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    【Interview】大喜多崇規[Nothing’s Carved In Stone]〜 EP「BRIGHTNESS」での原点回帰と挑戦〜

    • Interview Support:Isao Nishimoto Text:Rhythm & Drums Magazine Photo:Taichi Nishimaki

    EDMみたいなサウンドの音楽ジャンルと
    対等に張り合えるくらい
    存在感が強くて良い音を入れたい
    そういう意識で制作を進めていった

    ●2年ぶりのリリースとなった新作EP「BRIGHTNESS」についてうかがいます。今作はどんなコンセプトで作っていったのでしょうか?

    ○まず、NCISの結成から最初の武道館ライヴまでの10年間は(ドラムを)トリガリングしていたんですね。その後、バンドで独立してからは生音を突き詰めるスタイルにチャレンジしてきたんですけど、今作では“どの曲でも、ドキドキするような音を入れておきたい”という方針になって。そこで、メンバーのイメージする音を表現しやすい方法に回帰しようということで、全曲、トリガーを使いながら制作を進めていきました。制作段階でメンバーのイメージに近い音を出せたら良いフレーズの創造にもつながるかなと思ったので、そこだけは心に決めて取り組みましたね。

    もともと僕は、エレクトロやヒップホップの人力では出せないような低音が好きで。今回も、“EDMみたいなサウンドの音楽ジャンルと対等に張り合えるくらい、存在感が強くて良い音を入れたい”という意識で進めていきました。 “ロック・ドラムのプレイとデジタル・サウンドが融合していたらカッコいいんじゃないか”と思っていたデビュー当時の価値観に、1周回って戻ってきた感じがします。

    NCISは大喜多さんにとって揺るぎない軸になっている印象です。

    ○やっぱり、バンドの独立が転機になったんですよね。僕とひなっちはもともとフリーランスの立場だったんですけど、全員が同じ事務所に所属することになってから、自分の中で大きく変わったなと思うことがあって。僕の性格的にはけっこう器用なところがあるので、“ちょっとプログレッシヴなことをやろう“とか、“ボサノヴァのエッセンスを入れよう”と思ったときに、7〜8割ぐらいはパッとできるんですね。

    あのときの独立は、“1つの活動を突き詰めたら、残りの2〜3割のところまで到達できるのかな”と思って踏み切った1歩でもありました。でも今では、 “ドラム映えするフィルや最先端のテクニックを持ってこなきゃ”と考えるよりも、“楽曲がカッコ良くなるようなアプローチは何だろう”とか、“ライヴで聴いてくれてる人が盛り上がるかな”とか、そういうところを意識するようになっています。こういう気持ちの変化もすごく良いことだと思っていて、今回のEPでは、ドラマーとしてのアプローチもだいぶ変わった気がしています。

    ●収録曲のM1「Blaze of Color」は、イントロでバンド・インしたところのリズム・パターンに始まり、全体的にキックのフレーズが特徴的ですね。

    ○「Blaze of Color」は、“あともう1テンポ、バスドラのインを送らせよう”とか、バスドラの足し引きをかなり練りましたね。そのおかげで楽曲も鮮やかになっている気がします。今回は特に、制作期間を長めに取ってもらった気がしていて、ベストを見つけるのによく考えて進めていくことができました。それぞれのエッセンスがうまく融合して、楽曲に化学反応が起きていったという気がしています。

    ●M3「Will」をはじめ、今作では、アレンジャーを加えた楽曲もいくつかありますよね。

    ○「Will」、「Dear Future」、「Freedom」の3曲でアレンジャーさんをお迎えしていて、「Will」は、ONE OK ROCKとかのアレンジをやっていたakkinさんに担当してもらいました。もともとはアップ・テンポでフォーキーな曲だったんですけど、アレンジを経て壮大な感じになりましたね。ドラム・フレーズの大元はakkinさんで、細かいフィルだったり、叩く音量の強さとかは僕があとから加えた部分です。

    アレンジャーさんの手が入ると、フレーズとか音がすごく綺麗になるんですね。それに対して、僕らは大雑把なんですけど、曲に深く入っていくという練り方の違いがあって。バンドと、アレンジャーさんの曲の作り方や熱の入れどころの違いを体験できて面白かったです。けっこう派手なフィルインも入れてくるところは、お互いに共通していました(笑)。

    それで言うと、M4「Dear Future」とかは、ドラムが骨太の8ビート主体で進んでいきますが、サビで、 32分のフィルインとか、打ち込みのフレーズが一瞬混ざりますよね。

    ○「Dear Future」と「Freedom」は、西野カナさんとかと仕事をしている(Naoki)Itai君にお願いしました。この曲が、今作で一番先にできてたのかな。自宅で何回も叩いて、ドラム・フレーズをいじくり回したんですよ。で、メンバーに提示してそのままItai君に渡したら、全部のアイディアが採用されたのでびっくりしました。すごく手数を入れたし、キメも多いので今風の楽曲っぽくなったんですけど、「もうちょっとフィルインを足してほしい」みたいなリクエストもありました(笑)。サビの真ん中にItai君が長いタム回しを足したぐらいで、ほとんど僕が考えたフレーズでOKをもらえた曲でした。そこに、さっき言った打ち込みがさらに加わったという感じですね。後からどんどん足してもらって、派手な仕上がりになりました(笑)。

    最後の「SUNRISE」は、4分音符を軸としたリズム・パターンや、シンコペーションを多用したサビが印象的です。

    ○曲の第一印象としては、すごくシティ・ポップみたいな感じがあったんです。一瞬、さっき言ったような“器用”な自分が出てきて、“じゃあ、ドラムもおしゃれにすればいいよね”と思って叩いたんですけど、違和感がどうしても消えなくて。「本当にこの感じでいいの?」と聞いたら、ひなっちが「もっとラウドに。いや、全然もっと強くていいわ」って言うんですよ。“じゃあ、自分のスタイルは変えなくてもいいんだな”と思って、シティ・ポップ路線を外してめちゃくちゃ強く叩いたら、全体が相まってNCISっぽさのある曲が出来上がったなと思いました。最初こそ曲のデジタルな感じに対応しようとしていたんですけど、ロックでいいんだなという解釈になったので、作っている途中で印象がガラッと変わった曲ですね。

    それこそ、バンドの求める音というか。

    ○そうなんですよね。ギターも本当に綺麗なカッティングやアルペジオが入っていたんですけど、“歪んだ音でいいんだ”っていう、このバンドならではの方向性が見つかった気がします。

    ●EPは先日無事にリリースを迎え、今作のツアーも始まりますが(取材は5月上旬)、どんなライヴになりそうですか?

    ○今回のEPは、バンドとしては濃厚な作品になったかなと思っています。ライヴ・ハウスでは、お客さんの歓声が前からすごい勢いで押し寄せてくる感じがするんですよね。パワフルに叩いて、スティックを振り回して汗だくになるような、熱量の高いライヴをやりたいなと思います。昔はスマートにやっていた曲とかも、エネルギッシュなプレイに変わって良い雰囲気になるんじゃないかなって。楽しみです。