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【Report】Reiが3人のドラマーと共に魅了した“versus DRUMMER”ツアー・ファイナル!
- Text:Shinichi Takeuchi
シンガー・ソングライター/ギタリストのReiが3月からスタートしたツアー<versus DRUMMER>。タイトル通り、彼女とドラマーが1対1でライヴを繰り広げていくといった趣向で、公演ごとに伊藤大地、山口美代子、BOBOが参加。各地で濃密な演奏を披露してきた。6月3日はそのファイナル。3人のドラマーが集結し、“versus Triple DRUMMER”という構図でのライヴとなった。
会場の品川・Club eXは、円形のステージを持つ劇場で、この日はステージを囲むように等間隔で3台のドラム・セットを配置。さらにそれを取り囲むように客席が設けられており、席の位置によっては、ドラマーのプレイを背後から間近で観察できるという状況だ。
場内が暗転すると会場後方の扉からドラマー3人が入場し、プロレスの入場シーンの如く、客席内の通路を練り歩いて自身のセットへと向かって行く。山口がラディックの3点セットに就くとキックを4つ打ちで踏み鳴らし、伊藤もラディックの3点セットからハイハットを刻み始め、続いてBOBOがタムなしのDWキットにコンガを組み込んだセットでビートを叩き出す。
3人の演奏が1つに折り重なったところで、巨大フラッグを掲げたReiが登場。フラッグをアコースティック・ギターに持ち替えるとそのまま「my mama」へと雪崩れ込み、ライヴの幕を切って落とした。三位一体となったリズムに、Reiのギターと歌が絡み合う濃密なグルーヴは、やはりこの編成でしか味わえないものだろう。
続く「Connection」、「JUMP」の2曲はReiとBOBOのデュエット。BOBOが打ち鳴らすタイトで図太いビートに乗って、Reiが縦横無尽にギターをかき鳴らし、伸びやかな歌声を響かせていった。
「QUILT」も引き続き、BOBOがメインでビートを刻むが、山口がマラカス、伊藤がシェイカーで絡んでいく。途中、テンポが落ちる場面では山口がメインにスイッチし、キメではBOBOがフレーズを合わせ、伊藤が高速ビートを叩き出せば、BOBOがシェイカーで絡んでいくといった具合いに、トリプル・ドラムならではのアンサンブルの妙でも楽しませてくれた。
“お客さんの数だけドラマーがいる”と前置きした「Love Sick」では、観客にも手拍子や物販で販売したシェイカーで参加を促す。それぞれのドラマーの後方に陣取る観客を1つのチームとして、山口チームは4つ打ち、BOBOチームが3連符、伊藤チームが4拍目に8分音符を2発鳴らす。さらに山口が16分音符を刻み、BOBOがコンガで、伊藤はクローズド・リム・ショットを交えてティンバレス風なサウンドで絡んでいくことで、会場全体で芳醇なリズム・アンサンブルを生み出していった。
「Smile!」、「月とレター」の2曲は伊藤とのデュエットで披露。アコースティック・ギターで軽やかに歌われた「Smile!」では、素手でスネアを叩いて、まろやかなサウンドを聴かせたかと思えば、ブラシを手にゆったりとしたビートを奏でるといった具合いに、画家が絵筆を持ち替えてさまざまなタッチを表現するかの如く、繊細に音を紡ぐ姿が印象的だった。
続いては山口とのデュエット・コーナー。「B.U.」ではReiのスライド・ギターに、山口が軽快なセカンドライン風のビートで絡んでいき、「New Days」では力強く歯切れの良いドラミングで、彼女のギターをグングンと煽っていった。
終盤はトリプル・ドラムへ戻り怒涛の展開へ。ユニゾンのぶ厚いドラム・サウンドで濃厚なグルーヴを生み出した「Lonely Dance Club」では、ソロ回しもフィーチャーされて大きな拍手と大歓声が巻き起こり、「LAZY LOSER」では、Reiのギター・ヘッドに仕込まれたレーザーライトが差したドラマーが、彼女と掛け合いを繰り広げていく。BOBOはハット・スタンドが傾くほどの激しいプレイをみせて、会場を沸かせた。
ラストの「Pay Day」では、伊藤のドラムに、BOBOがシェイカー、山口がマレットで絡んだかと思えば、ユニゾンで大迫力のドラムは聴かせる。アンサンブルで魅せる場面と、ユニゾンで豪快に攻める場面を行き来する展開は、ラストに相応しいこの日の集大成とも思えるものだった。
アンコールではReiが3人のプレイを絵になぞらえて表現。いわく、伊藤が水彩画、山口が油絵、BOBOが油性マーカーなのだとか。言い得て妙な表現は、会場の誰もが納得といったところではないだろうか。
そんな個性の違う3人が、それぞれに特性のあるドラムを聴かせ、時には一体となって、時にはそれぞれの役割を全うしながらリズムを構築していく。そこにReiの歌とギター、さらには観客の歓声と手拍子が加わることで、芳醇な音楽が生まれる。それはトリプル・ドラム+歌+ギターという、ポピュラー・ミュージックでは特異なアンサンブルであっても、素晴らしい音楽が成り立つことの証明であり、音楽におけるリズムの重要さと、ドラムという楽器の可能性を示すものであったと思う。大げさな書きぶりになってしまったが、この日の4人の演奏が、音楽の醍醐味を伝える素晴らしいものだったことは間違いない。
Rei:卓越したギター・プレイとボーカルをもつ、シンガー・ソングライター/ギタリスト。幼少期をNYで過ごし、4歳よりクラシックギターをはじめ、5歳でブルーズに出会い、ジャンルを超えた独自の音楽を作り始める。FUJI ROCK FESTIVAL、SUMMER SONIC、RISING SUN ROCK FESTIVAL、ARABAKI ROCK Fest、SXSW Music Festival、JAVA JAZZ Festival、Les Eurockeennes、Heineken Jazzaldiaなどの国内外のフェスに多数出演。2017年秋、日本人ミュージシャンでは初となる「TED NYC」でライヴ・パフォーマンスを行った。2021年2月26日1st Album『REI』のInternational Editionが、US/Verve Forecast レーベルより全世界配信。2022年4月にコラボレーション・アルバム“QUILT”をリリース。細野晴臣、山崎まさよし、長岡亮介、藤原さくら、Ryohu、CHAI、渡辺香津美、Cory Wongなど親交のあるミュージシャンが参加。同年8月にはForbes JAPAN誌が発表した「世界を変える30歳未満30人の日本人」の一人に選出される。2023年6月に楽器メーカー「Fender」とパートナーシップ契約を結ぶ。
HP→https://guitarei.com/