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Interview – 小泉 拓[クリープハイプ]
ドラムに限らず、来るもの拒まずですね。
●「ニガツノナミダ」はいつもとは違うレコーディング方法を採ったそうですね?
小泉 だいぶ前にレコーディングをしたので記憶が少々曖昧ですが、いつもは大体、ドラムとベースとギターを同時に演奏するのを、この曲に関してはクリックを聴いて1人で演奏したように記憶しています。4つ打ちの部分とリズムが変わるCメロの部分は、それぞれテンポが異なるので、別々に録音したか、ベースと一緒に演奏したような気もします。録り音も良く、生き生きとして聴こえるので、とても気に入っています。
●「ナイトオンザプラネット」は楽曲のテイスト的にも、このアルバムを象徴する曲の1つとなっていると思います。
小泉 各々の演奏を自分のiPhoneで録って確認したりするのですが、「ドラムはこの音の感じが良いよね」という話になり、じゃあ実際のレコーディングもiPhoneで録ってみようか、ということになりました。レコーディング当日はいつも通りマイクも立てつつ、ブースに一緒に入った小川がiPhoneを手に持ち、私に向けた状態で録音をしました。ドラムはその音を基本にミックスしています。淡々とした感じを出したいということで、実際に叩いたワンフレーズをループさせています。
●新しい感じもありつつ、「5%」などがその布石となっているような気もするのですが、そういった意識は?
小泉 「5%」は、曲の方向性を決める上で参考にしました。フレーズやテンポ感は、最初に「5%」のリズム・パターンを叩いてみて、そこから少しずつ発展させていったような感じです。
●「キケンナアソビ」も今作を象徴するような音作りや曲調になっていると思います。ドラムは至ってシンプルながら、随所にフックとなるようなフレーズも散りばめられていますね。
小泉 基本となるパターンは、デモを聴いて客観的に考えていきました。「キックはもっと少なくていいんじゃないか?」とか、そんな提案をしたように思います。実はBメロ以外は完全に打ち込みで、あえて冷たい感じというか、熱量のない感じを出したくて、そのようになりました。その対比として、Bメロで生ドラムで演奏したものが出てきたら、場面転換として面白いのではないかとなって、そこだけ生になっています。フィルやフレーズは、家で考えているときに思いついたものをメンバーに投げて、デモに組み込んでもらいながら作っていきました。
●2サビのスリップしたようなバス・ドラムも印象的です。
小泉 2サビのフレーズは、思いついたときに家の練習用パッドで叩いて、ボイスメモで録音して、そのデータを投げたのですが、パッドの音だから全然伝わらなかった、というのを今思い出しました。
●今作のレコーディングで使用したドラムはやはり緑ラメのグレッチでしょうか?
小泉 そうですね。基本的には緑ラメのグレッチを使用したのですが、藤井さんのセットをお借りしたり、曲毎にけっこう違うセット使いました。そうした中で、自分のセットの良さだったり、クセだったりにも気づくことができましたね。これは主観ですが、カラッと明るい音というよりかは、艶っぽいしっとりとした、ちょっと憂鬱な音、という印象なので、そこは曲の雰囲気によって使い分けていけたらと思います。使い始めてもう5年くらいで、グレッチのセットは、使い続けるとだんだんと鳴るようになる、と聞いたことがありますが、実際そんな感じがします。
あとは単純に見た目が好きです。セットを組んでしばらく眺めていたりします。
スネアも、4160の他に木胴の燻製のやつだったり、藤井さんのものをお借りしたりしました。
●では最後に、今回の制作過程を通して小泉さんが感じた変化などはありますか?
小泉 いろいろなことに柔軟でありたいと強く思うようになりました。良いと思ったものは何でも取り入れてみて、あわよくば楽しんでみる、というような考え方が、実は大事だなと。ドラマー以外のメンバーがどういうふうに考えているのかを知り、じゃあこういうのはどうだろう?と提案できる自分でありたいと思います。ドラムに限らず、来るもの拒まずですね。