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【Interview】ニコ・マクブレイン – Part 1:8年ぶりのアイアン・メイデン来日公演を語る独占インタビュー!
- Special Thanks:British Drum Co./ELECTORI
- Interview:Rhythm & Drums Magazine Interpretation & Translation:Atsuhi Shimizu Photo:Yoshika Horita
ベース・プレイヤーの言うことをよく聞いて
リズム・サイドのことを
一緒に考えるということを心に刻んできた
本当に自分のスタイルを確立し始めたのは
偉大なベーシストとの出会いからなんだ
来年バンド結成50周年を迎えるイギリスが世界に誇るヘヴィ・メタル・バンド、アイアン・メイデン。圧倒的なステージングで世界中を沸かせてきた彼らが、去る9月に8年ぶりの来日ツアーを開催。待ちに待った日本のファンを熱狂へと導いてくれた。そんな最強のバンドの屋台骨を40年以上に渡って力強く支えているのがニコ・マクブレイン。彼がアンバサダーを務めるBritish Drum Co.協力の下、何とニコへの対面取材が実現! アイアン・メイデンが来日タイミングで受けた取材は本誌のみということで、奇跡のインタビューをここに掲載!!
今でもアイアン・メイデンでドラムを叩いている
それは奇跡であり神に祝福されているとしか思えないね
●前回の来日公演から8年という長い月日が経ちました。「IRON MAIDEN THE FUTURE PAST WORLD TOUR」の日本公演も明日で最終日となりますが、日本のファンのリアクションはいかがですか?
ニコ・マクブレイン そうだね、前回と同じくらいの規模の会場だけど、ほぼ同じ人数のファンが来てくれているような気がするよ。でも、今回の方がみんなラウドだ。大勢の声が聞こえているし、ファンの反応は本当に素晴らしい。彼らはグレートだし、ショーを観に来てもらって本当に感謝しているよ。正直、8年間も来日できなかったというのは長すぎるよね。でも、待ったかいがあったと思ってほしいね。バンド自体も非常に調子良くライヴができているし、何より日本に戻ってこられたのは最高だよ。
●SNS上ではアイアン・メイデンの公演に関する投稿も多く、長きに渡って、世界中のファンからバンドが支持されていることがよくわかります。これについて、特別な理由はあると思いますか?
ニコ まずは、バンドが変わっていないということがあると思う。ご存知のように、スティーヴ(ハリス/b)は非常に優れたソングライターだし、アイアン・メイデンの他のメンバーも作曲に関わっている。バンド内のいわゆる“化学反応”は変わってないんだ。エイドリアン(スミス/g)とブルース(ディッキンソン/vo)は、一時期バンドを抜けたことがあったけど、2人とも2000年に戻ってきた。だから、音楽のクオリティそのものが、長年アイアン・メイデンを続けられる要因でもあり、我々がステージで届けているパッションが、世界中のファンが支え続けてくれている最大の理由だと思うよ。
●あなた自身のアイアン・メイデンにおけるキャリアは40周年を超えましたが、最初にバンドに加入したとき、40年に渡ってヘヴィ・メタルを演奏していることを想像できましたか?
ニコ 実際には加入してから42年になるけど、質問の答えは“ノー”だ。今も続けているなんて想像できなかったよ。21歳でプロのミュージシャンになったんだけど、アイアン・メイデンに加入する9年前からドラムの演奏を始めていたんだ。この音楽業界では、何事も当たり前だと思ってはダメなんだ。“プロになりたい”と思っているだけでは、残りの人生をプロとして生活できるわけがない。私自身、大人になってから現在までプロのミュージシャンでいられているのは、本当に恵まれていると思う。
アイアン・メイデンに加入したとき、このバンドには何か特別なものがあると感じていたんだ。その理由は、主にスティーヴだね。彼が持つ素晴らしい性格は、44年以上もの間まったく変わってないんだ。そして、これは当たり前のことではないけど、我々の人気はどんどん広がり続けている。そして、最新作の『Senjutsu』のように、いまだに新しいアルバムを出している。数年前、私はこのバンドが素晴らしいってことにあらためて気づいたんだ。驚異的だよ。だから、質問に答えるなら、この年齢でここに座って君と話していて、今でもアイアン・メイデンでドラムを叩いている。それは奇跡であり、神に祝福されているとしか思えないね。
●長いキャリアの中で、ドラム・スタイルに関して、ずっと継続してきたことはありますか? 例えばこの音楽ジャンルでは、シングル・バスであることはユニークだと思います。他のバンドのツーバス・サウンドに負けないような具体的なアイディアはあったのでしょうか?
ニコ その通りで、ほとんどのアルバムで、僕はシングル・バスを演奏しているんだ。アルバム『Dance of Death』の「Face in the sand」はエイドリアンの曲だったんだけど、彼が「ニコ、ダブル・ペダルを使うべきだよ」って言ったんだ。それでこの曲ではダブル・ペダルを使ったんだけど、僕としてはあまり上手じゃないと思っている。しかし、スティーヴのようなベーシストがいれば、彼は“ディック・ドック、ディック・ドック”というような4つ打ちのストレートなグルーヴから離れることを勧めてくれる。例えば、「Where Eagles Dare」は、“ドゥドゥドゥ、ダァダァ、ドゥドゥドゥ、ダァダァ”というトリッキーなバス・ドラムで、私ならディスコ・グルーヴのように演奏できる。でも、どこから叩き始めたら良いのかを決められたのは、スティーヴがあのベース・ラインを書いたからなんだ。
アイアン・メイデン以前から、私はいつも素晴らしいベーシストと一緒にプレイする機会に恵まれていた。だから、ベース・プレイヤーの言うことをよく聞いて、リズム・サイドのことを一緒に考えるということを心に刻んできた。もちろん、ギターのフレーズを反映させたり、ヴォーカルのフレージングを考えたりする必要もある。でも、私が本当に自分のスタイルを確立し始めたのは、偉大なベーシストとの出会いからなんだ。
●ある意味、スティーヴとのコンビネーションがあなたのテクニックのカギを握っているのですね。
ニコ 絶対そうだね。彼はベースで曲のメロディ・ラインを決める。彼はとてつもない存在で、これだけ長い間、彼と一緒に演奏できるというのはとても恵まれていると思うし、ブリティッシュ・ライオンのサイモン(ドーソン/d)も同じように感じていると思う。
●ドラム・スタイルに関してもう1つ、ハイハットよりもライドをより多く使っていることには、何か理由があるのですか?
ニコ 実はドラムを始めてからずっと、ハイハットを叩くよりもライドの大きなベルを演奏するのが好きだったんだ。さかのぼること1970年代には、クライヴ・バーがベル・ライドの音を研究していて、僕もその現場に行って、彼がライドを演奏するのをよく見ていたんだ。「そのシンバルをどこで手に入れたんだい?」と聞いたら、パイステだった。音色も良くてすごく気に入ったよ。パイステのスタッフが22”のライドを紹介してくれて、それを“the Piece of Mind”ツアーで使い始めてからずっと愛用しているよ。
最近では、スティックを逆に持って(グリップ・エンドで)ライドを叩いているよ。その方がストレスなく演奏できて、安定したベル・サウンドが常に鳴らせるんだ。1つだけ支障があるとしたら、スネアをダブル・ストロークで叩くときぐらいだけど、それも大したことじゃない。(実演しながら)人間工学的には、このやり方がとても有効だと思うよ。
➡️Part 2 ニコが愛用ドラム・ブランドの変遷、そしてBritish Drum Co.の魅力を語る!
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