ミサは別格とあらためて痛感させられた。また、閣下の発生日(誕生日のようなもの)が近いということで、ケーキがプレゼントされ、みんなで祝福する場面もあり、こういったサプライズも、生だからこそのものだろう。
「マスクの下で囁くように“ラララ~”と口ずさむくらいなら」と閣下からお許しも出て、「蠟人形の館」では、小声の大合唱(?)も巻き起こり、最後は「Save Your Soul」をアコースティックながら激しくプレイ。殿下も疾走するかのごとく、迫力のドラミングを披露して、聖飢魔Ⅱとしては6年ぶりとなる有観客での黒ミサは幕を閉じた。
2年続けてヴィデオ黒ミサを主体としたツアーを余儀なくされた聖飢魔Ⅱだが、この秋にはいよいよ大黒ミサツアーを行うことを発表。次回こそは、聖飢魔Ⅱの真の大黒ミサを堪能できることを期待したい。なお、ツアーの詳細は後日発表される予定。