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【Interview】ニコ・マクブレイン – Part 2:使用ブランドの変遷とBritish Drum Co.を選んだ理由
- Special Thanks:British Drum Co./ELECTORI
- Interview:Rhythm & Drums Magazine Interpretation & Translation:Atsuhi Shimizu Photo:Yoshika Horita
この素晴らしいブランドを
もっと多くのドラマーに届けたいと思っているんだ
●British Drumのどんなところに他のブランドとの違いや付加価値を感じますか?
ニコ シェルを形成する際に熱を加えない、“コールドプレス”(コールドプレスモールディング成形)が本当に大きなアドバンテージだと思うよ。他のメーカーは熱を使ってシェルの形成を行うんだけど、そのおかげでシェル自体を10分もあれば形成できるんだ。コールドプレスモールディングは、製造工程にかなり時間もかかって非効率かもしれないけど、素材本来のサウンドがしっかりと出る。これはキースのアイディアで、彼の発明だと思う。ドラムのシェルの中も非常に美しく、こだわりをもってデザインされているし、本当に比類するものがないくらいの出来になっている。音が良いのは言わずもがなだよ。“愚か者を磨くことはできない”ということわざもあるしね。
ハードウェアについてはいつも考えているんだけど、世界最高のドラムというのは、例えば、フロア・タムの上に人が立つこともできるくらいにしっかりと固定されるようなキットが良いと思う。British Drumで一番好きなポイントの1つがCASINOのハードウェアなんだ。アラン・キッチンが、スタンドにサイコロを取りつけるアイディアを出したのが2016年なんだけど、すごくシンプルだよね。製造メーカーには、特別なブラケットの鋳型を作ってもらう必要はあったけど。
すごく良いことの1つは、このCASINOを使っていれば、(ドラマーに限らず)誰でもスタンドを組み立てることができるんだ。 以前は、スタンドを区別する印をつけるために黒のテープを張ったり、白のテープに数字を書いたりして組み立てるときに注意深く組み合わせる必要があった。だから、セットを組み上げるのに1時間以上はざらにかかってたと思うけど、このCASINOを使うと、同じサイコロの目のハードウェア同士を探せば、誰でも簡単に組み立てることができるんだ。
キースはパラディウム・ハードウェアのように多くのスタイリッシュなドラムを作ってきていて、これなら一緒にやっていけると思ったので、もう5年以上一緒にいる感じだね。残念ながら、つい最近彼は個人的な事情で会社を辞めてしまったんだけど、他のスタッフは変わらずドラムを作り続けてくれているよ。
僕のシグネチャー・スネアのTalismanも、キースとデザインしたんだけど、本当にすごいスネアだよ。 個人的にも今までで最高のサウンドが出るスネアに仕上がっている。
そういうわけで、ずっとBritish Drumを使い続けているけど、この素晴らしいブランドをもっと多くのドラマーに届けたいと思っているんだ。アジア圏で製造するキットも作る必要があると思っているし、非常に重要なことだと捉えている。英国製のハンドメイドは付加価値もかなり高い反面、価格も高いので、できるだけ近い品質を保ちつつ、より求めやすい価格の製品を発売したいと思っている。あと少しのところまで来ているよ。
●ドラム・ヘッドもCODE Drum Headsに変えていますよね。
ヘッドに関する話としては、最初はラディックのヘッドを1970年代からずっと使っていた。その次にレモ、またラディック、レモ、ソナー、それでレモに戻って、ロッド・モルゲンシュタインのヘッドも使って……以前、またレモに戻ったときには「ずっと使い続けるよ。もう離れることはない」って伝えたんだけどね(笑)。
あるとき、CODE Drum Headsのマイク・ヒートンから「ニコ・マクブレインのシグネチャー・モデルを発売したい」と話がきた。キースもその共同経営者の1人でもあったので、ある意味BDCとも関係するブランドなんだ。私のモデルを作ることにマイクと合意してから、レモのゲイリー・ハートに連絡したんだ。彼の上司をccに入れて、「CODE Drum Headsとニコ・モデルを作ることになったんだ」ってね。それでもレモの人達は、「いつでも戻ってきていいよ」と言ってくれていて、感謝しかないね。そんな感じでCODEを使うことになったんだけど、そのモデルは最初に使っていたラディックのSilver Dotに近い音色がするんだ。
今タムに張っているCODEのヘッドは、1プライ(10mil)でドットが裏についていて、2プライとも言えるヘッドなんだ(註:スネア・ドラムには、14milにリバース・ドットのコーテッド・ヘッドのBoomer Snareを使用)。確か最初は、“Legacy of the Beast”ツアーの1年前にバルセロナで試したんだ。レモのエボニーに近い感じだったけど、より重めな印象だったね。
僕のタムはスクエア・サイズ(幅と深さが同じインチ)というのもあって、レゾナンス成分がとても多いから、通常のタムと比べるとボトムはちょっとサウンドが弱めになるか、オープンすぎてややタイトになりがちなんだ。それでボトム・ヘッドは重めのものを選んでいるんだけど、オープン・チューニングにして減衰を長めに保つのが個人的には好きなんだ。
当然だけど、今はCODEのヘッドを一番気に入って使っている。最近は6”、8”、10”のタムはあまり使わないけど、12”、13”、14“、18”のタムは今まで通りだね。本当に素晴らしいヘッドで、“Legacy of Beast”ツアーのときに気がついたんだけど、ライヴ5公演までは張り替えずに余裕で使い続けられるんだ。スネアのヘッドも耐久性が優れていて、以前、別のメーカーのヘッドを使っていたときは毎回張り替えていたけど、CODEの場合は2、3回のショウで使い続けられる。だから今はCOD Drum Headsが最高だと言えるね。マイクもとても素晴らしい人物だ。
CODEの製品の大きな特徴は、“グリップ・タイト・テクノロジー”といって、チューニングのしやすさを残したまま安定するから、ヘッドがアクシデントで外れてしまうようなことはまったくないんだ。チューニングもとてもしやすくて、ヘッド自体の反応が良いから楽だしね。非常に品質が高いので脱帽だよ。
●バンド結成50周年記念ツアーに関する公式発表もありましたね。アニバーサリー・ツアー用に新しいキットを用意する計画はありますか?
ニコ 正直に話すと、ちょうどそのことを考え始めたところなんだ。最初の9枚のアルバムのエディーを各々のドラムに描いてみたいなと考えている。今のツアーが終わり次第、早速取りかかるよ。今までもそうだけど、次回のキットも間違いなく、素晴らしい見栄えになるからね。
Nicko’s Warm-Up Gear
▲ぴあアリーナMM公演の楽屋に設けられたニコ専用のウォーム・アップ・ルームには、練習用のドラム「THE TROOPER」がセット・アップ。ラウンジ・シリーズをベースにしたものだそうで、ステージではタムをズラリと並べた超多点セッティングを愛用するニコだが、練習用は1バス、1タム、1フロア・タムと極シンプル。打面には、CODE Drum Headsのシグネチャー・モデル=BOOMERを装備。シンバルはPAISTEで、彼が手がけたAlpha Boomerで統一。左手側から14”ハイハット、18”クラッシュ、22”ライドと並ぶ。ニコが腰掛けるソファの近くには、KEOから発表されたシグネチャー・プラクティス・パッド、Boomerが置かれていた。
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